終末世界に幸あれ
「距離600,風速7、照準修正右斜めに3」
俺は相方の指示に従い狙いを定めた。
「発砲許可が降りた撃て」
俺はトリガーに指を掛けて撃った。弾丸が発射されターゲットの頭がカボチャの様に吹き飛んだ。
「命中だ相変わらず良い腕だねアキラ!」
「あんまりはしゃぐなよ見ろ銃声に反応して集まって来たぜ」スコープ越しに見ると、目が血走り涎を垂らし走り周る者達が居た。
「こっちに気付かれたら不味いな逃げるぞアレックス!」
「え、いきなり?待ってよアキラ!」
俺とアレックスは直ぐにその場を離れ近くに止めてあったハンビーに乗った。
「奴等来てるよ!」
「分かってる!クソ!着きやがれ!」
俺がエンジンを掛けるのに苦戦している間奴等が向かって来ていた。
「どいて!これはこうするんだよ!」
アレックスが配線をちぎりエンジンを掛ける。
「良くやった!逃げるぞ!」
俺は直ぐにアクセルを踏み走り出す。ミラーを見ると奴等が追いかけて来ていたが、追いつくはずも無く何とか逃げ切れた。
「今日も生き残れたねアキラ?」
アレックスが水筒を取り出し水を飲む。
「運が良いだけさ、帰ったら任務完了の報告だな」
俺達二人は基地を目指し走り出した。
2035年世界は未知のウィルスにより崩壊した。
発端はある科学者の発表からだった。南極の調査中に未知のウィルスを発見しそれを研究しているとの事だった。
その科学者は西側の大国で研究を行っていたのだが、その施設でバイオハザードが起きウィルスが漏洩したのだ。政府はパンデミックを恐れ封鎖しようとしたが間に合わず、ウィルスは世界中に拡散した。
ウィルスに感染したものは高熱を出しやがて目が赤く充血していき、狂犬病の様に錯乱状態に陥り手当たり次第に人々を襲い始めた。
このウィルスは感染力が強く少しでも噛まれたり、引っ掻かれるとたちまち感染し数を拡大していく。
事態を重く見た政府は戒厳令を出したがすでに手遅れとなり、世界の主要な都市も陥落し世界は崩壊した。
それから20年経った現在かつての国々は独自の自治区を作り、僅かな生存者だけでほそぼそと暮らしていた。
そんな俺もパンデミックが起きた当時は母親の腹の中に居た。母親は隔離施設えと逃げ切りそこで俺は産まれた。
そんな母さんも俺が10歳になる頃に隔離施設で起きたパンデミックに巻き込まれ死んだ。
俺は今の自治区に保護され15歳になる頃に治安維持軍へと志願した、軍で3年間訓練を行い18になる頃には任務えと従事する様になった。
そして現在俺は新入りのアレックスとバディを組んでいる。
「アキラ着いたよ」
基地のゲート前に着きIDカードをかざす。
カードをかざすとゲートが開き地下のガレージへと向かった。
「やっと着いた、私シャワー浴びてくるね」
「分かった俺は先に報告に行くよ」
アレックスと別れ俺は司令室へと向かった。
「失礼しますアキラ二等軍曹ただいま戻りました」
俺は司令室で書類に目を通していた人物に敬礼する。
「無事だったか軍曹!それで報告を聞こうか。」
この人はこの基地の最高責任者であり俺達の指揮官であるエリオット大佐だ。
大佐は俺にコーヒーを渡しながら言った。
「これで報告は以上になります」
報告を終えると大佐が地図を見る。
「そうかC区画にはまだ感染者が多くいるのか」
大佐は地図に印をつけながら言った。
「それでは明後日にアルファ部隊とブラヴォー部隊を派遣して掃討作戦を行う、君は偵察帰りで疲労を考慮して今回の掃討作戦は外れてもらう」
俺は大佐に報告を終えるとと自室へと戻った。
部屋に戻るなり俺は服を脱いだ、フルフェイスのマスク、タクティカルベスト、そして軍服を脱ぎシャワーを浴びた。
シャワーを浴びながら下を向き考える、今日も無事に帰れた事に感謝しながら身体に着いた汚れを洗い流していた。
シャワーを浴びた後ふと鏡を見た、そこには黒髪で黒い瞳の姿が写って居た。
「年々母さんに似てきたな」俺はシャワールームを出るとベットに腰掛け冷蔵庫から持って来たビールの蓋を開けた。最初の一口は一気に飲んで喉に流し込む冷えたアルコールが全身に伝わるのを感じながら口を離す。
「相変わらず染みるな味は最悪なのに何度も飲みたくなる」俺が残りを飲もうとした瞬間自室のドアが叩かれた。
