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56.毎日が美味しくて楽しくて嬉しい

 にゃーは、耳が長い動物をいくつも捕まえてきた。メリクがお肉に変える間、汚れたにゃーはお風呂に入る。僕もお手伝いして、ごしごしと洗ったんだ。毛皮を脱がないで洗うのは、猫だから?


「うにゃん」


 返事をしたにゃーは、お湯で綺麗になった。自分で飛び込んで、ぶるぶるしたら汚れも泡も取れたんだ。僕に飛んできた泡は途中でいなくなった。首を傾げたところで、メリクに呼ばれる。お風呂を出るまで歩いて、足を拭いたら走った。


 お風呂の中は、走ったらダメなんだよ。今日はお肉を外で焼いて食べることになった。暗くなった家の外に、オレンジ色の炎がある。メリクと一緒に火のそばに座った。温かいし、なんか眠くなりそう。


「塊を焼くから、イルに大事なお仕事を頼みたい」


「うん、やるよ」


 お肉をメリクがくるりと回したら、お皿を差し出す係だよ。このお仕事は大事だって言ってた。お皿に入ってる黒い汁を、ぺたぺたと塗る。いい匂いがしてきた。


 焼けた頃に現れたにゃーが、大人しくお座りする。メリクが切り分けて、僕のお皿に乗せてくれた。大きいままだよ。すごいね、こんな塊は口に入らないかも。


 お皿を置いて眺める僕に、精霊が近づいてきた。首を傾げたり、お肉を見ている。欲しいのかな。あげてもいいか、メリクに聞いてあげよう。


「ん? 精霊にあげるのか。そうだな、切ってからにしよう」


 メリクは薄くお肉を切って、別のお皿に載せた。それに精霊が集まっていく。ほんの少しずつ食べるみたい。僕とメリクはひとつのお肉を、小さく切って食べた。メリクが上で手をゆらっと動かせば、お肉が切れるの。


 大人になったら僕がやりたいな。口を開けてお肉を噛めば、すごく美味しかった。外側が少し塩っぽい。ふわっと不思議な香りがして、いっぱい食べた。


「残りは明日のお昼にしよう。ルミエルは明日来られないから、俺と湖の反対側へ遊びに行こうな」


「はんたい? いく!」


 指さしたのは湖の向こう側で、遠い場所だった。僕一人では無理だけど、メリクがいれば平気。きっとにゃーも行くと思う。残ったお肉はメリクが切って、お片付けをした。


 もう一度お風呂に入って、メリクと同じ匂いになってからベッドに寝転がる。毎日お腹がいっぱいになるし、ご飯は美味しい。メリクは優しくて、にゃーやルミエルもいい人だ。この家で柔らかいベッドで寝て――ずっとこのままがいいな。


 今日は天使と悪魔が出てくるお話を読んでもらった。悪魔は悪いことをするけど、時々いいこともする。天使と協力して、悪い人間を倒すお話だった。難しいけど、明日の夜もう一度読んでもらうの。


 同じお話を何度も聞くと、中身がわかるようになるんだって。知らない言葉を覚える時と同じだった。うとうとして目を閉じれば、メリクが「おやすみ」と囁く。


 目が覚めたら聞いてみよう。おやすみには、なんて返すの? 僕もお返事したい。

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― 新着の感想 ―
[一言] メリクと同じ香りになることがうれしいって・・・すでに女・・・。いやいや、パパが好きな娘?(笑)どっちにしろいろっぺ~~~(笑) 大事にされる毎日に浸ってほしいです。それが当たり前になる未来は…
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