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58.同じ色の家族だね

 たくさん遊んで食べて、いっぱい寝ることが仕事――メリクはそう言った。訪ねてくるルミエルと遊んで、時々顔を出すコテツとお昼寝したりする。


 一日が短くなった気がした。前は朝から夜までが長かったの。今は遊び始めてすぐに日が暮れるんだ。意地悪してるみたいに、早くだよ? そう話したら、メリクが「楽しいほど早く時間が過ぎるんだ」と笑った。


 僕、楽しいんだね。メリクと出会ってから、すぐ一日が終わるけど、それは楽しいから。じゃあ、文句を言ったらいけない。楽しいんだもの。


「いい子だ、それに賢いぞ」


 メリクは僕を褒める。いつも、どんなことでも、少ししか出来なくても、叩いたりしなかった。もう叩かれることはないのかも……。


「明日はルミエルが来る日だったな。一緒に街へ行こうか」


「まち、いく!」


 リボンを買ったお店があるのは、街だった。あそこは黒い髪の人がいっぱいで、僕やメリクと同じ色……あ!


「メリク、ルミエル……嫌じゃ、ない?」


 僕は同じ黒髪の人がいると安心する。でもルミエルはお日様色の髪だから、嫌かもしれない。黒い髪ばかりの街は、楽しくないかも。それだったら、僕行かないよ。


「ルミエルは髪を黒くするぞ。そう言ってた」


「そうなの?」


 簡単に黒くなるの? 首を傾げたら、濃い色は簡単なんだけど、薄い色は難しいみたい。僕がルミエルの色にするのは大変だけど、逆は簡単なの? ほっとした。


「おなじくろ」


 三人とも同じなんだね。にこにこと髪の先を引っ張る。この色、僕は大好きだよ。寝てる時のお空の色と似てるから。明日がとても楽しみになった。


「今日は早く寝るぞ。コテツに乗っていくからな」


「うん……コテツ、おもくない?」


 僕とメリクはよく乗るけど、ルミエルまで乗せられるかな。心配になったけど、コテツは大きいから平気だって。お礼のお魚やお肉をいっぱいあげよう。メリクとそう約束して、僕は目を閉じた。いつもと同じ、メリクの綺麗な歌が聞こえる。


 聞いたことのない言葉だけど、すごく綺麗。目を閉じているのに、明るい草原や広い森、どこまでも遠い空が見える気がした。





 赤い靴にピンクの服、リボンは赤にした。黒髪に似合うと言ってもらってから、ずっと赤いのがお気に入りなの。


 ルミエルは白に青い線が入った服で、青い靴だった。リボンは白だよ。まだ髪はお日様色だけど、メリクがぱちんと指を鳴らしたら黒くなる。凄い、同じ色の家族だ。


「うわぁ、ルミエル……かわいい」


「ありがとう。でもイルちゃんの方が可愛いわよ」


 今日もにゃーはお留守番。最近は僕と遊ぶより、待っていることが増えた。少し寂しい。でもにゃーは大切なお仕事をしている。そう聞いたから、僕は我慢できるよ。


 ばいばいと手を振って、コテツの背中に乗る。今日はルミエルの後ろに僕、さらにメリクが跨った。コテツは気にした様子なく、元気に森を走る。今日はいつもより速く森を抜けた。広がる景色は、前回と同じ崖の上だ。


「よし降りよう」


 コテツはここまで。街に行くと皆がびっくりしちゃうんだ。帰りに迎えに来てくれるコテツを撫でて、お魚を渡して別れた。いつも通りメリクの抱っこで降りる。振り返ると、ルミエルも自分で飛んでいた。


「僕もとびたい」


「大人になるまで抱っこさせてくれないか?」


 メリクが僕に頼むの? うーん、それなら抱っこでいいや。

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― 新着の感想 ―
[一言] ほんとに いる が大切なんですね。抱っこできる時期は短いから、そして、大きくなって心に残る愛情のひとつだから、しっかり抱かれてね いる。
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