表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/105

11.服も靴もご飯も、いっぱいあった

 金色が付いた服に着替えた僕は、メリクと手を繋ぐ。抱っこもいいけど、手を繋ぐのも好き。だって特別な感じがするもん。少し歩いて、大きすぎるお店の隣の売り場へ移動した。ここは道全体がお店になっていて、両側にいろんな物を売っている。


 今いたところは僕も着られる小さな服のお店。向かいは大きな人の服が並んでて、隣は靴がいっぱいだった。靴は僕の顔より大きいのもあれば、もっと小さいのもある。僕の足が入らないくらい小さいのもあった。誰が履くんだろう。


「この子に靴を見繕ってくれ」


 ざらりと形が丸い金属を渡したメリクに頭を下げ、お店の人はいっぱい運んできた。赤や黄色はお花の色、夜の空の黒色やお屋敷で干していたシーツの白もある。飾りがついた靴をいくつも履いてみた。よくわからない。首を傾げる僕に、メリクは優しく尋ねた。


「痛い靴はあるか? 履いて立った時に、ここやここが痛い靴だ」


 前と後ろをとんとんと指で示され、靴を履いて立ってみる。くるくる歩いたけど平気。そうしたらこの靴は買うことになった。他の靴も全部試して、半分くらいを受け取る。両手がいっぱいになったメリクは、金色の粒を交換したお店の人に服や靴を渡した。


「どうするの?」


「預かってもらう。宿へ送ってくれるからな」


 宿はにゃーが留守番しているお部屋で、そこへ運んでくれるんだって。持って歩かないのは、僕を抱っこするからだと聞いた。両手が空になったメリクに抱っこされ、今度は奥の方へ進む。食べ物の匂いがした。何かを焼いた匂い? くんくんと鼻を動かす。


 両側にあるお店はそれぞれ違う匂いがする。その向こうにあるお店もご飯を作ってるのかな。きょろきょろする僕に、あちこちから声がかかる。美味しいよ、お肉はどうだい? 初めてでドキドキした。僕に声をかけてくれる人は、お屋敷でいなかったから。


「食べたいものが見つかったか?」


「わかんない」


 ご飯を作ってるのは分かる。でも何がどの味なのか、全然わからなかった。全部いい匂いがするんだもん。じっと見つめたのは、黒い板の上で何かを焼いてるお店だった。じゅーと音がする塊は、すごくいい匂いがした。


「よし、これにしよう」


 僕の視線の先にある塊を買うメリクは、その後も僕が見つめたご飯を次々と選んだ。多過ぎないかな。食べられないと思う。心配する僕をよそに、メリクは笑った。


「安心していい。俺も一緒に食べるからな。お留守番のにゃーもいるぞ」


 そっか、僕だけじゃなくてメリクもにゃーも食べるから。いっぱいあっても平気なんだね。安心した僕にお店のおじさんが棒に刺さった魚を差し出した。受け取ってもいいの? 分からなくてメリクを見る。彼が頷くから手を出して受け取り「ありがとう」とお礼を言った。


 お礼って嬉しい時に使うんだよね。お店のおじさんは「いいってことよ、たくさん買ってもらったから」と笑う。声が大きい人だった。手を振って別れたのも初めてだよ。


「帰ってご飯にしよう」


 お魚は帰るまでに僕とメリクが齧ったら、どんどん小さくなって無くなっちゃった。にゃーもお魚が好きだから、次は残さないとね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