「入って来いよ」俺が言うとドアが開かれブロンド髪の少女が入って来た。
「アキラ何で食堂に来なかったの?待ってたのに」
そう言いながら俺の相方のアレックスが入って来た。
「悪い今日は疲れててさ先に部屋で休んでたんだ」
俺はビールを飲みながらアレックスに言った。
「それならそうと言ってよ、アキラが居ないからまたジェイコブ達にナンパされたよ」
アレックスは俺の隣に座りながら言った。
「モテモテだな、良いじゃねえかよ一回位付き合って見れば?」俺が冗談ぽく言うとアレックスが否定する。
「嫌だよ、あの人達下品な事ばっかり言うしそれに私の胸やお尻ばかり見てくるんだよ」
アレックスは嫌悪した顔で言った。
「まあお前を見てたらあいつらがいきり立つのも分かるよ」俺は笑いながら酒を煽る。
「それってアキラも?」
アレックスの唐突な一言に俺はむせた。
「いきなりなに言うんだよ!?俺とお前はバディだろ?それに、、」そう言いかけた瞬間アレックスが俺をベットに押し倒す。
「私前からアキラの事好きだったんだ、バディとか関係無く一人の女として」アレックスはいつもの元気でハツラツとした雰囲気とは違いいつもよりも艶っぽく色めかしい雰囲気をしていた。
「おい、おい、流石に冗談が過ぎるぜ?降りてくれよそれに何度も言うが俺は、、」そう言いかけた瞬間アレックスが無言で俺の口をキスで塞いだ。
アレックスは俺の舌を暴れ狂う蛇の様に何度も絡ませた、その度に俺は必死に離そうとしたがアレックスが俺の身体を抱き締め離さない。その間も俺の舌はアレックスの舌に貪られていた。
「ハァ、ハァ、これでわかった?私が本気だって」
時間にして数分の出来事だったが俺は激しい快楽のせいで頭が真っ白になっていた。
「お前一体こんなテク何処で?ちょっと待てよ止めろ!これ以上は!」俺の抵抗虚しく完全に発情したアレックスに俺は一晩中貪られた。
朝になり目を覚ますとアレックスはもう居なかった。
俺は昨日の夜を思い出し溜息をついた。
「ちくしょうよりによって最初の相手が17のガキかよ、それにしてもあいつ何処であんな技覚えたんだ?」俺はシャワーを浴びトレーニングルームへと向かった。
次の日掃討作戦の日が来た俺は今回不参加と言う事もあり、見送りにだけ来ていた。
「アキラ、お前は今日は行かないのか?」
声のする方を見ると屈強な兵士が3人程居た。
「ジェイコブか、ああ大佐に止められていてな」
俺がタバコに火を着けながら言った。
「すると今回アレックスは一人か、心配だろ?」
ジェイコブが薄ら笑いを浮かべながら言った。
「心配要らねえよあの子は俺のバディだぜ?ヤワな鍛え方はしてねえよ」
「それでも心配だろう?どうだお前がいいなら俺達があの子を守ってやるぜ?なあに対価はあのでかい胸と尻でご奉仕してもらえれば良いぜ、なんならお前も、、」
ジェイコブが言った瞬間俺は持っていたタバコをジェイコブの額に投げた。
「アチィ!」その好きに怯んだジェイコブの鳩尾を殴り痛みで倒れ込むジェイコブの首に腕を回し絞め上げた。
「ぐぅァァァ!」ジェイコブはたまらず俺の腕をタップする。
「俺はな冗談と下品な話が嫌いなんだよ、もし俺の相方に手を出してみろそん時はテメェの汚え粗チンを切り取って、ケツに突っ込んでやるぜ?」
ジェイコブは分かったと一言だけ言って唖然とする二人の兵士と共にトラックへと向かった。
「チッ、ゴミが調子に乗ってんじゃねえよ」
俺は下に降りていきアレックスに会いに行った。
「アキラ!来てくれたの?」アレックスが俺を見るなり走ってきた。
「ああ、見送りにな分かってるな必ず生きて帰って来いよ?」
「うん、必ず帰って来るよそれで何だけどさ」
アレックスが俺に近付き耳打ちする。
「帰ったらまたアキラの部屋に行っていい?」
俺はその言葉を聞きあの日の事を思い出した。
「ああ、良いぜ好きなだけ来ても」
「アキラったら顔が赤いよ?何を期待してるの?」
アレックスがイタズラっぽく言う。
「うるせえ、風邪ひいてんだよ」
「大丈夫、私の胸もお尻も好きにしていいのはアキラだけだからね、だから帰って来たらまた二人で愛し合おうね」
アレックスはかなり大胆な事を言った後トラックに乗り込んだ。
