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一人語り  作者: 二階堂曉
2/17

「ブラッディ•パーティー」

時はスレイン歴1940年ある一つの国の王が崩御した。この世界は3つの国により支配されており、一つ目を国教の国「スベイン法国」2つ目を富国強兵の国「ビスカ連邦」そして3つ目の中立国発明と交易の国「アルディノ」


この3カ国は長年覇権を巡りを争いを続け、世はその争いを第一次統一戦争と呼んだ。


その戦争も12 年前に3国間による和平交渉を締結し、スベイン法国とビスカ連邦の橋渡しを行い平和をもたらしたのが、現アルディノ国王フレデリック•バーン•ハートであった。


彼はその功績から賢王と呼ばれ、自国民や2カ国からの信頼も厚かったのだが戦争が終結し早10年の1938年から病に伏しそして現在に至るまで療養生活を余儀なくされていたのだ。


「フレデリック様、お気を確かに持って下さい」


アルディノ国、バーン•ハート一族の邸宅の寝室で王が死の間際に居た。


その姿はかつての勇ましい姿とは違い、衰弱し、ベッドから起き上がれずにいた。


「貴君らよ長年私に仕えてくれて感謝する、どうやら私の命も間もなくの様だ」王は寝たきりの状態から家臣達に言った。


「とんでもございません!私達は貴方様の勇姿に惹かれてここまで来ました!なので縁起でもない事を仰っしゃらないでください!」


長年王の側近として仕えた家臣が言った。


「最後に我が愛娘を呼んでくれ」王が家臣の一人に言った。


「お父様、私はロゼッタはここに居ます」


その言葉と共に寝室の入り口から二人の従者を連れた、美しい少女が歩いてきた。


「ロゼッタよ、我が愛しの娘よ顔を見せておくれ」


王がそう言うと少女は王の眠るベッドの脇に来た。


「本当にお前は死んだ妻に瓜二つで、美しくなったな」王はロゼッタの顔を優しく撫でながら言った。


「お父様、弱気にならないで下さい必ず良くなりますから」ロゼッタは父の手を握りながら嘘を付いた。


もうすでに医師や治癒術師のてには負えない所にまで来ており、いつ死んでもおかしくない状態だったのだ。


「我が娘は本当に優しい子に育ってくれた、私はお前達に遺言を伝える」王は静かにロゼッタから手を離し、家臣とロゼッタに向けて言った。


「今日を持って、私は王の座を退位しその座を私の娘ロゼッタ•バーン•ハートに譲る」


その言葉を聞きロゼッタは内心驚いたが、家臣も貴族達も全員が納得していた。


「お前にはこれから先苦労を掛けるかも知れんが、この国の民の命、そしてこの世界の行く末を頼んだぞ」


王は父としてではなく、賢王として次の世代をロゼッタに託した。


「はい、必ずお父様の築き上げた平和な世の中を守ってみせます。」ロゼッタは真剣な顔で言った。


「そして、ラベンザとラペンツァ」


「はい!」


ロゼッタの従者である双子の姉妹が返事をした。


「我が娘、ロゼッタを支えてやってくれ、これは父親としての頼みだ」


「はい、この身に代えてもお嬢様をお守りする事を誓います。」姉のラベンザが答えた。


「君達二人が居れば安心だな、最後にロゼッタよ」


「はい、お父様」


「私はお前を心から愛している、幸せになるんだぞ」


「はい、私も愛しております、後はお任せ下さい」


ロゼッタが伝えると王は満足した様に目を閉じ、そのまま覚める事は無かった。


賢王フレデリック•バーン•ハートの崩御は国全土と周辺の2カ国にも伝わった。


その訃報を聞き葬儀には人々が列を成し、賢王に最後の挨拶を行っていた。


2カ国からも使者が送られ追悼の意を贈った。


ロゼッタは賢王の葬儀の最中も涙を流さず、次の王としての威厳を見せていた。


「お父様、私にこの国をまとめられるのでしょうか」


葬儀が終わった夜、私はお父様の書斎に来ていた、よくお父様はここで本を読んでおり、その度に私は今は亡きお母様と訪れお父様と3人家族の団欒を過ごしていた。


私はお父様がよく座っていた椅子に座りこれから先の事や両親との思い出を思い出していた。


すると、書斎の扉がノックされ私は入る様に言った。


「失礼します、お嬢様探しましたよきっとここに居られると思い来ました。」その言葉と共に執事服を着た私の従者のラベンザが来た。


「お嬢様、私も来ましたよ」


今度はもう一人の従者ラペンザが来た。


「二人共心配を掛けたはね、ちょっと本でも読みたくて」


「灯りも付けずにですか?」ラベンザが私の心中を察していった。


「ごめんなさい、本当は心の整理をしたくて一人になりたかったの」


「お嬢様、お気持ちは分かりますが」


「分かってるは!私はこれから先国民や周辺の国との関係、王としてやらなくてはならない事が山積みよ!だけど、私は寂しいのたった一人の家族のお父様も居なくなって私は、、どうしたらいいの?」


