表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

51/105

51.遊び友達が必要か(絶対神SIDE)

 家が見える距離から離れないこと。それだけを約束して、自由に遊ばせた。たまには羽を伸ばす時間も必要だろう。幼いうちは一人で遊んだり、何かを発見したりするのも経験だ。


 同年代の友人をどう探したものか。やはり成長には必要だと思う。俺の管理する世界に生まれたなら、友人を作ってしまうのだが。さすがにシアラの世界に負担をかけるのは憚れらた。


 恩人に泥を投げつけるも同然だし。うーんと唸る俺に、ゼルクが接触してくる。中身は子どもみたいな奴だから、これを遊び相手に? いや、それくらいなら女装趣味のサフィの方が、精神年齢が近いか。


 友人候補を真剣に考える俺に、珍しい感情が届いた。好きじゃない、この人は嫌だ。あの可愛いイルがそこまで嫌う? シアラが一緒じゃないのか。窓から覗いた直後、全力疾走するシアラが目に入った。同時に、助けを呼ぶ声が聞こえる。


「ちっ、どこのクソガキだ」


 泣きそうな声で助けを求めるイルを転移した先で受け止め、追いついたシアラに任せた。目配せだけで承知した彼が、家に向かう。近くて安全であり、イルが落ち着ける場所だった。最高の選択だ。


 見送って、溜め息を吐いた。よく配下にしてくれと擦り寄ってきた神の一人だった。名前なんて覚えていない。正直、そんな神は山ほど見てきた。その中の一人だが、最近顔を見たので覚えていただけ。


「あの」


「ゼルク、サフィ、このゴミを処理しろ。シュハザ、根回しを」


「呼ばれてないぃ!!」


 ルミエルが飛び出す。幼女姿のルミエルを眺め、ぼそっと呟いた。


「これでもいいか。ルミエルには大事な仕事がある」


 大事な仕事を任せるから、呼ばれなかった。あとで呼ぶつもりだったんだ。そう判断したらしい。彼女の目が輝いた。単純で真っ直ぐで素直だ。多少不安はあるが、神々の中では善良な部類だった。


「イルの友人になってやってくれ」


「……え、あ、はい」


 思っていた仕事と違う。顔にそう書いた彼女は、曖昧に返事をした。明日訪ねてくるよう言い含め、喚き散らす神を見下ろす。見た目はさほど悪くないが、性格が黒い。汚い、ありえない。愛し子を怯えさせた罪は、万死に値する。そう告げたところ、青ざめた。


 己の言動がもたらした結果を、想像しなかったらしい。そんなバカに用はなかった。トイレに入ったイルが、順番を頭の中で数える。その姿がとても愛らしく、怒りの感情が静まっていく。


 大急ぎで家に入り、青いスカートをひらひらさせるイルを抱きしめた。裾が捲れているが、こっそり直しておく。本人はスカートも下ろして完璧だと思っているのだ。


 家の外を怖がらないよう、安全だから明日も外へ出ようと提案した。イルは信頼を滲ませる微笑みで頷く。明日、友人ができると知ったら、どんなに喜ぶだろう。夜寝られなくなると困るから、朝告げることにした。


「ご飯に食べたいものはあるか?」


「僕、おさかな」


 ちらっとシアラを見る。魚を猫姿の神に分けてやるつもりのようだ。


「わかった、にゃーのご飯は魚だ。イルは?」


 もう一度問い直すと、迷いながら「お肉」と答えた。可愛い奴だ、遠慮なんて不要なのにな。両方用意してやろうと張り切って、机いっぱいに料理を並べてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] トイレに行くことでさえ癒しをくれるいるちゃん。神!(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