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15.メリクやにゃーと食べると美味しい

 お部屋に戻ると、にゃーはベッドで丸まっていた。寝ているのかな。声を掛けようか迷っていたら、メリクが隣に下ろしてくれた。手を伸ばして撫でたら尻尾が揺れる。


「にゃー、ごはん」


 用意するメリクが僕を手招きした。ベッドは少し高いけど、ずるずるとお尻で滑って下りた。振り返るけど、ベッドは汚れてない。今の僕は昔と違って汚くないからかな。靴の音をさせて歩いた僕を、メリクが抱っこしてくれた。椅子にたくさんのクッションを置いて僕を下ろす。


「準備出来たら起きるから、先に手伝ってくれ」


「うん」


 僕に出来るお手伝いは何だろう。メリクが次々とご飯を並べるから、手を伸ばしてお皿を置いた。重なったお皿を横に並べたら、上にメリクの手がご飯を置く。凄い。こんなにいっぱい選んだんだね。食べたことないお肉の塊もあるし、温かいスープもあった。


「これは熱いから後でな」


 メリクがスープを遠ざける。熱いのは痛いんだよ。頷いて見送った。ご飯の食べ物は白い煙みたいなのが出てる。それを指差した。僕を煮ようとしたお鍋からも出てた。


「これは?」


「湯気だな。熱かったり温かかったりすると見えるんだ」


 教えてもらった湯気の上に指を伸ばす。不思議な感じだった。触れないのに、ぶわってなるの。指先がちょっとだけ温かい気がした。そこで思い出す。凄く寒い日ににゃーの口からも出てた。僕も出てたかも。ふぅと吹いたけど出なかった。変なの、寒くないと出ないのかも。


「くくっ、おもしろいことしてるな。湯気か?」


「うん」


「ふぅ、じゃなくて……はぁ、だ」


 ほら、と目の前でメリクがはぁ……と息を出す。すると白くなった。僕も真似したら同じのが出る。ということはメリクと僕は仲間だ。きっとにゃーも同じ。


「だいぶ考えが伝わるようになってきた」


 なんだか難しいことを言いながら、メリクは僕の頭を撫でる。お屋敷の人と違ってメリクは痛いことをしない。だからメリクの手なら怖くないんだ。ぐりぐりと揺れるほど撫でてもらい、僕はへらっと笑った。


 メリクは僕の顔が変だって怒らない。叩かないし、抱っこもしてくれた。だから僕はメリクになら鍋で煮られてもいいと思う。あのお鍋に入っても痛かったり苦しかったりしないから。


「っ、ご飯にするぞ。にゃーを起こそう」


 焦った様子のメリクが泣きそうな気がした。両手を出して抱っこしてもらい、首に顔を押し当ててぎゅっと力を入れる。メリクが僕にしてくれたみたいに、元気にしてあげたい。


 にゃーがベッドから下りて近づき、僕が座ってた椅子に飛び乗った。笑ったメリクのお膝に抱っこで座り、机の上に並んだご飯に嬉しくなる。メリクやにゃーと食べると美味しい。柔らかかったり、ふわっとしてたり、つるんとしてる。


 順番に運ばれるご飯を口に入れ、そのたびに嬉しくて笑った。そんな僕をメリクは優しい目で見つめる。メリクが食べて僕も食べて、にゃーもお皿の上のお肉とお魚をぺろりと飲み込んだ。


「少し休んでからお風呂に入ろうか」


 お風呂って、あの大きいお鍋のこと? やっぱり僕を何度も煮るのは臭いからかも。くんくんと自分で手の匂いを嗅いだけど、分からないや。メリクが気になるなら、何度も煮てもらおう。

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