「恋して•愛して•一途な私を」
「やっと私を見てくれたね?」
その言葉と共に銀色の長髪をかき上げながら、彼女は僕に言った。
「やめて、僕はお前なんて知らない!」
僕は彼女に押し倒された状態から精一杯の拒絶の反応を示した。
「ふふ、相変わらず可愛いわね君のそうゆう態度がいけないんだよ?だから私の様な悪い化物に捕まっちゃうんだよ?」彼女は冷たく口角を上げながら僕を見ていた。
時を遡る事10時間前
「今何時だ?」僕はベッドから起きると時計を見る。
時計の針は7時30分を差していた。
「今日は8月3日か夏休みもまだまだこれからだな」
僕の住む地域は田舎で夜になると虫の声が響き寂れた商店街には街灯が灯り中々よい味をだしていた。
そんな田舎と言うこともあり僕はいつも退屈していた。
「暇出し図書館にでも行こうかな」僕は直ぐに支度をし街の図書館へと向かった。
図書館に着くと僕は適当に本を選び読んでいた。
すると、僕は誰かの視線を感じた。
直ぐに周囲を見渡し探したが皆黙々と本を読んでいた。気のせいか僕はそう思う事にして読者を続けていた。
「そろそろ帰るか」時計を見ると19時を差していた。
「今日の夕飯どうしようかな」僕は訳あって一人暮らしをしており今日の夕飯のメニューを考えていた。
商店街はもう閉まっていたが少し離れた場所にあるコンビニは開いておりそこで夕飯の買い出しをして家路に着く事にした。
コンビニを出て歩いて帰っていたするとまた視線を感じた。直ぐに後ろを振り向いたがその視線は一つでは無く複数から感じた。
僕は恐ろしくなり足早に帰ろうと前を見た瞬間。
「美味そうな、、、に、、臭い、、」その言葉と共に暗闇から不定形な形をした化物が姿を見せた。
「何なんだよあれ!ずっとこっちを追って来る!」
僕は無我夢中で駆け出した、後ろを見るとあの化物が追って来る。「美味そうな、、臭い、、食わせろ!」
そいつは物凄い勢いで追って来る。
「あそこに逃げ込めば!」僕は商店街を抜け空き地にある廃屋に逃げ込んだ。
ここに隠れていれば大丈夫、でも何なんだあの化物は?あの姿を思い出すと震えが止まらない。
「どこ行った?美味そうな獲物?」知性が感じられない声で奴が捜しまわる、頼む来ないでくれ!僕は心の中でそう願ったがそれは叶わぬ願いだった、何故なら奴は真っ直ぐに僕の方を見ていたのだ。
「そこか!美味そうな獲物食ってやる!」廃屋の壁を突き破りそいつは入って来た。
「来るな!僕が何をしたって言うんだ!」僕は近くにあった角材を拾い応戦したが無駄だった。
そいつは角材を掴むと勢いよく僕事叩き付けた。
「ガハ!嫌だ、死にたく無いよ、誰か助けて」
そいつが僕に向かってきて触れ様とした瞬間。
「下等な怪物風情が私の愛しの彼に触れないでくれる?」その言葉と共に目の前の怪物が潰された。
何が起こったか理解出来ずに居ると、「ごめんね?こんな汚らわしい物を見せちゃって」その言葉と共に月夜に照らされながら美しい銀色の髪を撫でる妖艶な女性が居た。
僕はその美しさに一瞬見惚れてしまっていたが、直ぐに我に返る。
「助けてくれてありがとうございます、でも貴方は一体何者何ですか?」僕は恐る恐る聞いた。
だが彼女は無言で僕をその場で押し倒し言った。
「やっと私を見てくれたね?」
そして冒頭に戻る。
「悪い化物?何で僕を狙うんだよ!」目の前の彼女に向かって叫ぶ。
「君は自分で分からないと思うけどとても良い香りをさせてるの、その香りは私達の様な人外の者にとっては最高のご馳走だと思わせるんだ」
「それに、君が見ようとしていないだけで化物はそこら中にいるんだよ?」その言葉と共に彼女が暗闇を指差す。僕はその方向をゆっくりと確かめるすると暗闇の中からあの不定形な化物の幼体らしき物が蠢いていた。
「何だよあれ?僕の身近にあんなのがいたのか?」
「そうだよ奴等は何時どんな時にもそこに存在するの。だけど普通の人間には認識はおろか襲われることも無い、ただそこにいるだけなんだよ」
「じゃあ何で僕だけが襲われるんだよ!」
「それは君に私達と同じ血が流れているからだよ」
彼女の言葉を聞き僕は黙り込んでしまった。
「あれ?もしかして心当たりでもあったかな?」
僕は彼女に聞かれ昔の事を思い出した。あれは今から5年ほど前僕は交通事故に遭い生死の境を彷徨っていた。僕は混濁した意識の中ある夢を見ていた。
その夢は見知らぬ森の中で彷徨う夢、しかもその夢は妙にリアルであり虫のさざめく声や木の臭いそして足音ですらはっきりと感じられ、夢とは思えない情景だった。
