8 NゴーレムLevel21
訓練場でゴーレムを呼び出すと前回と比べて光沢がある。
開幕ツルハシで殴りつけるとゴーレムの胸を貫通した。
ゴーレムが煙となると同時にぱきゃりとツルハシが砕けた。
デジャブデジャブ。
このままじゃ、9本のツルハシが必要になってしまう。
30Levelを目指すだけならいいけれども、それ以上はさらに丈夫になってしまうのではないか。
まあ、新しい武器を買いに行こう。
「お姉さん、ツルハシ砕けた」
「はあぁ!?」
売店のおばさんはツルハシまでも壊れるとは思っていなかったようだ。
「あんた何と戦っているんだい?」
「ふつうのゴーレムですね」
「ゴーレムってそんなに硬いものだったかしらねえ」
「もう売店にはあんたが扱えそうな武器はないね。なら武器を作りに行こうかね」
そう言ったおばさんに連れられて行ったのはギルドの裏側。
巨大な炉を囲むようにして鍛冶工房があった。
「あんた、いるかね」
「おう、どうした」
そう言って出てきたのは私の半分くらいの身長のムッキムキのおじさん。
ぼさっぼさの髭にまんまるとしたおめめ。
かわよっ。
「随分と大きい嬢ちゃんだな」
「あんたにしてみれば誰でもデカいでしょうに。ま、とにかくこの子の武器を作っておくれ。あんたが作って売店においてあったツルハシを壊してしまったのだから」
「は? あれを? おいおい嬢ちゃん何と戦ったんだ」
「ふつうのゴーレムですね」
「ゴーレムってそんなに硬いものだったか?」
かわよいおじさんは首を傾げた後、工房の奥からツルハシと盾を持って来た。
「ほい、同じツルハシよ。これで盾を叩いて見てくれ」
そう言われツルハシを渡された。
一緒に火のダンジョンを奮闘した思い出が昨日のように蘇ってくる。
言われた通りにツルハシで盾を殴りつけた。
盾は粉微塵に砕け散った。
ツルハシも砕けた。
「わしのツルハシィィィ」
なんか可哀想。
「こりゃ、お嬢ちゃんの方に問題があるな。武器の方が耐えきれてねえんだ」
かわよいおじさん、瞬く間に悲しみを捨て去るの辞めて貰えます?
「そうさねえ、売店の床にこん棒をめり込ませるくらいだもんねえ」
「え、こん棒って埋まるの? ぜひ見てみたい、やってくれ」
入り口付近の棚においてあった木製のこん棒を手渡される。
こん棒を工房の床に叩きつけるとこん棒はめり込んだ。
「おおお、すっご。嬢ちゃんこれで食っていけるぞ」
嫌だよ、こん棒を地面に埋める生業なんて。
「いやあ、いいもん見せて貰った。お嬢ちゃん武器の他に欲しいものはあるかい?」
「水のダンジョンようの靴が欲しいですね」
「これでまだ初級なのか、この威力なら上級の魔物でも一撃で倒せると……、ああ武器がないんだったな」
かわよいおじさんはぶつくさと独り言をつぶやきながら奥へといったあと、一足の長くて黒いブーツを手に持って戻ってきた。
「これなんかどうだ。装備者になじむように出来ていて、倒した魔物を取り込むらしい。最終的には黒から白へ変わるらしいが、そこは不明だ」
渡されたブーツを履いてみると妙にフィットした。
「こんなものを作れるんですね、凄いですね」
「いいや、これはダンジョンからの出土品だ」
「えっ、それは高いんじゃないんですか?」
「いいや、いわくつきだからタダでいい。いままで履いてみた人間は脚を潰されてショック死していたんだが、嬢ちゃんなら行けると思ったんだ。感が働いてよかったな」
今の一瞬で死ぬ可能性あったのかよ、そんな装備説明もなしに吐かせるなよ……。かわよい見た目に反してえげつないな。
「よおし、この盾を蹴って見ろ」
先程よりもきっらきらの装飾が施された高そうな盾。
軽く足を振りぬくと、元型も感じられないほど粉微塵に砕けた。
これ工房でやっちゃダメなんじゃないの?
「おうし、ブーツに傷ひとつないな。蹴りで倒せない魔物に出会ったらまた来てくれ。そしたらなんか作っちゃる」
靴を貰い、おばさんとギルドに戻った後、光沢のNゴーレムを9匹蹴り砕いた。
9匹目のNゴーレムは念願のドロップアイテムを落とした。
銀色に光る鍋。
中からはスパイシーないい香りが。
蓋を開けると鍋の中には赤茶色い液体が入っていた。
「これはカレーですね」
受付嬢さんに鑑定して貰うと食べ物であることが分かった。
「ドロップ品のカレーとなると金貨1000枚はくだらないかと思います」
金貨1000枚……ホットドッグ100万個!?
「買い取りに出されますか?」
凄く受付嬢さんから売れとの圧を感じる。
手数料が10%だったら金貨100枚の儲けだもんね。
「食べます」
「はい?」
「自分で食べます」
レストランでパンとサラダを買った後、宿の自室でカレーを食べた。
こんなものを味わってしまったら宿のレストランなんてカスだ……。
次にドロップしたらかわよいおじさんの所に持っていこう。
明日からまたランク上げ。