「シザース•キルザ•オートマタ」再投稿版
「おい、今日も例のあいつが出たんだってよ!」
「なんだ?何が出たってんだ?」
「切り裂きジャックだよ!」
酔っ払いの男がテーブルを叩きながら叫んだ。
「全く大の男が揃いも揃って情けないね」
酒場の主人である女将さんがため息をつく。
「でも女将さん犠牲者は皆女らしいじゃない、私怖いは」
「何言ってるんだい?犠牲者は若い女だよ私はともかくあんたの方が心配だよルーシー?」
「私は大丈夫よだってそんなに魅力なんてないし」
「私が心配してるのはあんたの婚期だよ、もう18だろ?あんたなら男がほっておかないと思うけどね」
女将さんがいつもの要らぬ心配をしてくる。
「大丈夫よ!それに私が男作らないのは好みの男が居いないからなの」私がそう反論するが女将さんは苦笑しながら仕事に戻った。
「今日はもう上がっていいわよ、また明日よろしくね」
「はい!お疲れ様でした」
私は女将さんに挨拶すると酒場の裏口から出た。
「今日も冷えるはね」ロンドンの街はとても冷えており夜になると白い息がでていた。
私は切り裂きジャックの話を思い出し足早に帰っていたのだが。
「御機嫌よう麗しいお嬢さん」突然路地の暗がりから声を掛けられた。
「誰かそこに居るの?」
私が言葉を投げかけると、暗がりから不気味な装いの男が現れる。少し傷んだ黒いスーツに顔は包帯で隠れており顔が見えなかった。
「何か私に用?」私が身構えつつ距離を取ると。
「これは失礼、貴方の様に美しい女性を見掛けると声を掛けるのがジェントルマンの義務でして。」男が静かに会釈する。
「私が美しいお嬢さん?何言ってるのよ」
「おや、ご謙遜なさるとは奥ゆかしいですな、しいて言葉で露わすならその美しいブロンドの髪、それに少女の面影を残した端正な顔立ちそして男の目を引くプロポーション。どれをっても貴方は素晴らしいのです。」
「あんたストーカーの気でもあるんじゃないの?」
私は自分の身体を隠しながら言った。
「これは失礼しました、改めて自己紹介を行います私の名前はジャック•メイナード、貴方に馴染み深い名を名乗るなら」
「ジャック•ザ•リッパーと申します」男は包帯越しに冷たい笑みを浮かべた。
「あんたがあの切り裂きジャック?」
「私はあまりその呼び名は気に入らないのですが、そうですね」ジャックが静かに答える。
「私も殺すの?他の女性みたいに」
「いえ、彼女達は私のアートになってもらったのです。私は昔から芸術家気質でしてねこの手で作品を作り上げる事に情熱を捧げているんですよ」
「ふざけないで!あんたのその変態趣味のせいで罪の無い人を殺してきたの?あんたは芸術家じゃなく唯の異常者よ!」
私が声を荒らげるとジャックが顔を手で覆って笑った。
「何笑ってるのよ!」
「いえ、今までの彼女達は私を見ると逃げ惑うか命乞いをしてきてそれは醜い姿だったのです。でも貴方は違う!その美しい瞳には一切の曇りが無く常に真っ直ぐな光を宿している、だからこそ貴方を私の5番目の作品に加えたいのです!」
「ふざけないでよ変態野郎!」
私は一目散に走ってジャックから逃げだした。
「狩りをお望みですかでは行きますよ」
後ろを振り向くとジャックとは100メートル程差が出来ていた、これなら逃げられる!私がそう内心思った瞬間ジャックからシューと言う奇妙な音が聞こえた。
その音が聞こえた瞬間ジャックは一足で私を抜き去り目の前に現れた。
「何なのよ今のスピード、あんたほんとに人間なの?」私は絶望しその場にへたり込んでしまった。
必死に立とうとしたが目の前の絶望を前にすると、足が震えてゆう事を聞かない。
「ここまでですね、貴方にはもう一つ面白い物を見せましょう。」ジャックはそう言うとまたさっきの奇妙な音と共にジャックの腕が変形し巨大な刃物になった。
