2 始まりの塔
初めてのダンジョンは想像していたよりも明るかった。
壁に付けられたトーチライトなんてものはなかった。
ただ窓もないのに明るいのは不思議だ。
まあいいやと歩を進めていると、灰色の球体が道をふさいだ。
人の顔の大きさくらいな球体、それが2体。
素通りしてもいいのかも知れないが、おばさんから買ったこん棒を振り下ろす。
球体は弾けるように灰色の液体を飛び散らせた後、煙のようになって消えた。
もう1体の球体が心なしかブルブルと震えている気がする。
魔物にも心があるのだろうか。
そう思いながら震えている球体にこん棒を振り下ろした。
球体が消えた場所には半透明の灰色の石が落ちていた。
これが魔石なんだろう。
魔石を鞄に入れた後、水を一口飲んだ。
特に喉は乾いていなかったけれど、なんとなく。
さらに進んで行くと球体が3体出てきた。
こん棒を3回振り下ろすと、球体は石へと変わった。
強いなこん棒。
おばさんがおすすめするだけある。
また少しだけ歩くと階段にたどり着いた。
ただ階段をふさぐように人と同じくらいの大きさの灰色の球体がいた。
先手必勝。
的が大きかったので外すことなくこん棒を振りぬくと球体は石へと変わった。
大きい球体が落とした魔石は、小さい球体が落とした魔石の3倍は大きかった。
鞄を買っておいてよかった。
階段を登って進むと、また灰色の球体が3体。
懲りないな、と思いながらこん棒を振り下ろす。
そのまま進んで行くと灰色の人型の耳を尖らせたハゲがいた。
それも3匹。
ハゲたちは私の身長の半分もなく、グゲゲと人の言葉ではないものを喋っている。
先手必勝と、ハゲの脇腹をこん棒で振りぬくと、ハゲは脇腹から真っ二つに裂け煙になって消えた。
グゲッ!と残り2匹は動揺している。
そのまま切り上げるようにこん棒で叩くと、ハゲ2匹は空中に打ちあがり床に着地する前に煙になった。
ハゲ3匹の魔石を回収して進むとまたしても多いな球体が階段を塞いでいた。
それも2体。
臆することなくこん棒で叩くと、少し大きめな魔石ふたつに変わった。
階段を上がると少し広めな空間に出た。
そして奥の階段をふさぐようにして人の2倍くらいある灰色の巨人がいた。
巨人と言っても生き物っぽさはなく、子供が作る泥の像、それの大きい版のような感じだ。
こちらに気が付いてゴゴゴという効果音と共に向かってくるけれど鈍い。
こっちから近づいて巨人の足を叩く。
すると巨人の足は思いのほかもろく砕け散り、当の巨人はズッコケた。
顔が狙える高さになったので、こん棒で頭を叩くと巨人は煙になって消えた。
巨人は灰色の魔石と灰色の丸い石を落とした。
それらを鞄に入れた後、階段を登っていくとダンジョン内部の光ではなく青白いお外の光が差し込んで来た。
そして今日私は初めてダンジョンをクリアしたと同時に始まりの街の風景を
目に焼き付けることはなかった。
確かにお外へと塔の頂上と出たのだが、目に飛び込んできたのは自称天へと続いている塔の壁面。
がっかりだよ。
横向けば街並みを眺めることは出来るが、人に限らず第一印象というものは残り続けるものである。
あとでこの街の鐘楼へ登りに行こう。