私はラベンザに感情をぶつけてしまった、だが彼女は優しく言った。


「お嬢様は確かに明日から王としての責務を全うしなくては行けません、ですが今この瞬間は14歳の一人の少女として泣いても良いんですよ」ラベンザのその言葉の後に妹のラペンツァが続ける。


「それにお嬢様は一人じゃないですよ!私と姉さんが居るじゃ無いですか、そちらこそ寂しい事言わないで下さいよ」彼女達の言葉を聞き私の目から大粒の涙が流れた、そして私は両親との思い出の場所である書斎で人目を憚らず大声で泣いた、そんな私を二人の従者は優しく抱きしめ一緒に泣いてくれた。


こうして私は14歳の少女から、


アルディノ国女王ロゼッタ•バーン•ハートと成った。


賢王フレデリックの崩御から1ヶ月が経った。


最近周辺の国で不穏な動きが見えてきた、特に軍事大国ビスカ連邦は新たな軍備増強を行っており、また新たな戦争が起きてもおかしくない状況だった。


「お嬢様?ロゼッタ様?」バーン•ハート家の邸宅で執事服を着た麗人が主を探していた。


「お嬢様、ここにいらしたんですね」


彼女の見つめる中庭で主人であるロゼッタが朝の日課を行っていた。


彼女は物心ついた頃から剣の才覚に目覚め、よく先王と朝の稽古を行っていたのだ。


ロゼッタが静かに剣を構えると周囲の空気が静止したのを感じた、次の瞬間目にも止まらぬ速さで剣を振る、その剣閃は荒々しい水の如き力強さでありながら、流れに任せる風の様に流麗な無駄の無い動きをしていた。


「あら、ラベンザどうしたの?」私は剣を収めながら彼女に言った。


「素晴らしい剣捌きでした、また腕を上げましたね」


「お父様の教え方が上手かったおかげよ」


私は近くに置いてあったタオルで汗を拭った。


「それで?ビスカの動きはどうなの?」


「はい、密偵の報告によると近々戦争を仕掛ける様です」


「スベインは?黙って見てる国じゃないでしょ?」


私は髪を解きながらラベンザの報告を聞いた。


「それがどうやら裏で密約を交わしている様です。」


「なるほど、つまり不可侵協定を結んだ訳ね」


「流石です、お察しの通り2カ国は不可侵協定を結びました、そうなるとビスカの標的となるのが」


「アルディノのね大方お父様の居なくなったこの国を落とすつもりのようね」私は冷静に分析した。


「そこまで考えておいでとは、恐れ入ります」


ラベンザと話をしていると。


「お嬢様、お着替えを持ってきましたよ。」


もう一人の従者ラペンツァが来た。


「ありがとうラペンツァ、でも身体中汗でびっしょりだしお風呂に入ろうかしら」私がそう言うとラペンツァが言った。


「そう言うと思って、すでに入浴の準備出来ていますよ」


「本当に気が利くはね、せっかくだし二人も一緒に入らない?」私が何となく言うと。


「是非お供します!お嬢様の日頃のお疲れを労るためにも私にお背中を流させて下さい!」


ラベンザが何時もよりも積極的に言った。


「私も良いですよ!さあ行きましょうか」


私は二人を連れて浴場へと向かった。


「二人共姉妹なのに性格も服装も真逆ね」


入浴を終え二人の着替え終わるのを待って私は改めて言った。


姉のラベンザは真面目な性格で私の事務作業を手伝ったり、家臣達の連絡事や他国の諜報活動なども行っている。何時もは冷静なのだがたまに私を見る目が、熱を帯び始めているのが多少気になっていた。


妹のラペンツァは姉とは違い基本マイペースで自由奔放だが、観察力に優れており私の些細な変化にも気付き直ぐに気に掛けてくれる。そして彼女はこの国一の治癒術師でもあり彼女の手に掛かれば生きている限りどんな怪我でも治す事が出来た。


