「恋愛感情!?そんなもん死ね!」前編
「ずっと君が好きだったんだ!付き合って下さい!」
ある高校の教室での一場面、クラスメイトに見守られながら爽やかな雰囲気の男子生徒が手を差し伸べながら頭を垂れる。
皆が固唾を飲んで見守る中目の前の女子生徒が静かに口を開く。「良いよ、私も君の事が好きだったの!」
女子生徒はそう言うと男子生徒の手を取ると同時に抱き合う。その結果を見ていたクラスメイト達が歓声を上げる。そして新たなカップル誕生を前に祝福の言葉を投げかける。
「はぁ~やっと終わったのかよ」そんな様子を教室の陰で見ていた二人の女子生徒が居た。一人は髪をショートにして前髪をピンで留めている背の高い生徒。
そしてもう一人は髪を腰の辺りまで伸ばし眼鏡を掛けた清楚な雰囲気の生徒。
「そんな事言わないの今はあの人達が主役何だから」
本を読みながら眼鏡の生徒が諭す。
「それがくだらねえだろ?今の時代ラインで告れば良いじゃねえかよ!それなのに何でこんな目立つ所でわざわざ告るんだよ!」長身の生徒が机を叩きながら言った。
「全く暁葉は相変わらず空気が読めないわね」眼鏡の生徒がサラリと毒を吐く。
「そうゆう深雪はいつもスカしてて何考えてるか分からねえだろ?」すかさず暁葉も言い返す。
「あら、貴女の様なガサツな子よりはマシでしょう?」
「私は自分に正直なだけだよ!」二人が言い争うのをさっきのカップルを含めたクラスメイト達が注目していた。
「暁葉さんと深雪さん今日も言い争いしてるよ」
「良いなあ私もあの2人とお友達になりたいのに」
「それは無理だよ、あの2人と対等に話せる人なんてこの学校には居ないからね。」
ヒソヒソと周囲が話すのを聞いた暁葉が周囲を見渡すと、さっきまで話していた生徒達が蜘蛛の子を散らしたように退散する。
「何だよ、言いたい事あるなら直接言えば良いじゃねえかよ」暁葉が少し寂しそうにポツリと言う。
「しょうがないでしょ?私は学園始まって以来の天才美少女、貴女は学園始まって以来の脳筋ゴリラ何だから。」サラッとまた毒を吐かれ暁葉が怒る。
2人は全国でも最難関と呼ばれる神原学園の特別指定生徒として入学した、明神深雪、彼女は入学試験で全問正解と言う学園始まって以来の快挙を成し遂げ学力特待生として入学した。
そして、冬月暁葉、彼女は中学の3年間で陸上、バスケ、サッカー、水泳と複数競技でアンダー代表に選出と言う偉業を成し遂げ神原学園のスポーツ部門の広告塔として入学した。
そんな二人は周囲のクラスメイト達から畏敬の念を抱かれていたため入学早々ボッチ生活を敷いられていた。
クラスメイト達は二人とお近付きになりたそうにしてはいるのだが、二人の肩書きを前に萎縮してしまい話し掛けることすらできなかった。
そんな空気感もあり、同じ境遇に置かれた二人が親友同士になるのにそう時間は掛からなかった。
そして入学してから早3ヶ月目の現在二人は相変わらず他のクラスメイト達から距離を置かれていた。
「誰が脳筋ゴリラだよ!こう見えても美し過ぎるスポーツ少女で通ってるんだぜ!」その言葉を聞き深雪がじっと暁葉を見つめる。
「何だよ、、急に見つめやがってよ」
「確かに、貴女はガサツで言葉遣いも荒いけど見た目だけは私にも比肩するわね、背も高くて童顔だしそれにバストとヒップのサイズは私の負けよ」深雪の淡々とした暁葉の容姿に対する賛辞を受け、暁葉の顔が見る見る紅くなる。
「何処見てるんだよ!お前もしかしてそっちの趣味でもあるのかよ!?」暁葉が直ぐに身体を隠しながら後ずさる。
「私は美しければ性別なんて気にしないわよ、でも貴女とはそうゆう関係にはなりたくないわね」深雪が素っ気なく返す。
「それはそれでなんかムカつくな」暁葉が溜息を吐く。
「もしかして貴女も満更じゃなかった?」
「馬鹿言うなよ!私は恋愛感情なんて浮ついた考えは持ってねえよ!」暁葉が言うと周囲で聞いていたクラスメイト達が驚愕する。
「え、暁葉さん誰共付き合うつもりないのかよ」
「私、3年生になる前に告白しようと思ってたのに」
周囲の声に気付いた暁葉が再び見渡すとさっきまで聞こえていた声がピタリと止まる。
「大体深雪はどうなんだよ、好きな奴とか気になってる奴とかいるのか?」
「私は私が好きなのそれ以上でもそれ以下でもないわ」
深雪の毅然とした言葉を聞き周囲のクラスメイト達から再び落胆の声が聞こえた。
「そこまでハッキリ言われると尊敬するよ」
「あら、貴女が素直に称賛するなんて珍しいわね」
深雪が微笑を浮かべる、それを見ていた暁葉が手遅れだと首を左右に振りながら溜息をつく。
「私の恋愛観は置いといて貴女は何でそうまで嫌悪するの?貴女程の容姿なら性格を抜きにしても言い寄られそうだけど?」深雪に聞かれ暁葉は良くぞ聞いてくれたと言わんばかりに答える。
