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47.僕は変じゃなかったよ

 お店の女の人は、サービスと言って僕の手首にもリボンを巻いた。不思議な結び方をする。これがリボン結び? リボンを結んだら、全部リボン結びじゃないの? 首を捻った僕に、店を出たメリクが笑った。


「うん、イルは賢い。リボンを結んだら、リボン結びだな」


 賢いはいい子と同じ意味。嬉しくなって僕も笑った。お店の外で寝ていたにゃーが、のそりと起き上がる。


「にゃー」


 呼んでいっぱい撫でた。お外で一人は偉いし、頑張ったの。だから褒めるんだよ。僕もお留守番したら褒めてもらうんだ。にこにこしながら、顔を上げたらメリクが「イルを一人でお留守番なんてさせないぞ」と頬を擦り寄せた。


 じゃあ、僕が褒めてもらうのはないね。ちょっとだけがっかり。でも一人で待つのは寂しいから、褒められなくてもいいや。


 いくつかのお店に寄った。建物の中はお店でいいけど、外にある屋根だけのお店は屋台だった。食べ物は屋台が多いかも。きょろきょろしながら、色々なお店で買い物をした。


 お肉の串、生の大きいお肉、袋に入った小さな粒は調味料。それからピンクのお塩も買う。綺麗だから甘いかと思って舐めたら、すごくしょっぱかった。海くらいしょっぱいの。


 甘いジュースや果物も買ったので、メリクの手が足りなくてにゃーにも荷物を載せた。籠に入れた荷物を、最初は嫌がったの。でも僕がお願いしたら、すぐ載せてくれた。ふふんって顔をしたにゃーに、メリクが何か言ってたけど……僕には聞こえなかったんだ。


 街を出て木がある道を逸れたら、すぐに荷物を黒い穴に片付けた。何でも入るから便利だね。それに入り口は大きくないのに、中はすごくいっぱい入る。覗こうとしたら、危ないと止められた。広いから、落ちたら探すのが大変なのかも。


 飛び降りた崖の前に来ると、メリクが上を指差した。何もない気がする。じっと目を凝らす間に、ふわりと動いた。


「ん……」


 柔らかい草を踏んだ感じ。下を見ると、地面が遠くにあった。崖はどんどん低くなって、メリクは崖の上に立っている。抱っこされた僕も同じで、にゃーも一緒だった。


「凄いね、僕もできる?」


「大きくなったら出来るよ。だから今は俺の抱っこで我慢だ」


「がまん、ちがうよ。僕はメリク、抱っこ好き」


 メリクも抱っこも好き。僕の言葉がおかしくても、痛いことや嫌なことをしなかった。だから聞いてほしいの。


「メリク、ありがとう」


 いっぱい買ってくれて、たくさん抱っこしてくれて。鏡もびっくりしたけど楽しかった。笑顔で説明する。メリクは僕の笑顔を好きだと言ったから。


 鏡で見た僕は変じゃなかった。黒い髪だけど、それは街の人も同じ。


「帰ったら飽きるまでお話ししよう。さあ、虎を呼んで帰るぞ」


「うん!」


 声を揃えて虎を呼んで、今度のために名前を考える約束をした。約束は守らないといけないから、いっぱい考えるね。乗せてもらう前に、にゃーにあげたのと同じ白いお魚をあげた。喜んで食べたので、見つけたらまた買ってもらうね。

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― 新着の感想 ―
[一言] どんな状況になっても、他を思いやれるいい子ですね。私もそういう人でありたいなぁと、読んでると思います。 綾雅さま、一個聞いてもいいですか? 僕呼びは、これからの物語にかかわってくるのですか?…
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