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一人語り  作者: 二階堂曉
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「ハロー!•デッド•ヴァンパイア!」再投稿版

時は1864年フランスボルドー地方にある貴族領その土地は代々ヴァレスカ一族が領主として治めていたのだが、現当主シモン•ヴァレスカになってからは城下街で不審な事件が連続していた。


事態を重く見たフランス政府は怪異ハンターのヘルシング一族へと事件の調査を依頼した。


「怪異事件の専門家のヘルシング一族か政府も妙な連中に依頼したもんだな」政府からの書簡を読みながら壮年の男性が言った。


「中将殿、間もなくヘルシング卿がお見えになります!」若い伝令兵が司令室に入るなり言った。


「どんな御仁だろうと、怪異ハンターなどと言った変な集団の人間を受け入れられるか?」中将が1人を悪態を付いていると。


「変な集団の代表で悪かったですね」


その言葉を聞き振り返ると、黒尽くめの若い女性が入り口に立っていた。


「これは失礼しました!中将殿この方がヘルシング卿です」


「初めまして、私はシンシア•ヘルシング政府の依頼でこの街に配属された胡散臭い余所者です」


シンシアは皮肉混じりに挨拶をした。


「気分を害したならすまない、私は警備隊長のアルフォンス•ネビル、階級は中将だよろしく頼む」


中将は名乗ると手を差し伸べるがシンシアはそれを拒否した。


「すまない、私は他人に触れられるのが苦手でね」


中将はその言葉を聞きてを戻す。


「今回の事件に目星はついているのか?」


「ええ、恐らく魔の者による仕業でしょう」


「そうか、では専門家である貴君に説明を願おうか。」


中将が椅子に腰掛けながら言った。


「それでは、今回の被害者の多くは年齢や身分はバラバラであり規則性がありませんよって犯人は手当たり次第に人を襲っています。」


「ですが、私にはもう目星は着いてますよって今直ぐにでも向かいたいところですね」シンシアが中将に軽く説明する。


「まあ、現場の判断は貴方に任せる様に言われているので従おう、だが獲物の方はどうする?こちらの武器を使うか?」中将が武器庫に視線を送る。


「いえ、私にはこれがあるので」


シンシアはそう答えると自分の獲物を出す。


「長剣とこれはラッパ銃か?」中将が剣を持ち上げ様とした瞬間。


「触れるのはおすすめしません」シンシアはそう言うと中将が持つ前に剣を持ち柄のボタンを押した。


すると剣が変形し刀身が崩れ鞭状になった。


「仕掛け武器か!初めて見るが奇妙な機構だな」中将が興味ありげに言った。


「ええ、私の一族は代々化物を狩ってきたのですが普通の武器じゃ物足りずこう言った武器を作る様になったんです。そんな私も物心付く前からこれを渡されずっと訓練に明け暮れていましたよ。」


彼女はそう言うと、腕を捲るその腕には無数の切り傷や抉れた傷がありとても痛々しかった。


「おかげで、昔から傷が絶えず今では女としての幸せは諦めましたよ」彼女は静かに笑みを浮かべながら腕を隠す。


「私は貴殿を誤解していたようだ、私も多くの戦場を駆け回って様々な修羅場をくぐって来たが、貴殿の傷を見て私なんかよりも多くの修羅場をくぐったと見受けられる、先程の無礼をお詫びいたす」


中将が静かに頭を下げる。


「いえ、私もこれが生業なので慣れておりますよ。ですが貴方のそのお気持ちは、有り難く思います」


シンシアは剣を置くともう一つの獲物を紹介する。


「これはラッパ銃に似ていますが全く異なる銃です。

私の国ではこの銃を散弾銃と言っております」


シンシアは銃を手に取り説明した。


「この銃は2連式と呼ばれるもので、ストックと銃身の間を折ってこの筒所の弾を込めて引き金を引いて撃ちます」シンシアは弾を取り出して説明する。


「この弾は特別製でして、火薬と水銀、そして聖水を混ぜています。そしてこの筒にも細工がしてあって筒の側面に切り込みを入れて弾の拡散を抑えて、貫通力を高めています。」


