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105話

 ◇ ◇ ◇ ラフェ


「おかあしゃん、ギュレンに、あいたいの」


 最近アルバードは寂しそうに言ってくる。


「グレン様はお忙しいの、だから、もうしばらくは来れないと思うの、ね?我慢してね」


「…………わかった」

 口を尖らせてムスッとしているアルバード。思わず抱きしめて「お母さんじゃ駄目?ずっとそばにいるわ」と言うと……


「おかあしゃんとギュレンが、いい。いっしょだと、おなかがふわって、なるの。おかおもにこにこになるの」


「お腹がふわっと?そっかぁ……アルはグレン様といると幸せな気分になれるのね」


「しあわせぇ?」


 アルバードには言葉の意味がわからないのでキョトンとしていた。

 だけど嬉しそうにまた面白い歌を歌い出す。


「しあわしぇ~おなか、ふわふわなの〜」


「アルの今日の歌も面白いわね」

 わたしはアルバードがテーブルの上でお絵描きをしながら歌を歌っているのを、仕事をしながら聞いている。

「アルね、ギュレンにおてがみ、かいてるの。おかあしゃんとギュレンと、アルなの、ねっ?みて!」


 そこには三人の人らしき絵が描かれていた。


 父親のいないアルバードにとってグレン様は憧れ懐いている人。なのにわたしはアレックス様のお屋敷を飛び出してから連絡を断っている。


 アーバンから聞いたエドワードの話にさらに戸惑いしか隠せなかった。


 エドワードが生きていることをアーバンは知っていた。もちろん兄弟なので知っていることは当たり前なのかもしれない。


 だけど、周りは知っているのにわたしだけが知らされていない。それはわたしに対する優しさなのかもしれない。わたしのことを忘れてしまっているエドワードに今更妻がいると知っても彼もどうしようもないだろう。


 それにこの四年の年月でわたしの心も変わっていった。

 エドワードは亡くなった。


 そう思って生きて来てなんとか気持ちの整理もついて、今はアルバードと二人っきりの生活を必死に前だけを見て生きて来た。


 エドワードと再会してどうなるのだろう。わたしを覚えてもいないのに。アルバードのことを責めても彼にはアルバードの存在すらないはず、彼が原因の一つだとしてもアルバードに危害を本人があたえたわけではない。たまたまコスナー領で麻薬を売る商会を引き入れてしまっただけ。そう聞いた。


 アルバードの楽しそうな姿を見ると胸が痛くなる。


 実の父親に間接的とは言え殺されかけたのだ。なんて残酷なのだろう。


 それに彼には新しい家庭がある。


 そう聞かされた時、特に悔しいとか辛いとか感じなかったのは、やはりこの四年という時間が経ってわたし自身の心が彼を思い出として捉えて来ていたからだろうか?


 ーーもう会うことも関わることもないだろう。


 このままアルバードと二人、この家でグレン様のことも忘れて穏やかに生きていくことになるのだろう。



 ◆ ◇ ◆ グレン



「ラフェから会うことを拒否されている」


 何度か手紙を送ったが『今は来ないで欲しい』と返事が来た。




 俺たちは、なんとか王妃とコスナー氏を牢に入れることができた。


 コスナー氏はすぐに廃爵されて平民として裁判を受けることになった。


 エドワードが持って来た帳簿が証拠となり罪を問えることになった。もちろんそれ以外の証拠も揃えたのですぐに廃爵となった。


 領民を苦しめた麻薬事件では、売人となって小遣いを荒稼ぎしたシャーリーの友人達とその親も捕まった。さらにそれを全て指示したコスナー氏も捕まった。


 コスナー氏はかなり悪どいことをしていたので余罪はたくさんあるからまだまだ罪は出てくるだろう。


 そして王妃は………病気で長期療養すると国民に向けて発表された。


 王妃を慕う国民は皆心配し、嘆き悲しんでいた。


 あの人は俺にとっては最低最悪な人だったが、これだけ国民に慕われているという事は、本当は悪い人ではなかったのかもしれない。


 あの人の瞳に映るのはいつも俺への憎悪と歪んだ愛情だった。何度となくゾッとするほど気持ちが悪くなった。あの目から逃れようと王都に近づかないようにしていた。


 俺は辺境伯領の強者たちを率いる騎士団の団長をしている。剣も闘いもそれなりに強いと思っている。もちろんアレックス様には敵わないが。

 だけど幼い頃から刷り込まれて来たせいか王妃のことだけは苦手だ。蛇のようなあの人が。



 しかし、あれだけのことをしても王妃を罪に問う事は出来ない。


 今安定しているこの国に態々人気の高い王妃のスキャンダルを公表して混乱を招く事は出来ない。かと言って王妃のしたことを無視することもできない。


 だから王妃はいずれ王城にある北の塔へと入れられることになる。そこに入れば生きていく事は出来るが二度と外へ出る事は出来ない。人と接することもないだろう。死ぬまで一人で孤独の中で生き続けなければいけない。ある意味処刑された方がマシな気もする。


 生きているのに死んでいるのと変わらない。そんな生活をさせられるのなら死んだ方がいいのでは?と心が狂気に支配されていく。


 あの人にも理由があったのだろうか?いくら俺が嫌いでも、ラフェ達にまで危害を与えるとは……





 俺は王妃と対面することになった。


 彼女からの断っての願いだと言われた。










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