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62.二人で旅行に行こうか

 ルミエルは今日も遊びに来てくれた。お花を摘んで、それを輪にするんだ。お座りして一緒に作ったけど、僕のはあちこちから茎が出ちゃった。それをルミエルが直していく。


「ありがとう、ルミエル」


「どういたしまして。私の方こそ、遊んでくれてありがとうね」


 驚いた。僕は遊んでもらったのに、ありがとうまで貰えるの? 目を見開いた僕に、彼女は自分が作った花の輪を載せる。頭に被せてもらったそれは、花冠と呼ぶんだって。


「花冠はお姫様にあげるわ。何日か来られないけど、泣いたらダメよ」


 笑いながら立ち上がるルミエルに、泣かないよと約束した。それはそれで寂しいと不思議なことを言うルミエルに、ばいばいと手を振って別れる。振り返って家に向かって走った。花冠の輪をひとつ頭に載せて、ひとつを手で握って。


「メリク」


「おかえり、イル」


「ただいま」


 咄嗟に花冠を後ろに隠した。どうやったら、ルミエルがしたみたいに頭に載せられるんだろう。椅子に登って上から? それともベッドの方がいいかな。迷う僕の前に、メリクが膝を突いた。姿勢が低くなった、今だ!


「これ、あげる」


 ぴょんと飛び上がり、メリクの頭に花冠を載せた。顔を上げて笑うメリクが、僕の黒髪に乗った花冠をつつく。


「お揃いだな」


「おそろい!」


 一緒という意味だ。覚えた言葉が出てくると嬉しくて、ぎゅっとメリクに抱きついた。そのまま抱っこされて移動する。


「ほら、見てごらん」


 メリクの言葉に振り返れば、鏡があった。僕とメリクが立ってる。二人とも頭に花冠があるの。ルミエルが直してくれたから、綺麗に輪になっていた。色が少し違う花冠に、メリクはにこにこ笑う。楽しそう。


「これは大事にとっておこう」


「とっとけるの?」


「もちろんだ」


 光る粉をいっぱいかけた花冠は、精霊の小さな人が寄ってくる。花に触れて嬉しそうに踊るのは、見ている僕も楽しい。二つ並べて机の上に置いた。


「にゃーは?」


「戻ってきたぞ」


 僕がルミエルと遊んでいると、にゃーはいなくなっちゃう。どこかへ出掛けて、また戻ってくるんだ。どこで何をしているんだろう。椅子の上に座った僕に近づいて、膝の上に顎を載せた。これは撫でていい合図だよ。


「にゃー、草ついてる」


 頭や体についた草を摘んで、机の端に並べる。後でお外に出すんだ。全部は届かないけど、いくつか取って。それからにゃーを撫でた。三毛猫という呼び方は、色が三つあるから。白に黒と茶色が入ってるの。僕と同じ黒色があるから、家族なんだ。


「……俺の世界すべて黒髪にしようか」


 ぶつぶつとメリクが何か言ったけど、撫でる手を止めたらにゃーが鳴いた。うにゃんと言われて、慌ててまた撫でる。すべすべで柔らかい毛が気持ちいいね。


「旅行に行こうか」


「りょこう……お出かけ?」


 行くのはお出かけだと思う。そんな僕に「よくわかったな」と褒めたメリクが、近くはお出かけで遠くは旅行だと話した。遠くへ行くの?


「にゃーも?」


「にゃーはコテツとお留守番だ」


「僕とメリク?」


「そう、二人で行こう」


「うん!」


 遠くってどこかな。海のお船に泊まるのも、近くの街の買い物も楽しかった。メリクと出かける先は、いつも楽しい。だから今度も楽しいといいな。

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