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番外編   アルバード⑤

「アリアのいとこか……うん、そうだな……知ってるよ。アルバードは……おじさんの息子なんだ、ルドのお兄ちゃんなんだよ」


「ルド兄ちゃんのお兄ちゃんが、アルお兄ちゃん?」


「えっ?だっていっしょにはくらしてないよ!それにアル兄ちゃんのお母さんはラフェおばさんだよ?ルド兄ちゃんのお母さんはなくなってるはずだよ?」


 ーーーそっか、ルドのお母さんは亡くなってるのか……


 そんなこと知らなかった。話す時気をつけなくっちゃ。


「おじさんの前のお嫁さんがラフェおばさんでアルバードが生まれたんだよ。そしてその後結婚してルドが生まれたんだ」


「えーーー!おじさんってさいていなんだぁーー、なんでふたりもおよめさんがいるのぉ?」


 ーーーアリア、突っ込みすぎだと思うよ………


 僕はアリアの厳しい言葉にどうしていいのかわからなくて固まっていた。


 大人には色々事情があるんだよ。なんて6歳の女の子に説明してもわからないだろうな。


 そう思ってどうしようとアルテおばさんの顔を見たら、おばさんはアリアを止めるどころかニヤニヤと嬉しそうに笑っていた。


 それも、うんうんと頷いていたり、握り拳を作りガッツポーズを作っていたりと、男達が動揺して困っているのにアリアを一人楽しそうに応援していた。


 お父さんは、「最低か……ほんとそうだな。そんなにはっきり言ってくれたのはアリアだけかもしれないな」


「アリアはうわきはゆるさないもの。ねっ、おかあさん?おとうさんがうわきしたらおしりをおもいっきりけってやるんだよね?」


「おい、アリア!父さんは浮気なんてしたことないぞ!母さん一筋なんだから!」

 アーバンおじさんが、さっきまで黙っていたのに慌てて参戦してきた。


「ぶはっ!」

「はははっ!」


 僕とルドはおかしくて二人とも声を出して笑い出した。

「お兄ちゃんたち、どうしてわらうの?とうさんがうわきしたからけるんでしょう?」


 頬を大きく膨らませて怒るアリアに、思わず言った。


「アリアのお父さんはまだ浮気なんてしていないよ?」


「あっ!!そっかぁ、まだしてない、ねっ?」


「俺はまだしてないんじゃなくて一生しないから!なんでそんな話になるんだ!」


 なんだか緊張すらなくなってアリアのおかげで普通にお父さんと話せる気がした。


 思い切って自分から話しかけた。


「お父さん、この前は助けてくれてありがとうございました。ずっとお礼を言いたかったんです」


「あれは当たり前のことだ。たまたま近くにいてよかったよ」


「周りの人たちは誰も関わろうとしなかったし助けてもくれなかったです。お父さんが助けてくれて嬉しかったんだ」


「アルバードもオズワルドも変な大人に絡まれた時は、怖がらず大きな声で助けを呼んでみろ、そしたら流石に大人は助けに入ってくれるから。ダメでも警備隊に声をかけに行ってくれる」


「あ、そうだよね。怖くて声も出なかった……」


「怪我がなくてよかったよ」


「はい!」


「とても元気で明るい子に育ってくれた」


「へへっ」


「勉強も学年で首席だと聞いてる。騎士団の見習いとして頑張ってるんだって?」


 ーーー父さんがこっそり見に来てくれてるって聞いたよ。

 口には出せないけど心の中で呟いた。


「うん!」


「…………会いたかった……ずっと苦労させてすまなかった………お母さんを守ってくれて……ありがとう…………」


 そう言うとお父さんは、僕を抱きしめた。


 グレン様が僕を抱きしめてくれる時とはまた違う。

 匂いも大きな手も同じ男の人なのに違ってた。


「父さんとオズワルドに会ってみたかったんだ。ずっと…この王都にいればいつか会えるかもしれないって思ってた……偶然でもいいから会いたいなって思ってたんだ。そしたら助けてくれた……本当に嬉しかったんだ」


 涙がポロポロ溢れてきた。


 ーーーやだな、みんな見てるのに。アリアがまた変なこと言い出すかもしれないな。

 せっかくお兄ちゃんとしてルドと仲良くなったのにこんな情けない姿見せたくないのに……


 カッコつけたいのに、涙が止まらなかった。

 だけど頭の上に涙が落ちてきたから、止めなくていいのかなって思った。


 ふと周りを見ると、アリア以外みんな泣いてた。


 アリアはそんなみんなをキョロキョロと見て「??」って顔をしてた。


 ーーーお母さん、父さんに会わせてくれてありがとう。


 心の中で何度もお母さんのことを思い浮かべた。









 お母さんの居るアレックス様のタウンハウスに帰った。


 僕の顔を見るとグレン様が走ってきた。


「アル!おかえり!」


「父さん!ただいま」


「……えっ??」


 グレン様の顔ったらすっごい間抜けな顔をしてる。ポカンとして固まってる。


 辺境伯領の騎士団の団長で、子爵だけど公爵の名を叙爵されようとしたのを断った凄い人。

 僕のことをずっと考えて見守ってくれる、お母さん以外では僕を一番愛してくれた人。


「今日から父さんって言うことにしたから!」


「おっ、おお……わかった」


 父さんは真っ赤な顔をして嬉しそうに笑った。

 だから僕も笑って返した。


 お母さんがいつの間にかそばに来て何も聞かずに


「アル、おかえりなさい」と言ってくれた。







長い間、お付き合い頂きありがとうございました。

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