「正にそこなんだよ、今まで確かに私は男女を問わず告白されてきた、けど皆私のスポーツ選手としての功績や見目麗しい容姿を褒めるだけで誰も冬月暁葉と言う人間の本質を見てくれなかったんだ!」暁葉が再び机の前に立ち力説する。そんな様子を深雪は歯牙にも掛けず読書を続ける。
「だから私は恋愛感情と言う物は存在しないと思っている、結局はお付き合いして皆がやりたい事はセックスだろ!つまりそれは恋愛感情では無く子孫繁栄の為の本能から求めているだけなんだ!だから私は言う。」暁葉が一拍置いて息を整え言う。
「恋愛感情!?そんなもん◯ね!」教室中に響く声で叫ぶ。
「貴女も相当偏った考えを持っているのねでも、そうゆう自分の考えを堂々と語れる所は好きよ」
「だからこそ私と深雪は親友だろ?」
二人はお互い笑みを浮かべる、そしてクラスメイト達がドン引きしている中二人で教室を後にした。
「何時も思うけど、天才と呼ばれる人達って私達凡人には理解できないのね」
「でも我が道を行くあの姿勢は羨ましいな」
「そこに痺れるし憧れるな」
二人が去った教室でクラスメイト達が羨望の眼差しで語っていた。
「それじゃあまたな深雪」
「ええ、また学校で会いましょう」
二人は家が別々なので駅で別れた。
「さてと私は今日も走って帰ろうかな」暁葉は深雪を見送った後家までランニングがてら走って帰ることにしていた。
「そうだった最近オーバーワーク気味だって怒られたんだった、走るのは止めとくか」暁葉はそう呟くと歩いて帰る事にした。何時も走り去っていく家路も歩いて眺めていると色んな発見があった。
「あそこにゲーセンできたんだ、後はあっちには本屋さんがあるんだな」暁葉は町並みを見ながら帰っていた。
「今日は時間もあるしゲーセンでも行ってみようかな」
暁葉は最近出来たばかりのゲーセンへと寄る事にした。店の中は学生が多く同じ制服の生徒や他校の生徒がたむろっていた。
「随分と盛り上がってるな」暁葉がブラブラと歩いていると。
「いけ!いけ!ああ!取れなかったよ〜」今にも泣きそうな声が聞こえたので見るとそこには同じ制服を着た女子生徒が居た。彼女はUFOキャッチャーの前に立ち物欲しそうに中のぬいぐるみを見ていた。
「それ欲しいの?」暁葉が話し掛けると、「ひゃ!あ、同じ学校の人ですか?」女子生徒が恐る恐る振り向く。
「あれ、私の事知らない?」暁葉が言うと女子生徒が「すいません余り人に興味が無いのでわかりません」
少し申し訳無さそうに言う。
「いや、全然良いんだよごめんねいきなり変な事聴いちゃって、それよりそれ取ってあげようか?」
暁葉が言うと女子生徒が顔を輝かせる。
「本当ですか!?是非お願いします!お金なら私が出しますんで」女子生徒が台にお金を入れる。
「それじゃあ取るね!」暁葉は狙いをすましてクレーンを動かす、そしてぬいぐるみはいとも簡単に取れた。
「これでいいかな?」暁葉ぬいぐるみを渡すと。
「わあ~!ありがとうございます!絶対大事にします!」女子生徒がぬいぐるみを抱きしめながら言った。
その無邪気な姿を見て暁葉も嬉しくなる。
「あの、名前を聞いてもいいですか?」女子生徒が静かに聞く。
「私?私は冬月暁葉って言うんだ君と同じ、神原学園の1年生なんだ」暁葉が答えると女子生徒が暁葉の手を取り自己紹介する。
「私は姫織薫私も1年生なんだ、よろしくね暁葉ちゃん!」薫の無邪気に笑い掛けるのを見て暁葉が少しドキッとなる。
「う、うんよろしくね薫」
「それじゃあ一緒に少し遊んでいこうよ、私色々と教えてあげられるから」薫が暁葉の手を引く。
「え?うん行こうか」暁葉はなんの色眼鏡も無く接してくれる薫に少し動揺していた。二人はその後一通り遊ぶと店を出た。
「今日はありがとう!また明日学校でね暁葉ちゃん!」
暁葉が取ってくれたぬいぐるみを抱きしめながら薫が笑顔で手を振る。
「うん、また明日な!」暁葉も笑顔で返す。
暁葉は歩いて家路に向かう途中で薫との事を思い出していた。レースゲームで負けて悔しそうになる薫、音ゲーを戸惑いながらも楽しそうに遊ぶ薫、自分が取ったぬいぐるみを宝物の様に大事そうに抱きしめて帰る薫、そしてまた明日ねと無邪気な笑顔で手を振る薫。
彼女の一つ一つの仕草や言動、表情を思いだすたびに暁葉の足取りが軽くなる。
「高校生活3ヶ月目にしてやっと深雪意外の友達ができた!」暁葉は一人笑みを浮かべながら家路に着く。
だがそれと同時に薫の笑顔を思い出す度に、なぜだかモヤモヤする気持ちが何なのか暁葉は分からずに居た。
「恋愛感情!?そんなもん死ね!」前編 完
後編に続く。