「全くなんであんなビッチになっちまったんだろうな」俺はタバコに再び火を着けながら見送った。
そしてアルファ部隊とブラヴォー部隊が帰って来る事は無かった。
あれから1週間が経ったが以前として掃討部隊から連絡は無かった。
「大佐行かせてください!アルファ隊とブラヴォー隊を見つけてきます!」
「無茶を言うなまだ様子を見るべきだ」
俺は司令室で大佐に直談判していた。
掃討部隊からの連絡が途絶えたのは任務開始から2日後、彼等は最後に中央病院に行くと言って途絶えた。
「あの病院は最初にパンデミックが起きた場所だ、未知の感染者の報告もされている君一人では危険すぎる!」
「だからといってまだ生きているかも知れない仲間を見殺しにするんですか?俺は一人でも行きます処罰は帰ってからいくらでも受けます!」
「待て軍曹!待つんだ!」
俺は大佐の静止を振り切り司令室を出た。
装備をひとしきり揃え俺は無断でハンビーに乗り現場に向かった。3時間後、俺はCブロックの外れに来ていた。入り口を抜けるとあの時アレックス達が乗っていたトラックを見つけた。
俺は車から降りると辺りを警戒しながら近付いた、辺りには感染者の死体が散らばっており、腐敗が進んで強烈な悪臭と無数のハエが飛び交っていた。
「仲間の死体はないか居るのはハエと蛆虫だけか」
俺は徒歩で進む事にした。
20分程歩き街の中心近く来た、そして仲間達が消息を経った病院へと着いた。
病院の入り口はには無数の死体と薬莢が落ちており、ここで激しい戦闘が起こった事を物語っていた。
俺は正面玄関に向かって石を投げた、石が投げられた所から音が反響して行くそして中から数人の感染者が走って来た。
「久しぶりだなクソ野郎!」
俺は感染者の顔を見て言った。その感染者は顔を食い千切られ頬の肉がなくなり歯茎が剥き出しになっていた、腹からは長い腸が垂れ下がりその腸を引き摺りながら走って来る。
俺は変わり果てたジェイコブに鉛玉を3発撃ち込んだ。そして後から走って来た二人にもそれぞれ2発撃ち込んだ。後ろの二人は頭に命中し崩れ落ちた。
だがジェイコブはベストにしか当たっておらず唸り声を上げながら掴みかかる。俺はジェイコブの襟を掴むとそのまま背負い投げをし地面に叩きつけ藻搔くジェイコブの頭に一発撃ち込んだ。
俺は玄関を制圧し病院の奥を進んだ、すると壁にスプレーで矢印が書いてあった。
矢印の方角は地下を指しており俺は矢印にそって進んだ。
地下に進むと無数の薬莢と隊員達の死体が転がっていた。
壁には銃痕と血、そして巨大な爪痕があった。
「何だこれは、初めて見るな」
隊員達の身体も引き裂かれており辺りには腐敗した内臓が散らばっていた。
俺は隊員の顔を確認してまわったがアレックスの姿は無かった。
ライトで照らしながら地下2階に入ろうとした瞬間何かが横切っていった。
俺は警戒しつつ進む。
「誰かいないのか?アレックス?」
俺が小声で言うと微かな声でうめき声が聴こえた。
ライトで照らすと負傷した隊員が居た。
「大丈夫か?他の生き残りは?」
「他の生き残りは分からない、俺達は奴等に全滅させられたんだ」
「奴等?なんだそれは?」
「言いか、音を立てるな奴等は音を聞きつけてくる」
隊員が説明している時にふと頭上から気配がした。
ライトで上を照らすとそこには何も居なかった。
「俺をここから逃がしてくれ、あいつらの餌になりたくないんだ」
「すまないが人を探しているそいつを見つけるまで俺はここから出ない。」するといきなり隊員が黙る。
「どうしたんだ?」
「静かにしろ!奴等だ奴等がきている!」
隊員はいきなり怯え始める。
「俺はもう駄目だ、奴等に見つかった!頼むあんた俺を殺してくれ!あいつらの餌になりたくないんだ!」
隊員が俺を掴みながら言う。
「何言ってるんだよ!一緒ににげるぞ!」
だが男は俯き黙る。
「こんな足じゃ駄目だ、せめて自決用に銃をくれ!早く!」男の鋭い剣幕に押され俺はハンドガンを渡した。
すると暗い廊下の奥から複数の影が見えた。ライトで照らすとそこには四つん這いになった真っ白い生物が居た。その生物は顔がなく顔の部分から腹に掛けて長い線が入っており、両腕には骨が飛び出し形成された刃が生えていた。
「逃げろ!奴等は目が見えない早く!」
