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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

いきおいってあるよね☆

作者: nana

酒の勢い?って怖いですね!

「なんでこんなことになったのだろうか……」

隣ですやすやと寝息を立てる男を眺めながら小さなため息をつく。目を覚まして数分、状況が理解出来ずにただ呆然としていた。

何とか正気を保とうと、とりあえずスマホを探そうと辺りを見渡し、そこでようやくそばに落ちている服と自分の姿に気がつき、今度は大きなため息をつく。

なおも隣の男は気持ちよさそうに眠り続けている。

「頭が痛い…」


----------------------


「愛らしい、なんでこんなに愛らしく感じるんだろう」

画面の向こうの友人に語りながら酒を煽る。こんなに楽しいのは久々のことだった。夏休みだというのにバイト三昧で、友人達と飲むこともしばらくなかったためか、自分の酒の弱さも忘れて飲み続けてしまった。

「お前いい加減やめろよ、飲みすぎだぞ」

そう言う友人の制止も聞かず、また一缶空ける。

「でも楽しそうでなによりだよ」

スマホ越しに参加している友人も彼のそんな顔を見て心配しながらも少し安心しているようである。

「でも本当に愛らしいよな、なんで画面越しだとこんなに愛おしいんだろう」

「相当酔ってるだろこいつ…」

「そろそろ帰らせた方がいいんじゃない?」

そう言う友人達を尻目に画面の向こうの彼を見つめ続けた。

(……愛らしいな)


----------------------


……というのが昨日、もとい数時間前の話。

その時実際に、彼が愛らしく見えたのは否定しない。久々に画面越しに見た彼は、小動物のような愛くるしさがあり、そのことばかり口にしていた気はする。しかし、自分が男に手を出すとは到底思えなかった。自分の見た目から男女問わず好意を持たれる自覚はあったが、男を相手にしたことなど一度もなく、むしろそのことを軽蔑さえしていた。そんな自分にとってこの状況は全て受け入れ難い。昨日のことを思い出そうとして起こる頭痛は二日酔いによるものか、防衛本能によるものかもはや区別がつかなかった。その時ちょうどスマホの通知音が鳴った。


『昨日大丈夫だったか?あの後あいつの家に1人で行ったらしいけど、無事につけたか?』


昨日宴会場になった家の友人からのようだ。この状況の真相を探るべく、とりあえずメッセージを返す。


『よく覚えてないんだが、何があったか教えてくれないか?』


『生きてるならよかったよ笑

お前昨日いきなりデッサン始めて、本物見て描きたくなったとか言って1人であいつの家向かったんだよ

帰らせようとしたけど聞かなくて、結局デッサンの道具持って家を飛び出して行ったよ笑』


意味のわからない行動をしたことに反省しない訳では無いが、自分がこの男を抱くために来たわけではないと分かり少し安心する。そこで昨日の会話が少し蘇る。


一一一一一一一一--


「可愛いなぁ」

そう言いながらスクリーンショットを連発する自分に、家主の友人はさすがに冷ややかな目を向けてきた。

「お前ホモかよ」

そう言う友人に向かって僕は確かにこう言った。

「別に男の硬い身体には興味ない。男を掘るとか汚いだろ。」

「なんだそれww」


-----------


その会話を思い出してまた胸を撫で下ろす。自分に限ってやはりそんなはずはないと自信を持って言える。この文面を見るに、僕は自分の意思でスマホ向こうの友人宅に来たようだ。確かにデッサン道具も床に転がっており、本来の目的をこなしていたようだ。

安心したら急に昨日の自分が描いたものに興味が湧き、どんな絵を描いたのかと見たくなった。

「なんだこれw」

友人の愉快な顔のデッサンを見て、昨日の楽しかった記憶も徐々に蘇り笑いがこぼれる。

そして数枚捲った後、僕は一生分の後悔をした。撫で下ろしたはずの胸が跳ね上がるのを感じた。そこに描かれていたのは隣に眠る友人の、なんとも妖艶な姿であったのだ。しかも1枚やそこらではなく、10枚近く、全て違う構図であった。これを何も見ずに描いたとはとても思えない。むしろ想像だけでこれを描いた方が気持ち悪い……いっそ気持ち悪い方がマシである。この手癖が自分のものであるのは自分がいちばんよく分かる。見れば見るほど、状況がありありと伝わり、何も覚えていなくても手に取るようにわかってしまった。また頭が真っ白になる。


「ん、うん、、」


急に呻き声をあげた隣人にビクりとする。そうだ、まだ隣に本人がいることを忘れていた。そろそろ起きてしまうであろう友人に、何を言えばいいのだろうか。

まずは挨拶か?

『おはようございます』

なんで敬語なんだ、気まずさが増すだけだろう『おはよう』

そんなにフランクに言ったらこの状況を受け入れているみたいじゃないか

『…ごめん、何も覚えてないんだ』

だめだ、これで女の子に殴られたことを僕は忘れない。


そんなこんなで頭を抱えているうちに寝返りを打ち始めた隣人は今にも起きそうである。男の悪ノリであったとはいえ、これはまずいことくらい僕にも分かる。隣人に背を向け、腰をかけ、呆然としだした時だった。


「おはよう」


振り向くと眠たそうに目を擦る友人がいた。


結局どうなるんでしょうね!

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