表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

70/105

70.オルゴールをもらったの!

 メリクが連れて行ってくれた世界は、すべてが美しかった。その話をお土産にする僕に、ルミエルは嬉しそうに頷く。滝や虹の冒険も、果物がたくさんの森で眠った夜も。たくさんあって、全部話すのは難しいくらい。


「楽しかったのね、良かった」


 笑うルミエルに、果物を渡した。


「これあげる」


「ありがとう。イルちゃんに私からプレゼントだよ」


 プレゼントは贈り物で、受け取ってお礼を言ったら合ってるよね。言葉を頭の中で置き換えて、渡された箱を見つめる。


「あけていい?」


「もちろん」


 ルミエルが頷いてから、上のリボンを引っ張った。ぱらっと解ける。箱をどこから開けようか考えていたら、ルミエルが手を貸してくれた。蓋になってる部分があるの。そこを開けると、また箱が入っていた。


 中の箱は木で作ったみたい。二人で取り出した箱は、キラキラした石が埋め込まれていた。それに表面がぼこぼこして、お花や虹の形になっている。すごく綺麗。


「きれい! ありがとう」


「どういたしまして。宝物を入れてね」


 宝物……思いついたのは、虹の根元から出てきた赤い石だった。貰った箱に入るよね。蓋を持ち上げる僕の耳に、お歌が聞こえた。誰かが歌ってるんじゃなくて、お歌みたいな音が出てくる。箱に耳を近づけたら、音が大きくなった。


「これ、おと……する!」


 音が出るよ。興奮した僕に、ルミエルが説明してくれる。オルゴールという箱で、宝物を入れたり音を楽しむんだって。開けるたびに音がするんだ。でも蓋をすると音が止まる。


「この音は音楽というのよ」


 お歌も音楽だし、街で聞こえた笛の音も音楽。興味を持った僕に、ルミエルがお歌を歌ってみせる。すごく綺麗な声だし、音も綺麗だった。


「覚えて一緒に歌いましょう、ほら、イルちゃんも歌って」


 少しずつ区切って教えてもらい、夕方になるまでにお歌を覚えた。オルゴールの音楽と同じ音なの。この音楽のお歌なんだ。オルゴールは途中から始まるから、待っていると初めから歌える。


 ルミエルを真似して声を出したら、ちゃんと歌えた。僕は家の前のお花畑でいっぱい歌って、貰った箱を抱えて帰る。赤い玄関を開けた先で、メリクに「ただいま」を言った。


「おかえり、楽しかったか?」


「うん、おるごぉる、もらった」


 箱を見せて蓋を開ける。音楽が鳴り始めた。すごく綺麗な透き通った音がするの。少ししたら音楽が一度止まったので、また鳴り始めた音に重ねて歌う。


 キラキラ光るお空の星のお歌だよ。精霊が集まって、お部屋の中で光った。昼間のお外では見えないけど、お部屋の中だと明るいね。にゃーも目を丸くして、僕のお歌を聞いている。音に合わせて光る精霊に、にっこり笑ってお歌は終わった。


「すごいな、綺麗な声だ。歌も上手で驚いたぞ、イル」


 褒めてもらって、嬉しい。そう伝えて抱きついた。箱を机の上に置いて、メリクに赤い石を出してもらう。オルゴールの箱に入れた。そっと蓋を閉じる。


「うん、大丈夫そうだ。良かったな」


「ありがとう」


 お礼を言って、箱を揺らした。中でからんと音がする。これは赤い石の音だ。開けると音楽が鳴る。嬉しくて嬉しくて、ご飯を食べる時もずっと膝に置いていた。だけど、お風呂に入る時は、ダメだって。


「風呂の間は、にゃーに見ていてもらおう」


 にゃーは箱の前でくるっと丸くなった。ちゃんと見ていてね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] いる の声は、優しいんだろうなぁ・・・。
[良い点] おるごぉるにハマるイルちゃんもいい…!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