俺は直ぐにその場を後にした後ろからは数回銃声が鳴り響きやがて男の断末魔が木霊した。
俺は地下3階に降りさっきの化物に警戒しながら進んだその間建物の柱やガスボンベにC4を仕掛けてまわっていた。
「アレックス?居ないか?アレックス?」
俺が小声で呼び掛けるとまた小さなうめき声が聴こえた。
その場所に向かうと部屋があり部屋の隅で誰かがうずくまっていた。
俺はその人物にライトを照らした。
「うぁ、ァァァ」
「アレックス?」見るとそれは衰弱したアレックスだった、アレックスは長く暗闇に居たせいで精神をやられていた。
「もう大丈夫だ一緒に帰ろう」俺は怯えるアレックスを抱き締めたすると安心したのかアレックスが少し落ちつきを取り戻した。
「アキラ?どうしてここに?」
正気に戻ったアレックスに軽く説明して俺達は出口を目指した。
俺達は来た道を引き返しながら進んだ。
そしてあの化け物が居たフロアに戻ると、赤い肉塊となった隊員の死体に群がる化け物の群れが居た。
「ここを横切るしか無いな」
俺が静かに言うとアレックスが無言で頷く。
そして俺達は化け物の横を渡った、近くで見ると化け物達は頭から腹に掛けて空いた穴に隊員の肉を入れていた、その穴には巨大な牙が生えておりそこが奴等の捕食器官だった。
俺はその横を通り過ぎアレックスに合図するアレックスも化け物の姿を見て引きつった顔をしながらとおる。
だが俺達はまだ知らなかったもう一匹新種が居たことに、アレックスが渡りきりドアを開けようとした瞬間、「待ってアキラあれ何?」
アレックスの言葉を聞き廊下の先をライトでてらした、するとその先に子供程の背丈の白い化け物が居た。そしてそいつはライトに照らされた瞬間、甲高い金切り声を上げた。
俺とアレックスが耳を塞いでいたが直ぐにその場を走って逃げ出した。金切り声に反応し一斉にあの化け物達が追いかけて来たのだ。
「クソッタレ!何だよあれ!」
俺はアレックスの手を引いて走った。
そして玄関にたどり着く。
「アレックス走れ!」俺の言葉にアレックスは玄関に向けて走り出す。
俺はC4の起爆スイッチを出そうとした瞬間一匹の化け物が俺に飛び掛かる。化け物は巨大な口を開け俺を生きたまま食おうとする。
「そんなに食いたきゃこれでも食ってろ!」
俺は手榴弾を化け物の口に突っ込み蹴飛ばした。
化け物がのたうち回るのを尻目に俺は起爆ボタンを握り締め走った。
「アキラこっちだよ!」
「伏せろ!」
俺はアキラを抱いて飛びながら起爆ボタンを押した。
すると地面が大きく揺れガラスが飛び散り建物が地面に沈んでいく。
「終わったか」
俺は崩れ落ちる病院を見届けアレックスと共にハンビーへと戻った。
「アキラありがとう、私このまま死ぬのかなって思ってたよ」助手席でアレックスが言う。
「言っただろ?必ず帰って来いって約束は守ってもらうぜ」俺はタバコに火を着け言った。
「そうだったねじゃあ約束通りアキラの部屋に行っていい?」アレックスが照れくさそうに言った。
「まずは報告と検査だそれにこんだけ死ぬ思いしたのにそんな事考えてたのか?」俺は呆れながら言った。
「だって私が頑張れたのもその約束があったからだし、それに」
「それに?」
「あの夜のアキラの泣きそうになってた顔思い出して、頑張ったんだよ?」アレックスが俺を見ながら言う。
「あのなあの時は俺も酒に酔ってたんだ、だからあれは一夜の過ちと言うかだな」
「そんな事言いながらアキラだって何度も私の名前呼んで乱れてたじゃない」俺は顔が赤くなるのを感じた。
「それにアキラだって気持ち良かったでしょ?何回も二人でイッたじゃない?」
「あのな?この際ハッキリ言わせてもらう、俺は女なんだぞ!?つまりお前はレズなのか?」
「違うよ私はアキラだからいいんだよ、たまたまアキラが女の子だったからそうなっただけだし、それに女の子同士の方がお互い気持ち良い所分かるよ?」
アレックスは艶めかしく舌なめずりしながら言った。
「分かったよ、それじゃあこの話は帰った後だな」
「うん、二人でおかしくなるまで愛し合おうね!」
俺は少しぞっとしながら車を走らせる、こんな終末世界でもアレックスみたいに自分に正直に生きれたら幸せだろう。
終末世界に幸あれ 「完」
次回 「シスター✕シスター✕サディスティック」




