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53話

 ◇ ◇ ◇ ラフェ



 一晩静かに過ごした。


 丸いパンを1個、お水とサラダを夕食として出された。


 朝から食事は摂っていないが、お腹すら空かないので勿体無いけど食べる気がしない。


 小さな窓からひたすら外を見上げていた。


 星しか見えない暗闇はいつアルバードを連れて行ってしまうのだろうと不安になった。



 ーー大丈夫、アルバードが死ぬわけない。


 あんないい子なのに、死ぬなんてありえない。


 何度も何度も自分に言い聞かせてこの狭い部屋で祈り続けた。


 ーーアルバードをお助けください………と。




 小さな窓から朝日が差してきた。


 多分今は6時くらいだろうか。


 扉に耳を当て部屋の外の様子を窺った。

 まだ音が聞こえない、とても静かだった。


 時間だけが静かに過ぎていく。

 焦りとどうしてこんなところにいるのかと思うと悔しくて、そばに居てあげられない自分に無性に腹が立った。


 アルバードのそばに居てあげられないのは、わたしの罰なのだろうか?


 わたしがアルバードをちゃんと見ていなかったから。

 知らない人にはついて行かないようにとは言っていた。だけど家の前で話しかけられればアルバードはニコニコと返事をする子だ。


 どうしてそばで見守ってあげなかったのだろう。


 どうして知らない人に話しかけられても話してはいけないと教えなかったのだろう。


 わたしは母親なのに……守ることすらできなかった、わたしが全て悪い。



 どんなに反省してもここから出ることは出来ない。


 そして部屋の外からやっと物音が聞こえるようになった。




                             

 ーーーーー


 誰でもいい。アルバードの容態だけでも教えて欲しい。


 わたしは部屋の中から扉を何度も叩いた。


「お願いです、アルバードが今どうなっているか教えてください」


 だけど返事はなかった。


「お願いします、アルバードの、息子の命は、助かったんですよね?

 死んでなんかいませんよね?

 お願いします、誰か教えてください。

 わたしの大切な宝物なんです。お願いします、アルバードがどうなったのか教えてください」


 わたしの問いに答えてくれる人はいなかった。


 部屋の外から鍵をかけられたわたしにはアルバードのところへ駆けつける術がない。


 窓は小さ過ぎて外には出られない。

 鍵も外から閉められている。


 何度も何度も諦めずに声をかければ誰かがここから出してくれるかもしれない。


 わたしは何度も何度もアルバードのことを聞いてみた。だけど誰もアルバードの容態を知らせてくれる人はいない。


「お願いですからアルバードのところへ帰らせてください」


 すると初めての反応が………



 扉を蹴られた。


 バンッ‼︎


「うるさい!いい加減にしてください!ここからはしばらく帰れません!何を言ってもあなたに同情なんて出来ない!静かにしていてください!」


「お願い!せめてアルの容態だけでも!」


「そんなのここではわかりません。ハアー………死ねば連絡が来るでしょうからその時は知らせます。まだ知らせがないんだから生きてるんじゃないですか?」


 冷たく言い放たれた言葉。


 だけど………そうか連絡がないと言うことはまだ生きているんだ。


 その言葉にすごく安心した。




「朝ごはんです」


 警備隊の人が食事をトレーに乗せて持ってきてくれた。


「ありがとうございます」


 頭を下げお礼を言った。



 わたしはまだ食欲がわかず、お水をいただきベッドに横になった。


 誰もわたしに声をかけてこない。それはまだアルバードが死んでいないから。そう思うと少しだけホッとしてやっと少しだけ……眠りについた。




 ◆ ◇ ◆ グレン


 アーバンは解放する事にした。


 もうとにかくさっさと犯人たちを捕まえる!


 俺はラフェの元旦那になんて興味はない。それに俺がどうすることもできないし、こう言う時はなるようになる。


「アーバン、あんたもわかってると思うが今この領地で問題が起きている。俺たちはそれを調べて摘発するために来ている。あんたの兄ちゃんらしき人はここの代表だ。今はあまりかき回されたくない」


「わかりました、ただもう少しだけこの街にいるつもりです、会えなくてもはっきりさせたいんです。邪魔するつもりはありません」


「よろしく頼む」


 アーバンは娼館から出て行った。


 この男、生真面目なんだろう。娼館の中を歩く時、気恥ずかしそうにしている。


 俺たちは情報を得る時や大切な話をする時、娼館を使う。出入りしても遊んでるようにしか思われないし怪しまれにくい。


 アーバンと別れてから、すぐに部下たちがさっきの部屋に入ってきた。


「そろそろ商会の奴らと売人を捕まえよう。証拠も証人も集まった。言い逃れは出来ないだろう」


 俺はこの時まだラフェが大変な思いをしていることを知らなかった。


 






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