「確かにラペンツァは私と違っていつもマイペースで、抜けてる所がありますもんね」


「そう言う姉さんだって何時も堅物の癖に、夜な夜な部屋で一人「お嬢様〜」って声を上げちゃって一体何をしてるの?」


「あなた何でそれを!?いえ違うんですお嬢様、決してやましい事などありません!」ラベンザが必死に言い訳をする。


私はそんな二人を見て思わず笑ってしまった。


「ほら、姉さんの夜の遊びを聞いてお嬢様が笑ってしまったじゃない」


「ええ!私のせいなの!?」


「大丈夫よ、二人共私の側にいてくれてありがとう」


私は二人に笑い掛けた。


ビスカ連邦の作戦室である会議が行われていた。


「それでは諸君、今回の議題だが我々はアルディノに戦争を仕掛け様と思う」作戦室のテーブルを囲み最高司令官兼国王のエドガー•マクスウェルが言った。


「閣下お言葉ですが、彼の国とは12年前の和平交渉で終戦を迎えたばかりではないですか?」若い将校が言った。


「口を慎め若造よ、閣下の決定は絶対だまさか貴様閣下の決断に不服なのか?」


その若い将校に因縁を付ける初老の将校。


「何を仰る!私は閣下に疑問を投げかけただけだ!老兵は引っ込んでもらおうか」その言葉で二人が言い争いになる直前に。


「止めんか!閣下の御前だぞ!」


歴戦の猛者の風格を醸し出す将校がその争いを一喝した。


「場が収まった事で我輩の考えを伝える、確かに最初のマイルズ将校の意見も最もだ、だが賢王フレデリックが崩御した今我が連邦の悲願であった。3国統一に大きく近付けるのだ」


その言葉を聞き一気に場の空気が変わった。


「すでにスベインのフライブルク猊下にも不可侵協定の書簡を送ってある、もう間もなく返事が来るだろう」


マクスウェル王が言った瞬間。


「流石はマクスウェル王、相変わらず政略に長けていますね」突然会議室の影からシスターの格好をした女性が現れた。


「貴様いつ入った!衛兵!王をお守りしろ!」将校達が王を囲む。


「心配せんで良い、お主我輩が送った書簡の返事を届けに来たのだろう?」


「そうですとも!フライブルク猊下の言葉をお伝えしますね、この日を持ちまして我がスベイン法国は一切の干渉を行わないと誓う。ではお伝えしたので私は帰ります」彼女はそう言うと影の中へと消えていった。


