「イリーガル•東京」
「ねえ聞いてるの?」
「え?何だっけ?ごめん聞いてなかった」
昼休みの教室で私の友達の絵梨花が話し掛けてきた。
「酷いよ明香!美穂はちゃんと聞いてくれたのに」絵梨花が隣の眼鏡を掛けた少女を見ながら言った。
「ごめんイヤホンしてたから全然聞いてなかった」
「美穂もなの!?二人共酷いよ〜」私と美穂は絵梨花に謝りもう一度話を聞いた。
「知ってる?最近SNSで有名な噂」絵梨花は自分のスマホを机の中央に置き見せた。
「東京24区?何これ?」そこに書かれていたのはおどろおどろしく書かれたオカルト掲示板だった。
「実際に行った人が居るんだって!それにその人のアカウント凄い勢いでバズってるんだよ!」
そのアカウントには自分がどの様にして行ったのか、そして何を見てどうやって帰って来たのか詳細に書いてあった。
「相変わらず絵梨花は胡散臭い物が好きだよね」美穂がさらりと毒を吐く。
「良いじゃない流行ってるんだし!今時流行に乗れないと直ぐに置いて行かれちゃうよ」絵梨花は他にも投稿を見せてくる。
「それに見てよこれ関連の投稿は全部バズってるんだよ?」
「それと私達に何の関係があるのさ?」私がうんざりして言うと絵梨花が良くぞ聞いてくれたと言わんばかりに返す。
「私達も24区に行こうよ!」私と美穂は顔を見合わせると噴き出した。
「なによ!何が可笑しいのよ!」
「だって今時そんな作り話に信じるなんて!」
「そうだよ!今時小学生でもやらないよ!」
私達が笑うのを見て絵梨花が言った。
「別に良いじゃない!駄目元でもやってみたいの!二人共いつも暇そうにしてるし付き合ってよ!」
私と美穂はいつもの絵梨花のお遊びに付き合う事にした。
学校が終わり私達3人は絵梨花に連れられ学校の近くの公園に来ていた。
「それで?どうやって行けるの?」私が絵梨花に聞くと絵梨花が公園に置かれた古い公衆電話を指差す。
「投稿によると夕方の18時ぴったりに電話の受話器を取るんだってすると古い民謡が流れて来たら成功だってさ。」
絵梨花の説明を受けスマホを見ると時刻は17時55分になっていた。
「もし何も起こらなかったら何か奢ってよね」
「私この前行ったカフェのフラペチーノね」
「分かったよ、それじゃあ始めるね」
絵梨花が電話へと向かい受話器を取る。
そして掲示板にあった18時を向かえる。
「全く絵梨花のお遊びには付き合いきれないね」
「本当ねでもあれで友達想いでいい子だし、それにこんな事に付き合ってる私達も大概でしょ?」
私と美穂が二人で談笑していると突然絵梨花が悲鳴を上げる。
「どうしたの!?突然大きな声出して」私と美穂が駆けつけると直ぐに絵梨花が抱きつく。
「受話器から変な歌が聴こえるの」絵梨花が震える手で指す。
私が恐る恐る垂れ下がった受話器を取り耳に当てると。
ツー、ツーと音が鳴るだけだった。
「どう?驚いた?残念でした~嘘だよ〜」
私は顔を真っ赤にしながら絵梨花に近付く。
「美穂抑えてて!」
「うん、流石に今回は私も頭に来た」
「え?え?何?何するの?ウハハ!辞めて!くすぐったい!」私は美穂が羽交い締めにした絵梨花の脇をくすぐっていた。
「もう二度とこんな悪ふざけしないか!」
「しない、しないよ!ごめんなさい!」絵梨花が笑い泣きしているのを見てくすぐるのを辞めた。
「それじゃあ何も起きなかったし約束守ってよね」
「はい、はい分かったよ」
「あそこのカフェ開いてるかな?」
私達がその場を去ろうとした時に、ジリリリン!ジリリリン!突然公衆電話が鳴り響く。
「え?何?絵梨花またイタズラしてるの?」
「違うよ私じゃない!今回は本当に知らない!」
私と絵梨花が怖がって立ちすくんでいると。
「くだらない私が文句言ってくる」美穂が電話機まで行き受話器を取る。
「もしもし!?イタズラは辞めて、よ、」急に美穂が黙りこくる。
「どうしたの?美穂?美穂!」私と絵梨花が美穂から受話器を取り上げる。
「嘘でしょ?歌が歌が聴こえるの、、」
私は美穂がからかっていると思い受話器を耳に当てるすると電話の向こうから歌が聞こえて来た。
「とぉ〜りゃんせ、とぉ〜りゃんせ、こ〜こはど〜
この細道じゃ〜、天神様のとおせんぼ〜」
複数の子供の声が受話器から聴こえた。
「嫌ぁ!」私は直ぐに受話器を捨てた。
「帰ろう!早く!」私が二人に声を掛けた瞬間だった。急激に目眩が襲い私は気を失った。
「はい、生存者を発見しました。はい、見た所学生の様です直ぐに連れて帰ります。」
聞き慣れない声を聞き目を覚ました。
「大丈夫かい?動ける?」声のする方を見ると黒い戦闘服を着た少年が居た。
「ここは何処?貴方は誰?絵梨花と美穂は?」
