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46話

 ◆ ◇ ◆ グレン



「おい、薬、売ってもらうどころか売人にならないかと言われたぞ」


「グレン様、流石ですね」

 部下達が感心して言われたが


「あんまり嬉しくない。そんなにガラ悪く見えるのか?」


 俺は鏡に映る自分の姿を見た。


 確かに髭を伸ばし髪はボサボサにしている。こんな姿ラフェに見られたら俺死ぬかも。


 好かれるどころか絶対嫌われる。アルにも友達やめると言われそうだ。


「はあー、こんな仕事さっさと終わらせて俺は長期休暇を取って王都に早く行きてぇ」


「ラフェさん、いい子ですもんね。必死で仕事をして子供を育てる姿は健気だし、守ってあげたくなりますもん」


「俺も子供いてもラフェさんなら全然いけます」


「アルくん、可愛いですもんね。あの子将来女泣かせな男になりますよ」


「お前達……絶対ラフェに手を出すな!あの子は真面目で頑張り屋なんだ!お前達みたいな碌でもない男が手を出していい子ではない!」


「グレン様だって……」


「うるさい!俺はこう見えて真面目なんだ!お前達みたいに女なら誰でもいいわけじゃない!」


「わかってますよ!グレン様はずっと真面目に女断ちしてた人ですもんね。やっと新しい恋をしていることに気がついたばかりなんですから、邪魔はしませんよ」


「はあ?新しい恋?なんだそれ!」


「本人全く気が付かないでアル君のところに毎日通ったんですもん。みんな知ってましたよ。

 アルくんに会いに行くと言いながらずっとラフェさんのこと心配ばかりしてたし。

 体にいいものを食べさせようと自ら料理の内容まで指示して料理長に作らせたり、家の工事だって、忙しい使用人達を無理やり連れ出したり、仕事だってあんなに忙しいのに朝起きるのが苦手なくせに早起きして昼までに仕事を終わらせて毎日通うんですから!」


「それは、アルが可愛いからで……」


 そうか、アルが可愛いのは確かだけどずっとラフェが気になっていたのはあの頃から好意を持っていたからか……


 最近自覚したのに、周りは以前から気がついていたのか……


「はああーー、そんなわかりやすかったか?」

 俺はテーブルに顔を埋めて唸った。


「グレン様があんなに生き生きしているの久しぶりに見ました。ずっと笑顔もなく死んだように過ごしてましたからね」


「俺も嬉しいです。ドンっと当たって砕けて振られて来てください!」


「フラれる前提なのか?」






 ーーーーーーーー


 そんなバカな会話の後、


 これからどうするか話し合うことにした。


 俺が売人になって売るために、客になってもらうことにしたのは、辺境伯側の商会であるヴァレン商会の信頼できる使用人達になってもらうことにした。


 もちろん金は全て辺境伯家から出ているし、品物自体は売らずに証拠品として回収しておくつもりだ。


 俺が売っている姿を何度か店主に見せて信頼してもらうことが先決だ。


 そしてもっと中に入り込み、誰が指図しているのか、入手先、この領地で誰が利益を得ているのか、まだまだ調べて証拠を探すしかない。


 何がひと月で済むだ!全く終わらない。


 あーー、ラフェに会いたい。アルに会いたい。


 アルに忘れられてたらどうしよう。


 俺は急いでまた手紙を書いた。


『会いに行くから待っててくれ!』


 もうこの言葉に尽きる。

 つ




 ◆ ◇ ◆ エドワード


 シャーリーとオズワルドとのゆっくりと過ごす時間が増えれば増えるほど、記憶を失う前の自分の生活がどんな感じだったのか気になってしまう。


 王都へ行った執事見習いのジミーからの連絡はまだなかった。


 俺には妻と子供がいたらしい。


 どんな人なのか、会ったとしてもどうすればいいのか。


 そのことをシャーリーにどう伝えるべきか。


 考えれば考えるほどどうしたらいいのか分からず、仕事に集中したくてもなかなか出来ずにいた。



 そんな時、領地の仕事の補佐をしてくれているチャーリーが慌てて執務室へと入って来た。


「リオ様、大変です。今この街に隣国から来たサリナル商会が怪しい薬を売っているとの情報が入って来ました」


「サリナル商会?あそこはシャーリーの友人に頼まれて出店の許可を出した店だったはずだが?」


 シャーリーの友人の子爵の次男であるワイルズ殿が、この国に出店したいと希望している友人が営む商会があるからと頭を下げて来た。

 シャーリーもその商会からワイルズ殿を通してよく薬を仕入れてもらっていたから、この商会を是非うちの領土に出店して欲しいと願った。


 もちろん、他国の商会を簡単に出店させるわけにはいかない。


 商会の経営状況、売っているもの、身元調査など調べて国に申請して許可を出した。


 その時はそんな怪しい薬を売るような店には思えなかった。

 店主になる男も人当たりも良く使用人らしい物言いで特に不審な点はなかった。


「その薬は、あるのか?」


「いえ、簡単には入手出来ないようで噂でしかありません。しかし、許可をしたのがシャーリー様の頼みだと国に分かってしまえば問題になるのは間違いありません。

 コスナー領は全て国に返還することになるかもしれません。それに伯爵の地位もどうなるかわかりません」


「そうだな、何か手を打たないと。俺たちが証拠を集めて先に捕まえるしかないな」





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