「これで4人の女性達を私の作品に変えてきました、さあ貴方もその仲間に加えましょう」
私は覚悟を決めたその時だった。
「見つけたぞ!変態やろう!」その言葉と共にジャックの身体が横に吹き飛ぶ。
「え?私助かったの?」
「おい!変態野郎!あいつの居場所を答えろ!」
声の主を見るとそこには私と同じ位の年頃の少年が居た。
「また貴方ですか、いつも私の邪魔をしてくれますね」瓦礫の中から、ジャックが現れる。
「貴方の質問ですがお答え出来ません、私に勝った後なら話は別ですが。」
「それじゃあ殺ってやるよ似非紳士野郎!」
ジャックは再び奇妙な音と共に少年に斬りかかるが。
「鬱陶しいんだよ!」少年はその攻撃を左腕で受け止める。少年の腕が無事か確かめると彼の腕は機械仕掛けになっており、少年はもう片方の腕でジャックを殴り飛ばした。
「今夜はここまでの様ですね、お嬢さんまたお会いしましょう」ジャックは飛ばされた反動を利用して跳躍し、逃げていった。
「待てクソ野郎!」少年が激昂する。
「アンタもこんな所に居たら騒ぎを聞きつけた人に捕まるわよ!ついてきて!」
私はそう言って少年を連れて私の部屋まで逃げた。
「ここまで来れば安全よ、私はルーシー貴方は?」
「俺はジョバンニ訳あって各地を転々としてる」
私はコーヒーを淹れると彼に渡した。
「貴方あいつと知り合いなの?」
「訳あって、追っていたんだ」
ジョバンニが静かに答える。
「所で貴方身体中汚れてるし、シャワーでも浴びてきたら?」私が勧めると。
「俺の身体みても驚かないか?」
「馬鹿にしてるの?確かに私はまだ男と寝た事なんて無いけど、別に気にしないは」私がジョバンニに言うと彼が着ていたコートを脱いだ。
「さっきも少し見えたけど、どうなってるの?その身体」少年の身体は左半身が機械仕掛けになっていた。
腕や背中には熱を逃がす為か真空管が取り付けられており、心臓部には丸い機械が埋め込まれていた。
「俺の身体には蒸気機関が埋め込まれているんだ。胸の動力部からエネルギーを作り出し爆発的な身体能力と身体を変形させる事が出来るんだ。そして俺達の様な存在をオートマタと呼ぶんだ」
「でも、そんな身体じゃ命が持たないんじゃ」
「俺も好きでこんな身体になったんじゃないさ、俺は身体をこんな風にしたエンジニアと呼ばれる奴を探して居るんだ、その手がかりを持っていたのがあの変態野郎で奴を追っていた時に君を助けたんだ」
「あの時は本当に助かったは同じオートマタでもまだ貴方には心があるのね」
「その言葉を聞けて助けた甲斐があったよ」
ジョバンニと私は笑いながらコーヒーを飲んだ。
「私にも手伝える事はある?」
「とても危険な目に遭うけど覚悟はあるかい?」
ジョバンニが冷たく言ったが私は静かに頷きジョバンニの計画を聞いた。
次の晩私はまたあの路地に来ていた。
「またお会いしましたねお嬢さんでは、貴方も作品に加えましょうか」ジャックが昨日と同じく闇の中から現れる。
「その前に会って欲しい人が居るの」
その言葉と共にジョバンニが現れた。
「また貴方ですか!今日こそ決着をつけましょう!」
その言葉と共に二人のオートマタがぶつかる。
二人は凄まじい速さで撃ち合いをするが、お互い決定打に欠ける。そして勝負は一瞬にして終わった。
先に仕掛けたのはジャックだったジャックは腕を少刀に変形させるとジョバンニに突きかかる。だがジョバンニは機械の腕で受け止めて刃を折るとそのまま機械の腕で無防備なジャックの頭を潰した。
「死んだの?」
「ああ、これで手掛かりも無くなったし俺はまた流れるよ」彼はそう言うと朝焼けの中に消えていく、機械仕掛けの身体を直す手掛かりを求めて。
「シザース•キルザ•オートマタ!」
「完」
次回「恋して•愛して•一途な私を」