「所で、この銃身を短くしているのは取り回しを考えてのものかな?」中将が手に取り言うと。


「流石はお目が高い!私の使っているのは中将の仰る通り取り回しを考えて敢えて銃身を切り詰めております。銃身が短いと携帯するのにも便利なんですよ」


「所でさっきから薄汚い目で私を見ているな」


シンシアは銃口を静かに連絡員に向けた。


「え?私ですか!冗談はよして、、、」


そう言いかけた瞬間銃口から火花が飛び散り、連絡員の頭が吹き飛んだ。


「血迷ったのかヘルシング卿!彼は私の部下だぞ!」


「貴方にはこれが人に見えるんですか?」


シンシアは連絡員の死体を指差したが、そこには連絡員の姿は無く床一面に砂が広がっていた。


「何だこれは!確かに彼が撃たれた筈だが」


「私の弾丸は人間に当たれば死体が残るんですが、魔の者がくらえばこの様に清めの聖水のせいで身体が砂状に変わるのです」


「それでは、私の部下は既に」


「残念ながらこの街の大半は魔の者の眷属になっています。私もここに来るまでに彼を入れて20体程始末しました。」


「それではこの街はもう、それならば直ぐに政府に軍の派遣を要請せねば!」


「それは期待できません、何故ならその報告を聞いて私が派遣されたのですから。」


私は静かに中将に答えた。


「それでは私は今回のターゲットの排除に向かいます」


「ターゲットだと?それはまさか」


中将はターゲットに心当たりがある様な反応で私を見る。


「ええ、お察しの通り今回の事件の黒幕は。」


私は一拍置き言った。


「ヴァレスカ卿です」私は中将に真実を伝えた。


「ここがヴァレスカ卿の城内に続く通路だ」


私は中将の案内で城に続く通路に案内された。


「それでは私1人で向かいます、貴方は直ぐに避難して下さい。」


「本当に1人で大丈夫か?」


「ここから先は闇の領分になります。後はプロにお任せ下さい」私は中将に言うとそのまま闇の中に足を踏み入れて行った。


隠し通路を抜けると広間に続く道があった、そこを通り広間に着くと辺りを見渡した。辺りは血痕が飛び散っており、壁に掛けられた歴代当主の肖像画も観る影がない程朽ちていた。


