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49話

 ◇ ◇ ◇ ラフェ


 馬車から降ろされて警備隊の建物の中に連れて行かれた。


 ここは夫がいた騎士団とは別の部署で王都を守るため、犯罪を犯した人たちを捕らえたり犯人を探したり、町の平和を守ってくれる隊だ。




「薬を飲ませたのは貴女ですか?」


 取り調べと言われ怖かったが酷いことを言われたり脅されるのかと思っていたけど、そんなことはされなかった。


 わたしを連行した人達は若い人達だったので、完全に犯人だと思い込み強めの口調と態度で脅したみたいだった。


「わたしは息子にそんなことはしていません。それよりも息子の体調はどうなっているのか知ることはできませんか?あの子は今苦しんでいるんです、そばに居てあげられないのでとても寂しがっていると思うんです」


「すみません、貴女の身の潔白が証明されればすぐにでも帰してあげられるのですが、規則なので今はどうしようもありません」


 警備隊の人は眉を顰めて困った顔をして、気の毒そうに言った。


「あの、どうすればいいのですか?どうしたら帰れるのですか?」

 簡単には帰れない。なんとなくそう感じてはいるけど少しでも早くアルバードのところへ帰りたい。


「貴女がしていないと言う証拠があればいいのですが……」


「証拠なんてしていないのだからあるわけないじゃないですか!」

 冷静でいようと思っていたのについ声を荒げてしまった。


「では最近誰か怪しい人とかいませんでしたか?何か不審に思ったこととかは?」


 ここ最近のことを必死で思い出そうとした。

 だけど仕事に追われて昼間はアルはわたしの近くで遊んでいるか、裏庭で一人で遊ぶか、近所のおじちゃんやおばちゃん達にお世話になるかしかない。


 近所のおじちゃんやおばちゃんにアルバードを殺そうとする理由はない。

 いつも通り、遊んでもらったり昼ごはんを食べさせてもらったりした。


 アルバードが何か失礼なことをして怒らせたなんてなかった。3歳のなにも持たない子供を殺して何かメリットなんてあるとは思えない。


「わかりません。わたしは家で仕事をしていることが多く、アルバードも普段通りに過ごしていたと思います」


「うーん、なにか少しでも違和感を感じたこととかありませんでした?」


「違和感?」


「アルバード君が誰か知らない人と接触したとか、たとえば道を尋ねられたとか、なにかアルバードくんが熱で倒れる前に話したりはしませんでした?」


 倒れる前……


「あっ、最近、家の前で遊んでいたらお兄ちゃんが話しかけてくると言っていました」


「お兄ちゃん?」


「ご近所さんとはみんな顔見知りなんです。だけどそのお兄ちゃんはアルバードが今まで知っていた人ではないみたいで、『お友達になったの』と嬉しそうに話していました」


「ラフェさんはお会いしたことは?」



「ないです。

 だから『知らない人とは話しては駄目よ』と言ったら、『いっぱいお話ししたから大丈夫!」とニコニコしながら言ってたんです」


 その後も何度も同じような質問を繰り返し聞かれた。そしてやっと終わったのは外が暗くなる時間だった。


 ーーやっと帰れる……と、ホッとしていると


「申し訳ありませんが帰す訳にはいきません。今回の薬物は今問題になっているんです。まさかもう王都にまで持ち込まれているとは思いませんでした。だから初めての患者さんの母親である貴女も疑うしかないのです」


「……帰れない?お願いです、帰してください!

 息子が死ぬかもしれないのにまだ治るかわからないと言われているのです。アルバードのそばに居たいんです」


 何度も訴えたのに駄目だった。


 わたしは牢ではなく警備隊の建物の一室に泊まることになった。

 中から鍵を閉めることはできない。逃げ出さないように外からしか鍵がかからないようになっている。


 ーーまるで犯人扱いね


 小さな窓、簡素なベッドと部屋の中にはトイレがついていた。


 本当にそれだけ、他にはなにもなかった。






 ◆ ◆ ◆ エドワード



「ただいま戻りました」


 王都に行って調べてもらうように頼んでいた執事見習いのジミーが疲れた顔をして帰ってきた。


 今はサリナル商会の怪しい薬物のことを急ぎ調べているところで、自分の以前の王都での様子の報告を聞く余裕はなかった。


「すまない、ジミー。ゆっくりと話を聞きたいのだが今緊急でバタバタしていて話す時間が取れそうもない。申し訳ないが報告書に纏めて欲しい」


「わかりました急ぎ報告書を纏めます」


「ああ頼む、だが今日はゆっくりと休んでくれ。お疲れ様」


 ジミーが執務室を出ていく後ろ姿を俺はじっと見ていた。


 本当は少しなら聞く時間はあった。しかし今はシャーリーのことも絡んだ大きな問題が起きていて、自分の記憶を失う前のことを聞いても考える余裕はなかった。


 怪しい薬物による中毒者が少しずつ領地の住民の中に増えていること。


 ただ売る方は簡単には入手できないようにしていた。買う人を限定しているのだ。


 足がつかないようにしている。


 俺だけでは対処が難しい。だからシャーリーがこの問題にどこまで絡んでいるか調べて、国へ報告をすることにした。


 勝手に動けば国にどう思われるかわからない。ならばこちらも被害者であることを伝えるつもりだ。隠すより商会を調査し捕まえる意向を国に示した方が得策だ。


 シャーリー自身この商会の顧客ではあるが薬は飲んでいないようだし金銭の授受はしていないようだ。


 とにかく少しでもこちらが悪くならないように動かないといけない。


 たぶんそんな言い訳をして、現実を知る勇気が今はないのだろう。


 シャーリーとオズワルドを守らなければ、この領地を守らなければ、その想いと、………現実を知って仕舞えば、揺らいでしまうかもしれないと言う気持ちが、今日話を聞くということを先延ばしにしてしまった。



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