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75話  シャーリー

 ◆ ◆ ◇ ◇ シャーリー



 そしてリオは一度実家である屋敷を訪ねたが違っていたらしい。






 がっかりして伯爵家の王都のタウンハウスへと帰ってきた。


「リオ、どうだった?」


「よくわかりませんが俺はエドワードではなかったようです。母親らしき人から俺の顔を見ても知らない人だと言われました」


「そう、じゃあ貴方が持っているそれらは貴方の持ち物ではなかったのね」


「たぶん……そうなんだと思います。あの屋敷に行ってもなにも思い出せないしなにも感じませんでした」


「そう……わたしは一月ほどしたらまた領地へ戻るの。護衛としてまた領地へついて来てくれたら嬉しいわ」


「あの……俺が誰なのか証明されない今、雇ってもらっても大丈夫なのでしょうか?」


「気にしないで、一緒にいられて嬉しいわ」


「………俺もシャーリー様を護衛させてもらえることを光栄に思います」


「リオ、記憶はどう?」


「王都に来れば思い出すのではと思いましたが全く駄目でした」


「わたしもお父様に頼んでみるわ」


「ありがとうございます」


 結局リオは記憶は戻らないし自分が誰なのかも分からず王都で滞在するのは一月ほどでまたわたしとコスナー領へ騎士として付き添うことになったの。


 離れてしまうと思っていたのに、これからも一緒にいられる嬉しさと彼への恋心を諦めずにいられると思うと、わたしはなんだかふわふわして落ち着かずにいた。

 わたしはリオを好きなんだと感じていた。


 だけど、使用人のメイドがリオに話しかける姿を見るとそれだけでヤキモチを妬いてしまうし、リオがわたし以外の人に笑いかけると落ち込んで、自分でもどうしていいのかわからなくなった。

 だから二人っきりで出来るだけ一緒に過ごす時間を作るようにした。



 二人で過ごす時間が増えていく中で、お互いがさらに惹かれ合い、いつしか本当の恋人になっていったわ。


 そんな二人の関係を周りも認めてくれるようになっていき、二人でいることが自然で当たり前になっていった。


 そしてわたしに甘いお父様がリオとの関係を知ると。


「リオは優秀だから申し分ない。わたしの親戚の養子になってもらおう。それから二人に婚約してもらい籍を入れるようにしよう」

 とすんなりと受け入れてくれたの。


 そして婚約半年後、リオとコスナー領にある大きな教会で結婚式を挙げた。


 それからすぐに赤ちゃんを授かったわ。


 わたしのお腹の中には赤ちゃんがいたけどわたしは友人達と会うことはやめなかった。


 結婚しても赤ちゃんがお腹にいても、時間があれば友人達と買い物に行ったりお茶会をしたりして過ごした。


 身重でもパーティーに参加するのをやめないし、ダンスも喜んで踊る。


 リオは心配してそんなわたしに


「そろそろ自重して大人しくしていたほうがいいと思うんだが」

 と言ったけど、わたしはもちろん言い返したの。


「あら?リオったら妬きもちなの?愛しているのは貴方だけよ」


「シャーリー俺も愛している。だからこそお腹の赤ちゃんのこともあるから心配なんだ」


「赤ちゃんが生まれたらしばらくは大人しくしていないといけないのよ?遊べる時に遊ばなくっちゃ」


 リオは結婚してすぐから領主代理としていつも忙しかった。それこそ昼間ゆっくり話す時間もなくいつも仕事に追われていた。

 わかっていても寂しかった。恋人同士の時は彼はわたしの護衛でいつもそばにいてくれたのに。


 わたしは彼への愛情を確かめるように、態と遊び歩いたりした。

 妊娠すると男の人は他の人に目移りすると聞いて、ついリオが浮気してしまうのか、わたしへの愛がなくなるのか心配で、わたしが遊んでも何をしても変わらずわたしを愛しているのか確かめずにはいられなかった。


 でも流石にそんなバカな行動もお腹が大きくなるとやめた。

 やっぱりお買い物は赤ちゃんのものばかりに目がいってしまう。

 お腹の中で赤ちゃんが動くのを感じた時とても感動して涙が溢れた。

 わたしに母性が目覚めた時だったわ。

 リオとの大切な子供。わたしの赤ちゃん。



 ベビー服にベビーベッド、タンスや布団、おもちゃにぬいぐるみ、絵本など目につくものは何でも買ってしまう。


 まだどちらが生まれるかなんてわからないのに

「可愛いと思うものは男の子のものでも女の子のものでもいいから買っておきましょうよ」


 とリオに言って買いまくった。


 そんなわたしにリオは呆れながらも『仕方ないな』と優しく微笑んでくれるの。


 わたしはリオに愛されている。そう感じることが出来るたびに心も落ち着いていった。


 彼はわたしを裏切らない。


 ーーー愛してくれている


 お腹の赤ちゃんを愛おしいと感じられる。



 ーーーある日ーー

 

 わたしを後ろから抱きしめたリオが


「君を永遠に愛しているよ」


 と、わたしに囁いてくれた。

 驚きと嬉しさで返事をすることも忘れてしまって、わたしは何も言わずに彼に振り返り抱きついた。


 ーーーわたしも愛しています。

 


 いっぱい我儘言っていっぱい好きだと言ってるのに、『愛しています』と言うのがこんなに恥ずかしいなんて。


 その一言が言えないでいた。好きだと言えて愛していると言えない素直になれないわたしがいる。

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