「あれがスベイン法国が誇る魔導隊か、恐れ入るな」


「これでスベイン法国の介入は無くなった、ではアルディノに暗殺者を送る、そして現国王の小娘を亡きものにした後に軍を送る、現場の指揮官はアトラス将軍貴殿に任せたい」


「分かりました、この雷槍のアトラスの名に置いて必ず王に彼の国を捧げます」


こうして、ビスカはロゼッタの予感通り動きだす。


同日夜、私は書斎で執務作業をしていた。


「誰かは知らないけど、大方ビスカの手の者でしょ?出てきなさい」私は執務の手を止めて言った。


「これは、これは唯の小娘かと思いきや気付いていたか」その言葉と共に襲撃者が姿を現す。


「保護色の魔法ね気配までは消せていないけど」 


「こいつは末恐ろしいね、でも残念だったな可憐なお嬢さん、助けは来ないぜ?屋敷は既に俺の部下が制圧してる頃だ」壮年の男が自慢気に言った。


「あらそう、でもその台詞そっくり返すは」私はそう言った後一足で襲撃者に近付き、相手の襟を掴んで石の床に叩き付けた。


「クソッタレ!話が違うじゃねえか!おい!こっちだ助けに来い!」男は私に取り押さえられた状態で叫んだが。


「残念、貴方の部下は皆私が始末しました。」


その言葉と共に6個の生首が石畳に跳ねた。


「俺の部下を全員殺ったのか!?」


「貴方はまだ殺しません、話てもらいたい事があるので」


「俺は何も話さんぞ!」


「そう、私の従者に拷問が得意な子がいるの今から紹介するはね」私とラベンザは男を縛り上げ地下の拷問室に行った。


暗い地下室の中央の椅子に男を縛り付けた。


「俺は何も喋らんからな!殺せ!覚悟は出来ている」


「威勢だけは一級品ですね、お嬢様どうします?」


ラベンザが私に指示を仰ぐ。


「ラペンツァを呼んできてこう言った事はあの子の専門だから」


「もう、準備出来ていますよお嬢様」


暗がりの中からメイド服姿のラペンツァが現れた。


「では始めましょうか、ラベンザナイフを貸して」


私はラベンザから果物ナイフを受け取った。


「そんなおもちゃでどうするんだ?斬り刻んでも無駄だぞ?」


「こうするのよ」私はナイフで自分の手を刺した。


私の手から鮮血が滴る、その光景を目の当たりにして男が焦る。


「何やってんだ?使う相手間違ってんじゃなえか?」


男は私を馬鹿にした顔で煽る。


「大丈夫よ、それに私の血は特殊でね」私はそう言うと手の平から溢れる血を男に飲ませた。


「オェ!気色悪いお嬢ちゃんだ何かのプレイか?」


男が軽口を叩いた瞬間私は合図を送る。


すると、男の腹が突き破られ赤い刃が現れる。


「グハ!ガハ!」男が血を吐きながら、のたうち回り絶命しそうになった瞬間「癒しを与えよ」ラペンツァがすんでの瞬間蘇生を行った。


「何だ今のは、俺は生きているのか?」


男は困惑して自分の身体を見るが、傷は後方もなく塞がっていた。


「私は自分の血液を自在に操る事が出来るの」


そう言われ、ロゼッタの手を見ると既に傷が塞がっていた。


「貴方は今確かに死の寸前だったは、だけど私の従者のおかげで蘇生出来たの」


その説明を聞き男の顔が青ざめて行く。


「二人共賭けをしない?この男が一体何回で音を上げるか、私は5回に賭けるは」ロゼッタが口角を上げながら二人の従者に持ち掛ける。


「それでは、私は7回で」


「私は、大穴の10回で!」


二人も嬉々として答える。


「お前等、何の話をしてるんだよ!?何だ賭けって」


男が必死に訴える。


「今から貴方にはさっきの死の体験を繰り返し行うは、因みに最高記録は3回よ大抵皆壊れるか喋っちゃうの、貴方は中々肝が座っている様だし楽しみね」


ロゼッタは残酷な笑みを浮かべるとゲームをスタートさせた、その間地下室には男の悲鳴と断末魔が響いていた。


「4回か私が一番近い数字だから賭けは私の勝ちね」


「でもお嬢様、記録更新ですよ!」


「大穴狙いは、やっぱり駄目か」


私達三人は虚ろな目をした男をそっち除けで、楽しく談笑していた。


男は4回目で全てを吐いた、男の所属はビスカ連邦の暗殺部隊である事今回の任務と連邦の目的等、事細かに話してくれた。


「所でこのゴミはどうしますか?」


ラペンツァが下を向いて何やら呟く壊れた玩具を見て言った。


「そうね、彼にはメッセンジャーになってもらいましょ」私は男にある術を仕込んで解放した。


「それじゃあ、私は行く所が出来たけど、二人共来てくれる?」


「何処へなりとも、お嬢様」


二人は同時に答え、私達は地下室を後にした。


「アトラス将軍、暗殺部隊の生き残りが帰って来ました!」アルディノ領から約30キロ離れた地点にアトラス将軍率いるビスカ軍の駐留地に暗殺部隊の男が戻っていた。


「直接聞こう、通せ」将軍の言葉を聞き男がテントに入って来る。


「まずは結果を聞かせろ、ターゲットは始末できたのか?」将軍が男に聞いたが男は俯き何かを呟く。


「将軍の御前だぞ!面を上げよ!」将軍の側近の武官が男に言った瞬間男が顔を上げた。


「何だ!その顔は!」武官は男の顔を見て叫んだ。


