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86.はじめて皆でご飯をした

 ご飯が美味しい。シュハザはすごく綺麗なご飯を作ってくれた。びっくりするくらい、野菜の色が綺麗なの。白いお魚の上に赤と黄と緑が並んで、紫も載った。


 美味しそうな香りがするよ。そこへ豪快に丸焼きされた肉を持ち込んだゼルク。くんと嗅いだら、ハーブの葉っぱの匂いがした。


「この兎は丸々と太ってたからな、野草を詰め込んで蒸し焼きにしたんだ」


 太ると食べられちゃうのかな。心配になってお腹をぷにっと摘んだら、笑いながらメリクに抱っこされた。


「イルは摘むほど太ってないぞ。サフィやルミエルとお菓子を見てきてくれ」


「うん」


 抱っこでひょいっと、サフィへ移動する。サフィは細い体で大きなお胸があった。絵本に出てきたお母さんみたい。柔らかくて、気持ちいい。足元でルミエルが自分の胸を撫でていた。


「どうしたの」


「私だってあと数十年したら大きくなるんだから!」


「うん、そうおもう」


 僕もメリクを抱っこできるくらい、大きくなるんだ。心でそう考えたら、メリクが咳き込んだ。ゼルクとシュハザは顔を背けるし、ルミエルは変な顔だった。僕を抱っこしたサフィは「いいことですわ、大きくなって抱っこしましょうね」って言う。


 僕、声に出したっけ? そう思ったけど、なぜか僕が言わなくてもメリク達は分かってくれる。言葉が上手じゃないから、とっても助かるの。


 ご飯を作るお部屋は、甘い香りがしていた。焼いたお菓子を、熱い鉄板から下ろすのはサフィがする。僕やルミエルは危ないって。だから冷えてる箱から、ピンク色のお花を飾ったお菓子を出した。これは冷たくて、ぷるぷるするの。


 前に暑い日に食べたんだ。中に果物が入ってるんだよ。透き通ったピンクの中に、白っぽい果物が見えた。上に濃いピンクの花びらが載せてある。


 僕とルミエルは両手で冷たいお菓子を運んだ。にゃーの分もあるから、片手と一個。手が足りないので、一度運んで戻った。


「これもお願い」


 サフィが焼いたパンをくれる。僕はパンを持って、冷たいお菓子はルミエルが運んだ。後ろから焼いたお菓子をサフィが持ってくる。


 ご飯が全部並んだら、お座りする。メリクがジュースを出してくれた。僕は紫の、ルミエルは青にする。見ていたゼルクが欲しがり、赤いのを飲んだ。


 ご飯はどれも美味しくて、お腹いっぱいに食べた。にゃーも満足したみたい。ごろんと寝転がっている。


「神として、あれでいいのか?」


「普通は私達を怖がると思うのですが……」


 ゼルクとシュハザが首を傾げる。にゃーのお話? サフィが明るく笑った。


「あの子、きっと大物になるわよ」


 メリクは僕を膝に乗せて、冷たいお菓子を「あーん」するのに忙しかった。僕も焼いたお菓子を「あーん」した。


 もう怖い人は来ないよね。メリクが頷くので、僕はにっこり笑った。眠くなって寄りかかると、黒髪をメリクの手が撫でる。気持ちいい。目を閉じた僕は、夢を見た。


 いっぱいある綺麗な球が壊れる。それを必死で直そうとする人がいっぱいいて、振り返って僕を指差した。お前が悪いって、僕に叫ぶ。怖くなった僕をメリクが「違う」と叫んで抱っこした。


 目が覚めると「変革がどうの」と知らない話をしている。メリクの腕をぽんぽんして、僕は下ろしてもらった。難しいお話してる場所で寝たから、変な夢を見たんだね。


 にゃーの横まで歩いて、ふかふかの毛皮に顔をくっつけた。ここならいい夢だと思う。くるんと尻尾に巻かれて、僕はもう一度目を閉じた。

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― 新着の感想 ―
[一言] いまだに いる を悪く言うやつがいるんですね。 いる には優しいものだけにしてあげたい・・・。
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