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【第1話】あの世とこの世 ①
「…の結城一真、っと」
何やら声が聞こえる。
何も感じないはずの空間で、はっきりと聞こえてくる。ぼんやりとした視界が徐々に晴れていくと、宙に浮かび赤く輝く光の球
―火の玉のようなものがこちらを見つめていた。
「うわぁ…!」
驚いて反射的に後退りする…出来ない。戸惑いと共に自分の体を見ると、手足が無い。青白くなった自分も、目の前の火の玉のように宙に浮いていた。
「みんな、最初はびっくりするよね」
火の玉はクスクスと笑い、お互いの姿を見慣れたものへと変えていった。ゆっくりと、しかしスムーズに人の輪郭を描き出す。
「どうかな?」
声色は変わらないのに、少女の形になった存在は少し首を傾けて見せた。…目の前で起こっていることが理解できない。
「君は一体…ここは何なんだよ!」
手に汗を握り、つい声を荒げてしまう。自分も含め、いつもと違う光景が心を恐怖で支配する。 そんな一真の姿を見て、少女は少し目を細め穏やかな表情を作り出す。
「まぁ、落ち着きなよ。順を追って話すね。」
少女は笑顔で語り始めた。