男の顔は目を釘で打ち付けられており、男はひとしきり「殺してくれ、、、」と懇願していた。


「お前達!この男をつまみ出せ!」武官が憲兵に指示した瞬間。


男の身体が爆散しテントの中が血の海に染められた。


「なるほど、これが向こう方のメッセージか」将軍は静かに笑いながら言った。


「全軍に伝えよ!明日の朝にアルディノ国への侵攻を開始する、我が王の為に手柄をたてようぞ!」


将軍の言葉に側近達が歓喜する、そして将軍は自分の長年の相棒である槍を見ながら言った。


「明日はお前を思う存分振るえるぞ、我が愛槍よ」


将軍はそう言うと直ちに明日の侵攻の作戦会議を行った。


「着いたは二人共」私はバーン•ハート家の邸宅の裏にある一族の遺体を納める霊廟へと来ていた。


その霊廟は小さな寺院程の大きさがあり、お父様を始め一族の遺体が安置されていた。


「私とラペンツァも入ってよろしいのですか?ここは王家のもの以外立ち入り禁止の筈では?」


ラベンザが私に聞いてくる。


「大丈夫よ、それに私にとって二人は家族だものそれに二人には私の試練を見届けて欲しいの」私は二人に静かに伝えた。


私は霊廟の扉を開けた、霊廟の中は広く以外にも綺麗に管理されていた、そして辺りには歴代当主やその家族の棺が置かれていた。


私は先祖達に挨拶をすると、真っ直ぐに広間の奥の祭壇に向かった。その祭壇は石造りで剣のモニュメントが置かれていた。


「お嬢様、この派手な祭壇はなんですか?」ラペンツァが私に聞いた。


「これは我がバーン•ハート一族の祖である、エリザベート•バーン•ハートの墓よ」私がラペンツァの質問に答えた。


「そして、この仕掛けを動かすと」私は昔お父様に聞いた仕掛けを作動させた、その仕掛けは祭壇の脇のレバーであり私はそれを引いた。すると祭壇の剣のモニュメントが動き地下に続く階段が現れた。


「凄い仕掛けですね。」


「私も驚きました!」


二人の反応を見ながら私は深い闇に足を踏み入れていった。


地下の最奥に着くとそこには棺が置かれており、中には美しい女性が横たわっていた。


「これってまさか」


「そうよ、この方が私のご先祖様のエリザベート•バーン•ハートその人よ」中で眠る女性は真紅に染まったドレスをきており、棺の中には紅い薔薇が敷き詰められていた。その姿は生きている様でとても数百年前に亡くなった遺体には見えなかった。


「何故この方に会いに来られたのですか?」


「それはこの方の持つ愛刀を譲り受ける為よ」


私は棺の中の彼女を指差した、眠る彼女の腕には装飾が施された美しい剣があった。


その刀身は真紅の赤で染められ、柄には茨を象った装飾が施さていた。


「この剣は我がバーン•ハート家に伝わる宝剣、

「ブラッディ•マリア」その力を振るえば世界を支配出来ると言い伝えられているは」


「そんな伝説があったんですね、ですがお嬢様先ほど言っていた試練とは?」


「この剣を扱えたのは初代エリザベート•バーン•ハートのみ、今までの歴代当主でも使いこなす事が出来ずに長年彼女と共に封印されていたの」


私は二人に説明した後に棺を開けて、彼女から剣を頂戴した。


すると、剣が小刻みに震え次の瞬間私の剣を持つ腕が動き出し。そして私の心臓を貫いた。


「お嬢様!ラペンツァ直ぐに治癒の魔法を!」


ラベンザが妹に指示を出しそれに答え、ラペンツァが魔法をこうししようとした瞬間。


「止めなさい!これが剣の所有者になるための試練なの、剣は主の心臓に刺さりこの痛みと恐怖に耐えられた者を、主と認めるの」


私は吐血しながらも必死に耐えた、そして時間にして数分後紅い光が私を包むと試練が終わった。


「お嬢様、髪の色が」


私の母親譲りの美しい銀髪が試練を終えると、棺の中の彼女と同じ深紅の紅へと変わっていた。


「お身体は大事無いですか?」


「治癒ノ魔法の準備は出来ております」


二人が心配そうに言ってきたが、私は二人に笑顔で返す。


「大丈夫よ、それにとても気分が良いは!これが宝剣の力なのね」私は自分の身体を確かめた。すると胸の傷が跡形も無く消え代わりに茨に包まれた心臓の紋章が刻まれていた。


「二人共これで準備は整ったは明日に備えましょう」私は二人に伝えると先祖のエリザベート様に向き直り言った。


「この力拝命致します、」私は彼女に礼をすると霊廟を後にした。


翌朝、アルディノ領の国境付近に陣がしかれているのをラベンザが伝えた。


「直ぐに、国民を避難させてそれとラベンザ」


「はい、お嬢様」


「一緒に来てくれる?」


「何処へなりともお供します」


「ラペンツァは国民と私の帰る所を守って」


「分かりました、お嬢様が好きなラズベリーパイを焼いてお待ちしております」


私は二人に指示を出し戦場へと赴いた。


ラベンザと二人で国境付近に行くとそこには万を超える軍勢がいた。


そして、先頭には大軍の指揮官らしき男がいた。


「貴殿がロゼッタ卿か?一度しか言わん投降して、我らの属国となれ、出なければ今からこの軍勢を突撃させる」指揮官がそう言った瞬間、私は小型のナイフをその指揮官の額に投げ付けた。


