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一人語り  作者: 二階堂曉
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「魔法使いは皆殺し」

「それでは今日のニュースです、昨晩未明また犠牲者が出ました、被害者は他の被害者と同じく魔法を行使する前に喉を切り裂かれており、魔法陣が刻まれた皮膚が剥がされていたとの事です。この連続殺人を受けて現在魔導警備隊が目下調査を行っております。続いては新作のマジックアイテムのコーナーです」


テレビの中のニュースキャスターが昨日の俺の事件を放送していた。


昨日俺は炎を操る魔法使いを殺した。そいつは掌に刻まれた魔法陣から魔法を行使しようとしたが俺はそうさせまいと奴の口を塞ぎ喉を切り裂いたのだ。


俺達の世界は生まれながら身体に魔法陣がでるかで決まる。この世界では魔法陣が無い唯の人間には何も価値は無い。そんな俺も幼少の頃から持たない側の人間として生きてきた。


魔法陣が無い俺は両親から愛されることは無かった。両親の愛情は魔法陣が現れた弟に集中しており俺は存在しない者として扱われてきた。


そんな俺に転機が訪れたのは12の寒い冬の日だった、その日俺は何時もの如く家の外の汚い納屋で眠っていた。両親と弟は暖かい家でクリスマスを祝っていた俺は寂しさと憂鬱さでそれを納屋の隙間から見ていた。


すると、突然両親が叫び出し魔法を行使する前に何者かに殺された、そして弟も両親の死を目の当たりにし泣きじゃくる声が聴こえたがやがてその声は収まった。


俺は静かにその場面を見ていたのだが殺人鬼も俺の気配に気付いたのか、家から出て俺の居る納屋にまで歩いて来た俺は怖くなり納屋の隅に隠れた瞬間にドアが開けられ冷たい風と共に殺人鬼が入って来た。


俺は息を殺して隠れていた。


「居るんだろう?出ておいでよ、私が家族の所へ送ってあげるから」殺人鬼は女だったその姿は黒いコートにフードを被っており顔は見えなかった。


「君も魔法使いなんだろう?私は魔法使いを皆殺しにするのが目的でね君を入れて今まで35人仕留めたんだよ。」女が優しい口調でナイフを揺らしながら言った。


俺はその言葉を聞き姿を現した。


「これは、これは君どうやら今まで人に愛された事が無いって目をしてるね」女は俺を見て言った。


「それじゃあ、君の魔法陣を見せてよ」女が嬉々として言った。


「残念だけど俺には出なかったんだ」

俺は顔を伏せながら言った。


「俺見たいな何の無価値も無い人間なんて、生きる意味なんて無いだろ?笑いたけりゃ笑えよ!家族にすら愛されていない俺なんて生きる意味なんてないからさ」俺の頬を涙が伝っていた。


「生きる意味なんてないか、君はなんで魔法が使えないと生きる価値が無いと思うんだい?」


女が静かに語りかけてきた。


「だって、俺の父さんと母さんは魔法が使えない奴は出来損ないだって」俺は彼女に言った。そう俺の両親は魔法の使えない俺をゴミや出来損ないと散々罵って来ただから俺もその言葉を信じて生きて来た。


「君はまだ子供だから仕方ないか」彼女はフードを取って顔を見せたその顔は左目が無く眼帯で隠していた。


「私もね君と同じで魔法が使えないんだ。だから私も子供の頃は両親に痛め付けられたよこの目もその時に潰されたんだ」彼女は目を擦りながら言った。


「確かに今の世の中は魔法使いこそが頂点と考えそれ以外の人間を下に見ている。だけどおかしいと思わないかい?何で魔法が使えないだけで同じ人間をそこまで差別出来るのかってね」彼女は手を広げながら言った。


「だから私はこの糞みたいな世の中に反抗してるんだ、今まで下に見てきたゴミに殺される屈辱を奴等に味わわせるために」


「まあそれでも私は君の家族を殺した人で無しだ、私を恨んでも構わないよ?それに望むなら君も家族と一緒に殺してあげるよ?」彼女が冷たい笑みを浮かべながら俺にナイフの先を近付ける。


「俺はあんたを恨まないよ元々俺は居ない存在だったし、だけど俺はあんな奴と一緒に死にたく無い、俺だけは助けてくれ!」俺は旧い納屋の中で殺人鬼に命乞いをした。


「ふふ、アハハ!君、中々見所あるね?どうだい、良かったら私と一緒に魔法使い共をぶっ殺さないかい?」彼女は笑うと俺に血塗れの手を差し伸べる。


「行く当てもないしついて行くよ」俺は彼女の手を取った。


「それじゃあ、挨拶からだね私はエリ、君は?」彼女が俺に名を尋ねる。


「俺に名前は無いんだ」


「そうか、なら君は今日から」


彼女は少し考えると言った。


「雪に因んでダストなんてどうだい?」


「いい名前だね、それでいいよ」


「それじゃあ、よろしくねダスト!」


「よろしくなエリ!」俺達二人は握手を交わす。


「それじゃあ二人で魔法使いを皆殺しにしようか!」


俺達は冷たい雪の中で物騒な契約を結んだ。


あれから5年俺とエリは各地を巡り魔法使いを殺して周った、不思議と罪悪感は無くただ家に湧いた害虫を殺す感覚だった。


「ただいま、昨日は派手に殺ったみたいだね?街中君の事件で持ち切りだよ?」外から帰って来たエリが俺をみて言った。


「約束しただろう?魔法使いはぶっ殺すって」


「そうだったね、もうそろそろ潮時出しまた移動しようか」エリが証拠隠滅様にガソリンを部屋に撒く。


「ここともおさらばか、でも火着けて大丈夫か?他の住人にも被害がでるんじゃ」


「大丈夫!ここの住人は全員魔法使いだから」


俺はその言葉を聞くと今まで剥ぎ取った魔法陣の刻まれた皮膚を入れた袋を持つ。


「それじゃあ、おさらばしようか次は海の近くが良いわね」


「それじゃあ、次は西に行こうか」俺は昨日剥ぎ取った魔法陣を掌に乗せて火の魔法を放った。


「さて、次も楽しく!」


「魔法使いをぶっ殺すか!」


俺とエリはそう言うと燃え盛るアパートを後にして、西を目指して行った。


「魔法使いは皆殺し」  「完」


次回、ホーリー•ナイトメア



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