「ここはもう奴等の餌場になっているみたいだな」


私がそう呟くと暗闇の中が蠢き次の瞬間何者かが飛び掛かってきた。


私は即座に反応して避けると、腰に差した散弾銃を抜き襲撃者に撃った。


「屍鬼かどうやら犠牲者の成れの果ての様だな」


ロウソクに照らされたその姿は腐敗の進んだ人型の化物だった、私はこの存在を屍鬼と呼ぶ彼等もまた魔の者により汚された犠牲者だった。


「さっきの音で集まった様だな」


暗闇の中から大量の屍鬼が現れる、その中にはまだ幼い子供も居た。


「すまない、私がもっと駆けつけて居れば。せめて私が楽にしてあげよう」私は背中から剣を取り出すと仕掛けを起動して、そのまま斬り込んで行った。



「後少しだ、後少しで生前の君に会える」


城の最上階にある塔で2つの影があった。1人は揺り椅子に腰掛ける女性、そしてもう一人はこの城の城主シモン•ヴァレスカだった。


「君は何時も美しいね、特にこのブロンドの髪なんて私と出会ったあの時のままだ」ヴァレスカ卿が話し掛けるが返事は返ってこない。


「おやおや恥ずかしいのかな?そんな奥ゆかしい君も素敵だ」男性が女性を褒めるが返事は返ってこない。


「今晩は、ヴァレスカ卿今日は美しい満月ですね」


入り口から突然話かけられ、ヴァレスカ卿が出口の方へと振り返る。


「何故生きている!?下には私の眷属が居た筈」


「彼等なら私が全員殺しました、これで彼等の汚れた魂も救われます。」


「汚れた魂だと?私の眷属となり私に永遠に仕える事が出来るんだ、こんな名誉な事はないだろう!」


ヴァレスカ卿は自信に満ちた態度で答える。


「お前達は何時もそうだ、お前達の下らない自慰行為のせいで何時も犠牲になるのは何の罪もない人々だ」


「私の祝福が自慰行為だと!貴様私の妻の前で侮辱するのか!」ヴァレスカ卿が激昂する。


「妻ですか、その椅子に腰掛けた抜け殻が貴方には妻に見えるんですか」私は呆れた顔で指差した。


椅子に腰掛けた人物は月の光に照らされ姿が露わになる、その姿は干乾びたミイラになった女性の遺体だったのだ。


「私の妻を侮辱したな!万死に値する!」


その言葉と共にヴァレスカ卿が一足で襲って来る。


私は散弾銃を構え撃つがヴァレスカ卿のスピードが速く当たらない。


そうこうしているうちに、私の右手に激痛が走った。


見ると私の腕が肉ごと抉られていた。


「ふむ、貴殿の血中々良い味だな例えるなら20年物のボルドーワインだな、渋みの中に芳醇なまろやかさがあるとても美味だぞ」ヴァレスカ卿が血の付いた手を舐めながら言った。


「イギリス産の高級品だ良く味わうんだな」


「強がりを言うなその腕ではもう銃も扱えんだろう?もしくはその背中に背負う獲物を使うか?」


ヴァレスカ卿はこちらの手の内を見透かしたように言った。


「そこまでバレていたとはでは私も切り札を出しましょう。」


私は懐から装飾が施された一本のナイフを出し、それを自身の心臓目掛けて突き刺した。


「血迷ったか!勝てぬと判断して自決に走ったのか!?」


「こうしないと起きてくれないんでね、ハロー!私の中のヴァンパイア!」


その言葉と共に私の黒い髪は深紅の紅にそまり、負傷した腕の傷も治り、私の瞳も黄金色の獣の目になった。


「貴様!その姿は私に力を与えてくれたあの方に瓜二つだ!」ヴァレスカ卿が驚きの表情を浮かべる。


「私の一族には異端者がいましてね」


「異端者だと?」


「ある時そのものは狩るはずだった化物と恋に落ち二人で駆け落ちしたんですよ、やがて二人の間には双子の姉妹が生まれたのです。」


アリシアが静かに語る。


「ですがある時に一族の者達によって、両親は殺され双子の姉妹は離れ離れになりました。」


「まさかその話は」ヴァレスカ卿が言う前に私が答えを言った。


「その異端者とは私の両親そして貴方に力を与えたのは一族の汚点にして、私の最愛の妹シンシア•ヘルシングです。」私は悲しげに語った。


「なら何故私を殺そうとする!お前も同じ化物ではないか!」


「私は幼い頃に家族を奪われました、それでも妹だけは必ず見つけ出すと近い死に物狂いで鍛錬を行いました。今回の事件ももしかしたらあの子に会えるんじゃないかと期待して来たのですが。どうやら期待外れの様ですね」


私は寂しげに言った。


「私は祝福を受けし選ばれた存在だ!あの方と肉親だと?嘘を付くのも大概にしろ!」ヴァレスカ卿が怒気を強める。


「貴方もまた魔の者に魅入られた犠牲者だ、私の手で終わらせましょう」その言葉と共にヴァレスカ卿が今までとは比にならないスピードで襲ってきたが。


「遅いですね」私はその姿を視界に捉えたまま捌き、そして背中から取出した剣で首を撥ねた。



城を出ると夜が明け朝日が眩しかった。


「無事に戻られましたかヘルシング卿」


私が城の正門から出ると、中将が出迎えてくれた。


「貴方も物好きですね逃げる様に言ったのに」


「私には全てを見届ける義務がありますので」


「これで私も家族の元へと行けます、貴方には深く感謝いたします」中将は私に敬礼すると砂状になり消えた。


「また救えなかったか、それでも君だけは必ず見つけ出すよシンシア」私はゴーストタウンとなった街をでて歩きだした。


「私も待ってるよ、愛しの姉さん」その歩いていく背中を崖の上から見届ける少女が居た。


「また遊ぼうね、アリシア」彼女はそう言うと姉とは逆の道を進むいつか再会する日を心待ちにしながら。


「ハロー!•デッド•ヴァンパイア!」


「完」


次回「ディテクティブ•オーダー」


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