僕は体感にして1時間程森を彷徨うとある一つの建造物を見つける。そこは旧い神社の鳥居が建てられており、目の前には長い石造りの階段が延びていた。
僕は不思議とその不気味な空間に惹かれ、無意識に足を踏み入れる。一歩また一歩と階段を上がって行きそして階段を登り終える。
階段を登り終えると目の前には旧い社が建っていた。
僕はその社に近付いて行く。社の扉の前に着くと僕は扉に手を伸ばすそしてゆっくりと扉を押すと静かに開いていく。
扉の先は木造造りの広間になっており中央には神棚が祀ってあった。だがその神棚はには無数の魔除けの札が貼ってありそれを見て僕は我に返った。
「ここどこ?お父さん?お母さん?何処なの?」
僕は無人の広間で父と母を呼んだが返事が返って来ることはない。僕は寂しさと恐怖で泣き出してしまった。
「何処なの?何で僕1人だけなの?どうして?お父さんとお母さんに会いたいよ!」僕は1人叫ぶがその叫びも暗闇に消えていく。
「ここから出たいかい?」僕の脳内で声が響く。
「誰?誰なの?」僕が聞き返すと。
「私はここに居るよ?そう君の目の前だよ」その言葉を聞き僕は神棚を見る。「そう、そこだよ私を出してくれ」声が聞こえる。
「でも、たくさんお札が貼られているよ?」
「だからこそさ私にはお札を剥がせない。君はここから出たいんだろ?なら私を出してくれ」声がより一層はっきりと聞こえる。
「君を出したら僕もここから出られるの?」
「ああ、約束するよ」
僕はその言葉を聞きお札を一枚一枚剥がしていく、そして神棚の扉を開けた。
「あれ?誰も居ない」中には杯とその杯に満たされた黒い液体が入って居た。
「ありがとう、君のおかげで出られたよお礼に君に新しい人生をあげよう。」いきなり後ろで声がして振り向いた瞬間僕は何者かに首を掴まれた。
そしてそのままその存在は神棚にあった杯を取り出しその中身を僕の口に入れた。
その液体は甘く、ドロドロとしており喉に張り付きながら胃に流れ込んで行った。僕はその液体を飲み干すと目の前が真っ暗になった。
「これで君には私達と同じ血が入った、また会おうか愛しの坊や」その言葉と共に眠りに着いた。
次に目が覚めると僕は病院のベッドの上に居た。
「先生来てください!あの子が目を覚ましました!」
僕を見るなり看護師さんが慌てて走って行った。
僕は起き上がろうとしたが出来なかった。僕は集中治療に寝かされており全身包帯で包まれていたのだ。
僕はそこから1年半掛けてリハビリを行い日常生活を送れる程回復した。その後に聞いたのだが僕の両親は事故により即死し、僕も運ばれた時には瀕死の重体で運ばれ手の施しようが無かっと言う。
しかし、僕は一命を取り留めリハビリの末に回復に向かっている。先生によるとこれは奇跡としか言いようが無いとのことらしい。
僕はその後親戚の家にお世話になり、そして16歳になった今年から一人暮らしを始めていたのだ。
「まさか、あの時飲んだあれが、」僕は静かに言った。
「やっぱり君にも心当たりがあったか」彼女は嬉しそうに言った。
「僕を食うのか?なら良いよ僕にはもう家族なんて居ないし1人で生きるのにも疲れたんだ」僕は力なく笑った。
「違うよ、私は貴方の側に居たいだけなの」
「側に居たい?何でだよ?」
僕がそう聞くと、彼女が頬を染める。
「一目惚れしちゃったの、私貴方に恋しちゃったの」
突然の告白に僕の緊張が解かれた。
「え?ちょと待ってこんな状況で告白?」
「あら、結構ロマンチックじゃない?」
「いや、雰囲気ぶち壊しの最悪の告白だよ!普通この流れなら僕が喰われる場面だろ?」
「え?そうなの?男と女が月夜に照らされながら愛を誓う場面じゃないの?」彼女が不思議そうに言った。
「まずは降りてくれないかな」僕は彼女に言った。
「でも貴方逃げたりしない?」
「逃げないから、降りてくれ」
僕が言うと彼女が僕から降りた。
「まずは自己紹介から始めようか、僕は海原陸斗、君は?」僕は彼女に聞いた。
「私はリン貴方を愛している一途な女よ」と言ってきた。
「いきなり、そうゆうのは困るから友達から始めない?」僕は少し距離を取って言った。
「分かったは、今はそれで我慢するけど」
彼女は続けていった。
「いつか君には私に恋して、愛して、一途になってもらうは」
こうして僕は彼女と出会った、いつか彼女に恋をするその日まで。
「恋して•愛して•一途な私を」
「完」
次回「ナイト•フェイク•ヒューマン」




