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一人語り  作者: 二階堂曉
8/17

「ホーリー•ナイトメア」

教会の鐘が鳴り響き朝の訪れを報せる、私はベッドから起きると顔を洗いに洗面台へと向かった。


「酷い顔ね、目の下にクマが出来ているは」私は鏡を見て呟いた。


私は顔を水で洗いボサボサになった髪を櫛でとかし制服である修道服に着替えた。


「今日も一日健やかなる時を」私は主を祀る小さな祭壇に祈りを捧げると礼拝堂へと向かった。


礼拝堂に着くと小さな天使達が出迎えてくれた。


「御機嫌よう、シスターカルメン!」


皆私に朝の挨拶をしてくれる私にとってこの時間が唯一心を許せる時間だった。


「御機嫌よう、皆さん今日も神様へのお祈りを欠かさない様にね」私は笑顔で彼女達に語り掛けた。


「それじゃあ、私も仕事を始めましょうか」


私は礼拝堂を後にすると、神父様の居る執務室へと向かった。


「御機嫌よう、シスター•カルメン」


「御機嫌よう、アイザック•神父」


私は部屋に入ると執務作業をする神父に挨拶した。


「君を呼んだのは他ならない、実はここから200キロ離れたノルン村で一人の少女が悪魔憑きになったとの報告が来たんだよ」神父は資料を出しながら言った。


「悪魔憑きですか、それなら他のエクソシストでも対象出来るのでは?」


「それが今回君を呼んだ理由だ、最初の悪魔憑きの報告から既に3人のエクソシストをノルン村へ派遣したのだが、もう1ヶ月経っても戻って来ないんだよ」


「それで私の出番ですか」


「今回はかなり上位の悪魔の様だ君なら祓えるだろう?」神父が訪ねてくる。


「やりますよ、それが私と教会との契約ですもの」


「報酬は戻ってからでも良いかな?」


「問題ありません、それでは私は失礼します」


私は神父に会釈をして出ていった。


「シスター•カルメンまたお仕事なの?」私が執務室から出ると一人の天使が話かけて来た。


「ええ、でも大丈夫よまた一人天使をお迎えに行くだけだから」


「無事に帰って来てね」


「必ず帰ってくるは、それまで待って居てね」


私は小さなおでこにキスをするとノルン村へと向かった。


「今回の被害者はまだ12歳の女の子か」私は列車に乗り込むと神父から渡された資料を読んでいた。


今回の悪魔憑きの被害者の名前はメアリー•ローパー彼女は2ヶ月前に部屋の中に悪魔が居ると両親に訴えた、だが両親は子供特有の恐怖心から来るものとして放置していた。だが次第に彼女は奇行が目立ち部屋の中に見たことも無い文字を刻み始めたり、幼い少女からは想像もつかないような声で両親を口汚く罵ったりしたらしい。


両親は精神病の類と思い医者を呼んだのだが彼女は医者の道具を奪い医者の目を突き刺し、そして目玉を抉り取り邪悪な声で笑ったと言う。


両親は直ぐに村の牧師へと駆け込みその牧師の要請で教会から熟練のエクソシストとその弟子二人を派遣したのだが、一ヶ月経った今でも戻っては来なかったのだ。


「上位の悪魔か今回は楽しめるかな?」私は資料を読み終えると笑みを浮かべ外の景色を見ていた。


村に着くと人の気配は無く村の中を探索して見たのだが、人は居らず家も全てもぬけの殻になっていた。だが最近まで人が居た形跡があり料理をしていた痕跡や畑仕事をしていた後があった。


「変だな、やけに視線だけは感じるんだが誰も居ないな」私は異変を感じながらも村の中央の広場へと向かった。すると中央の村の大木に何かが張り付けにされていた。


「アハハ!随分と趣味が悪いんだね?これで脅してるつもりか?」木に張り付けられていたのは先に派遣されたエクソシスト達だった。彼らは身体中に古代のラテン文字やギリシャ文字で呪いの言葉を刻まれており、その顔は恐怖に引きつった顔をしていた。