私が一気に質問すると少年は静かに返す。
「俺は神代武臣、君をこの世界から助けに来たんだ、そして残念だけど俺が見つけたのは君だけだ。」少年の答えを聞き私は取り乱す。
「ここは何処なの?絵梨花と美穂は?何処にいるの!」
「落ち着くんだ!ここは危険だ直ぐに離れよう!」
少年が言った瞬間声が聞こえた。
「美穂?美穂が居る、声がするの!」
私は少年の制止を振り切り走った。
「待って!待つんだ!君も奴等の様になってしまう!」少年の声を無視して私は走った。
私が今居る場所は暗く周りの建物は廃墟になっており所々赤い錆に覆われていた。
「美穂!美穂!何処に居るの?美穂!」私が叫びながら走ると。
「あ、す、か、」微かに美穂の声がした。
「そこに居るのね美穂!」声のする方を見るとそこは薄暗い路地だった。中は暗く見えず確認する事が出来ない。
「あ、す、か、」美穂の声が段々近付いてくる。
「私はここにいるよ!美穂!」
「あ、す、か、」声が近付き暗がりから美穂が顔を出す。
「美穂!心配したんだよ!」美穂は暗がりから顔だけを出し出てこないそれに美穂の顔は何時もより痩せて見えまるで人形の様だった。
「そこから動けないのね?待って行くから!」私が美穂を連れ出そうと近付いた時だった。
「止めろ!そいつに近付くな!」さっきの少年が必死の形相で走りながら叫ぶ。
「何で?え?」少年の言う通り立ち止まった瞬間私の美穂に伸ばした手が消えた。
「ウワァァ!痛い!痛いよ!」私の手が引き千切られ目の前の闇に消えた。
「もう少しだったのに」その言葉と同時に暗がりから黒い人型の化物が現れた。
「え?嘘でしょ?美穂?絵梨花?嫌ぁぁ!」
私がさっきまで美穂だと思っていた者は化物が被った美穂の顔の皮だった。
「せっかくお友達に会えたのにもしかしてこっちがよかったかな?」化物は私の横に何かを投げる恐る恐る見るとそれは恐怖の表情のまま剥がされた絵梨花の顔だった。
「嫌ァァァ!絵梨花!美穂!」私は自分の欠損した腕の痛みを忘れる程泣き叫んだ。
「良いね!良いよ!君の友達も同じ表情のまま僕に頂かれたよ!」化物は美穂の顔のまま笑い声を上げる。
「また助けられなかった」少年は私と化物を見ながら言った。
「おや、おやお前はこの前食い損ねた小僧だな?また性懲りも無く来たのかい?」化物が美穂の顔を歪めながら少年を見る。
「止めて!美穂をそれ以上弄ばないで!」
「おい、おい、先に俺達の縄張りに来たのはお前達だろう?なら文句なんて言うなよ!」化物が美穂の顔をより歪めながら言う。
「残念ながらそこに関してはこいつの言う通りだ、君が今居るここは東京24区一般人は立入ってはいけない非合法な場所だ、ここでは誰も助けてくれないどうなっても自己責任なんだよ」
少年の静かな物言いを聞き私は黙り込んだ、もし私が止めていれば、もし私があの時は辞めさていれば。
だがそうはならなかった二人は無残に殺され今目の前には異形の化物が佇んでいた。
「お喋りはおしまいだなじゃあ俺はメインディッシュを頂くとするか!」化物がそう言いいながら暗がりから巨大な鉈を少年に振り抜く。
「もう同じ手には乗らねえよ」少年は腕で受けた、見ると少年の腕も目の前の化物の様に黒く不定形な形をしていた。
「面白えじゃねえかよ小僧!」化物は鉈を振り回す。
「ここに居たら危ないよ」少年はそう言うと私を抱え飛びのける。
「君だけでも必ず助ける」少年は一言告げると直ぐ様化物と相対する。
「今度は逃げねえのか」
「やられっぱなしは気に食わないからね」化物は大振りで鉈を振る。少年は紙一重で避け距離を詰める。
「ちょこまかとうぜえな!ならこいつを喰らえ!」
化物は鉈を投げると少年に突進するそして不定形な身体が広がり一つの巨大な口へと変わる。
「気持ち悪いな死ねよ」少年は腕を三日月型の刃に変えるとそのまま口目掛けて突き刺す。
「アガ!、オゴ!」化物は口を閉じれず暴れ出す。
「じゃあなイリーガル」少年は化物に対して言うと刃を解き今度は無数の杭に変え化物の身体を貫いた。
「ターゲットダウン、これより帰投します」少年が耳に付けたインカムで何やら話す。
「それじゃあ、終わったし行こうか」少年が明香の方を向くと彼女の千切れた腕の箇所から不定形な塊が生えていた。
そして彼女は無言のまま少年に斬り掛かる。
「ごめん、君も救えなかった。」
少年は明香の首を掴むとそのまま折った。鈍い音と共に明香が崩れ落ちる。
「本部に通達生存者1名死亡、よって生存者無し直ぐに脱出する。」少年は彼女達の亡骸を集め一箇所に埋める。
「例え自己責任だとしても君達には同情するよ」
少年は手を合わせるとその場を立ち去った。
イリーガル•東京 完




