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57.ご飯を食べて一緒にお昼寝をする

 起きて「おはよう」を聞いて僕も言う。昨日寝る前に何だっけ、メリクに聞こうと思ったのに。忘れちゃったけど、寝るまでに思い出すといいな。


 昨日のお肉を切ってパンに挟み、包んでから箱に入れる。その箱は、メリクの黒い穴に入れられた。収納って呼んでるみたい。にゃーも一緒に行く。


「コテツ!」


 メリクが笛を吹いた。少し待つと虎のコテツが現れる。のそっと顔を出して、僕に近づいた。大きいよね。メリクの肩くらいまであるんだよ。立ち上がったら、僕やメリクよりずっと大きい。


「乗せて」


 お願いすると、ぺたんと平たくなった。僕を乗せた後ろにメリクも跨る。揺れながら湖に近づき、ぐるりと右側に回った。足元に生えている草も、時々出てくる低い木も。コテツはぴょんと飛び越える。


 ぐらっと揺れるけど、メリクが僕を後ろから抱っこしているから平気。湖の水が外へ流れている場所を見つけた。ここから川になるんだ。川は大きいのしか知らないけど、最初は細くて小さいんだね。これもコテツが跨いだ。


 湖の反対側はお家がある方より、木がいっぱい生えている。まるで森の中だった。メリクと手を繋いで覗いた湖は、黒っぽいけど青。向こうと同じ繋がった水なのに、色が違う。手を入れたら、すごく冷たかった。


 お魚は見えない。水が冷たいから隠れているのかも。


「おいで。イル」


 メリクに駆け寄って、収納の黒い穴から出したご飯を並べる。お肉が真ん中のパンと、お肉と、お野菜と、お肉。あれ? お魚がない。


「俺がにゃーにご飯をやるから、イルはコテツにあげてくれ」


「うん」


 コテツの前に大きなお皿を置く。銀色なんだよ。そこへお肉を載せるんだけど……パンは食べないの。だからお肉だけを前に置いた。ぺろりと舐めるみたいに食べるコテツの尻尾が、大きく揺れる。


「おいしい?」


 さらに尻尾が揺れた。美味しくてよかった。もう一度載せて、さらにまた載せた。置くたびに、コテツはぺろりと食べてしまう。楽しくなって、次々とお皿に並べた。


「もう大丈夫だ。俺達も食べようか」


 メリクに声を掛けられるまで、夢中になってご飯を運んだ。肉の汁がいっぱいついた手は、コテツに舐められちゃった。だから湖で濡らした布で、よく拭いてもらう。


 木の根元に座ったメリクのお膝に、横向きで座った。離れた茂みの前で、コテツとにゃーが寝ている。もうお腹いっぱいなのかな。僕はパンに挟まったお肉をぱくり、差し出されたパンにはお野菜も入っていた。僕もメリクの口にパンを運ぶ。


 たくさん食べて、お昼寝をする。コテツとにゃーがいる日陰に移動して、僕はメリクに抱っこされたまま横になった。食べた後は眠いの。でもこのまま寝ると、早く夕方になっちゃう。心配でゴシゴシと目を擦るけれど、メリクに止められた。


 温かいメリクの腕に守られて、僕は目を閉じる。ゆらゆらと目の奥で光が踊る気がした。綺麗だな……。

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