52.可愛い女の子と仲良くなるの
今日は服を自分で選んだ。服はお洋服って呼ぶの。専用のお部屋に入れてるけど、メリクの服はいつも黒っぽい。僕はピンクや赤、青、黄色、いっぱいあるのに。
「いっぱい、黒ある」
「ああ、何となく落ち着く色なんだ。今日はピンクにするのか?」
僕が掴んだお洋服は、ピンク。ひらひらしたスカートで、上もきゅと縛らないの。だからお座りしたり立ったりするのに、邪魔じゃないと思う。両手を上げると、着ていた夜用のお洋服がすぽんと脱げた。上からメリクが引っ張るんだよ。
脱いだら、下に履いてるパンツも新しいのを履く。それから両手を上げたら、ピンクのお洋服が降ってきた。両手を通してくるりと回る。
「うん、とっても可愛いぞ。髪を結ぼうか」
「うん!」
ピンクと赤、黄色をじっと見つめて、黄色を選んだ。同じピンクも好きだけど、今日はお花を摘むから黄色なの。赤は買った日に付けたから。
黒い髪をメリクは優しく撫でる。指で何度も撫でて、サラサラになったらリボンを巻いた。その前に黒い紐も巻くんだよ。そうしたらリボンが取れないんだって。お店の人の言葉の通りで、リボンはいつも髪についていた。
こないだの三つ編みじゃなくて、耳より上で右と左に結ぶ。リボンを買った次の日から、お家には鏡が来たの。メリクがお洋服の部屋に置いたから、着替えたら必ず前に立つようにした。昨日読んでもらった絵本のウサギみたい。
絵本はたくさん絵があって、文字がちょっとだけ。メリクが読んでくれるお話を聴くのは、とても楽しかった。今夜も違う本を読んでもらう約束をしたんだ。黄色いリボンが右と左に付いて、頭を揺らすと首に髪が触る。
「遊んでくる」
「ああ、気をつけてな。変な人が来たら、俺とにゃーを呼ぶんだぞ」
「うん」
にゃーも一緒に外へ出た。日向の暖かいところでお昼寝を始める。僕はその少し先にあるお花畑に座った。黄色、赤、白、青、これは……紫! 花を摘むのは、覚えたばかり。最初はお花のすぐ下を折ったんだけど、持って帰ったら瓶に入んなかったの。
メリクはお皿に水を入れて並べた。でも花用の瓶に挿したい。だから今日は下の方で折った。なのに横倒しになった花が取れない。
「うぅ……」
目一杯力を入れて引っ張ったら、いきなり抜けた。根っこが付いてる。根っこは戻した方がいいのかな。痛かったらごめんね。謝りながら、お花の折ったところで千切った。根っこは穴に戻して、土をかける。ぽんぽんと叩いたところで、声がかかった。
「変わったことにしてるのね」
「だぁれ?」
顔を上げた僕の前に、可愛い女の子がいた。すごく可愛いの。白い服で赤いリボン、髪の毛はお日様みたいな金色だった。
「かわいいね」
僕がにっこり笑うと、女の子はにこにこしながら目の前に座った。僕と同じように、地面に直接だよ。目の高さが同じになる。
「褒めてくれてありがとう。私はルミエル。あなたは?」
「僕はイル」
メリクもそう呼ぶ。一瞬困ったような顔をしたけれど、ルミエルは手を差し出した。
「仲良くしましょうね」
「うん」
ルミエルは凄いな。僕と仲良くしてくれるみたい。それに、すごくお話が上手だ。一緒にいたら、僕もたくさん話せるようになるかな。
「純粋過ぎてヤバい」
意味がわからないことを口にしたりするけれど、メリクも同じ。大人はいっぱい言葉を知ってるから、僕もいっぱい覚えなくちゃね。