「答えは一つよ死にたい者から前に出なさい、私が相手になるは」指揮官が馬から崩れ落ちるのを合図に軍勢が押し寄せてきた。


「ラベンザ、今日は好きに暴れて良いわよ」


「それではお言葉に甘えて」


私とラベンザは二手に別れた、私はロングソードを持って迫りくる兵士を切り倒していく。兵士達は私の剣筋について行けず次々に切り倒されて行く。そしてラベンザは身の丈程ある棺を開けたそして中から黒いゴシック調のドレスを着た精巧な貴婦人の人形が現れる。


「バーン•ハート家、執事にしてロゼッタ•バーン•ハート様の従者」そして一拍置き言った。


「傀儡師ラベンザ•ブラックリーお相手します!」


その言葉と共に棺の中のオートマタが動き出し、身体中にあいた穴から無数の弾丸を放った。


ひとしきり弾丸を放つとオートマタの腕が変形し刃となり兵士達を斬り刻んで行く、そしてラベンザ自信も特殊な繊維で編んだ糸を駆使して兵士をバラバラのサイコロ状に切り裂いて行った。


「やはり、私が直接相手をせねばな」その言葉と共に槍の矛先が私の顔に飛んできた、私は咄嗟に先端を剣で弾き逸らす。


「今の一撃を躱すとは見事なり」


「貴方が総大将ね名前を聞こうかしら」


「我が名はビスカ連邦将軍アトラス、またの名を雷槍のアトラスだ」将軍は槍を振り回し地面に柄を叩き付けると私に言った。


「雷槍のアトラスあの統一戦争の英雄ね」


「これはこれは我が功績を知っておられるとは、光栄だな」


アトラスは槍を構えながら向き直る。


「それならば見せよう我が槍裁きを」その瞬間アトラス目にも止まらぬスピードで槍を連続で突く、その勢いは空を駆ける雷鳴の如き荒々しくも正確な突きだった。


私は冷静に捌きアトラスに攻撃を仕掛けるが、アトラスも私の攻撃を柄で捌いていく。体感にして5分私とアトラスの攻防が続いた。


「その若さで私と打ち合うとは」アトラスが感心しながら賛辞の言葉を送る。


「貴方もね流石は英雄ね」私も手足の傷を魔法で塞ぎながら言った。


「もう出し惜しみはできないはね」私はそう言うと胸の紋章目掛けて手を突き刺した。


「何を見せてくれるんだ?」アトラスは私の異常な行動を意に介さず聞いた。


そして私は自信の胸から深紅に染まる宝剣「ブラッディ•マリア」を取り出した。


その禍々しくも美しい剣を見て、アトラスが本能で危険を察し槍を突いたのだが遅かった。アトラスの穂先はブラッディ•マリアの斬撃に耐えられず砕け散る。


「我が愛槍を屠るとは、見事!」私はアトラスの首をはねた。


「ラベンザ!離れて!」


「はい!分かりました!」 


ラベンザがオートマタを棺に戻して下がるそして、私は剣に魔力を込める。


「全てを切り裂け、ブラッディ•マリア!」


その言葉と共に私は剣を大きく横薙ぎに振るった、瞬間空間が捻れるのを感じた。


次の瞬間兵士達の身体、そしてその場全てが横薙ぎに切断され辺り一面鮮血の雨が降り注いだ。


「お嬢様!大丈夫ですか!」


私はブラッディ•マリアを使った反動で貧血を起こしその場に倒れた。


「お父様、ロゼッタはこの国を守りましたは」


私は鮮血の雨を見ながらラベンザに連れられ帰還した。このビスカの大敗は世界中を駆け巡り人々はこの惨劇を「ブラッディ•パーティー」と呼び誰もアルディノに手を出せなくなった。


「お帰りなさい、お嬢様!姉さん!」私はラベンザと共に邸宅へと帰って来た。


「帰ったはラペンツァ、例の物はある?」


「はい、中庭で準備しております」


「それは楽しみね、二人共一仕事終わったしお茶に付き合ってくれない?」私が二人を誘うと。


「喜んでお供します、ロゼッタ様!」二人は元気良く返事を返して一緒に行った。


私はそんな二人と共に中庭へと向かって行った。


「ブラッディ•パーティー」


「完」


次回「鬼童師」





この話の続きは新連載として、来年掲載予定です

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