その光景を見ていると突然斧が飛んで来て私の顔を掠めて木に刺さった。


「ヒュー、これは熱烈な歓迎ね」私が周りを見ると周囲を取り囲む様に目が赤く光る村人達が居た。


「確かにこの程度のエクソシストじゃ同仕様も出来ないね」私は周囲を見渡して言った。


「教会から派遣されたエクソシストだな?貴様もそいつら同様あの方の供物にしてやる!」リーダー格の男が斧を向けながら言った。


「絶対絶命ってやつかな?か弱い私はお前達に犯され蹂躙された後ご主人様に献上されるのかな?」私はリーダー格の男に言った。


「物分かりがいいな!あの方は俺達に本当の姿を教えてくれたのさ!さあ命乞いをしながら俺達の下の世話をしろよビッチめ!大人しくしてりゃあ俺達だって、、」男が言い終わる前に私は木に刺さった斧を男の顔目掛けて投げた。斧は命中し男の頭がスイカの様に真っ二つに割れた。


「さっきから黙って聴いてれば調子に乗りやがって、生憎私は可愛い子以外に興味は無いのさ」それを合図に一斉に村人達が襲い掛ってきた。


「久しぶりに運動しようか」私は迫りくる村人達に向かって行った。


30分後、、


「お許し下さい!貴方様に歯向かった愚かな私をお許し下さい!」村人の男は血の海の中頭を垂れて私に懇願する。


「お前達のご主人様は何処だ?」私は男に目線を合わせて言った。「あの方でしたら村の村長の屋敷におります!」男が怯えた目で答えた。


「それはどの家だ?」


「村の外れの一番豪華な屋敷です!一目見れば分かります!」


「そうか、礼を言うよ」


「どうか、貴方様の眷属に加えて下さい!」男が懇願して来るが。


「生憎私は愛らしい者しか愛でたくないんだ」その言葉の瞬間男の身体が破裂した。


「それじゃあ向かおうか、私の暇つぶしの為に」私は血と臓物で紅く染まった広場を後にした。


村長の屋敷に着くと屋敷の2階の壁に腐った中年の男女の死体が張り付けにされていた。


「これは中々のデコレーションだなまあ悪く無い」私はドアを開け屋敷に入って行った。


屋敷の中は血の臭いが充満しており壁や床には血で悪魔崇拝のペンタクルが刻まれていた。


「私の故郷を思い出すね、懐かしいよ」私が一人呟いていると。


「貴様が我が眷属を殺したエクソシストか!?」


地獄の底から響く様な野太い声で少女の姿をした悪魔が現れた。その姿は顔面蒼白で山羊の様な角と鋭い牙と爪、そして目は紅く光っていた。


「君がこの惨状を招いた元凶かい?」私は彼女に語り掛けた。


「そうだとも!ここは私の聖域だ、お前の様な神に仕える売女が入って良い場所ではない!」


彼女が叫ぶと地面が揺れ窓のガラスが砕け散る。


「随分と凝った演出ご苦労さん、一度だけ言う今すぐその子を解放しろ」私は彼女を見つめて言った。


「我に指図するかビッチめ!貴様は唯では殺さんぞ!」


「チャンスは与えたからな?」


「何を言うか!この下等な人間め!」


次の瞬間私は彼女の首を掴み取り憑いた者を影から引き摺り出した。


「何だ、やはり低級な悪魔かお前名は何というんだ?」 


私は彼女を離すと引き摺り出した悪魔に問う。


「貴様何者だ!何故我と小娘を引き離せる!」


「理由は簡単さお前よりも私の方が序列は上なのさ」


私は金色の瞳で冷たく見る。


「もしかして、お前いや、貴方様はルシ」


「違うな私の名はシスター•カルメン唯のエクソシストさ」私は悪魔の喉を潰し殺した。悪魔の身体は砂になり消えた。


「大丈夫かい?メアリー」私は倒れた彼女を抱き上げ言った。


「あれ?私何でここに?お母さんは?お父さんは?」


「残念だけど二人共遠くに行っちゃったんだ」


「何でなの?じゃあ私は一人なの?」メアリーが泣き出しそうな顔で言った。私はその顔が愛しく感じ優しく抱きしめた。


「大丈夫だよ、私が君を守って上げるから」彼女はその言葉を聴くと安心したのか静かになる。


「お姉さんお名前は?」


「私はシスター•カルメン教会のエクソシストさ」


私はそう答えると新しい天使を抱き上げ朝日が昇る中、村を後にした。


「ホーリー•ナイトメア」 「完」


次回、月夜に悪魔と踊った事は?




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