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大好きな貴方、婚約を解消しましょう  作者: 凛蓮月
それぞれの後日談【side 元婚約者幼馴染み】

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6/21

そんなつもりじゃ無かった

 

『貴女も……ごめんなさいね。全て私の我儘なの。もう、邪魔しないわ……。

 幸せに、なって、』



 あの方からそう言われた時、私は──。



 私の幼馴染みは高位貴族の侯爵家令嬢に見初められて婚約していた。

 本人は「政略結婚だ」って言ってたけど、侯爵令嬢の態度を見てたらそんな事無いって分かる。

 周りはいつだって二人を微笑ましく見ていたし、私も「大変だなぁ」なんて他人事みたいに見てた。


 彼が幼い頃に「将来結婚しよう」なんて言ってた事が懐かしい。

 どうしてそんな話になったのかちっとも思い出せない。

 

 彼と結婚するなんて今じゃ絶対考えられない。

 幼い頃の約束なんて無効でしょ。

 良くて友情以上を感じないし、婚約者がいる身でありながら言い寄られても迷惑でしかない。


 それに、私は……。


 彼じゃなくてお兄さんが好きだった。


 態度は大きいけど、引っ張っていってくれる力強さが好きだった。

 子爵家に行くのも、お兄さん目当てだった。

 全然相手にされなかったけど、私の初恋だった。


 だから、弟である彼は私にとっては幼馴染み以上では無かったんだ。


 頼りなくてちょっと何かあったらすぐ泣いて。

 弟がいたらこんな感じって思ってた。

 だからあの方が彼を好きな理由がいまいち分からなかった。

 強いて言えば、優しいとか、穏やかとか。


 でも私は彼より、頼りがいのあるお兄さんの方が良かった。



 そう思っていたんだけど。


 私のした事は、自分にそのつもりは無くても、恋愛感情なんか微塵も無くても。


 他の誰かから見れば立派な不貞行為で。


 もっと、ちゃんと突っぱねたら良かった、とか。

 侯爵令嬢から隠れるように会うとかよくよく考え無くてもしちゃいけない事だとか。


 終わった後に後悔してももう遅かった。




 侯爵令嬢から頭を下げられて、誤解だと言いたかったのにその後は全く会えなかった。

 彼も泣きそうな顔をしてずっと探してて、見てられなかった。

 その後、彼女が隣国に留学した事を知った。


 彼との婚約は解消されたらしい。



 それを知った数日後、彼のお兄さんがうちを訪ねてきた。

 何の用事だろう?って、でも、会えて嬉しいってちょっと浮かれてしまったけど。


 お兄さんは会うなりとても冷たい顔をして、残酷な言葉を吐いた。



「お前があいつを甘やかすから二人の婚約が駄目になった。

 知らなかったよ、あいつの事が好きならそう言えば早めに婚約を整えてやったのに」


「え……」


「噂では結婚の約束してたんだって?」


 彼のお兄さんが私を冷たい目で見てくる。


「約束、って、」


「違うのか?まあ、幼い頃の口約束だったのかもしれんが、学園内で噂になってたそうじゃないか」


 どう、いう……こと──?

 そんな噂、どうして。どこから……。


「ちが……ちがう、してない。好きじゃない。ただ、違うの。

 ただ、苦しそうにしてたから、逃げ場を、作ってただけで……」


「それがあいつの為になった?

 その結果は?

 感情はどうあれ、第三者から見ればあいつとお前が不貞してたってしか見えないよ」


 第三者から見たのとか考えてなかった。

 ただ、かわいそうって。

 侯爵令嬢から逃げて、友人たちからも見放されて、私まで見捨てたら。


 もしかしたら、儚くなるんじゃ、って。思ってしまって。


「まあ、俺も、あいつを止められなかったからお前を責められた立場じゃないんだけどな。

 ……で。

 あいつと結婚すんの?」


「──っしない、しないわよ!結婚したいとか思った事無い!だって、私が好きなのはっ……」


 見上げると、一瞬揺れた悲しそうな目。


「……侯爵令嬢が言ってた。

『二人の邪魔してごめんなさい』

 少なくとも、彼女からはそう思われてたんだ」


 邪魔とか、違うのに。

 むしろ二人は婚約者だったから、私のほうが邪魔してた。


「私……そんなつもりじゃ、無かった……。

 ただ、苦しい、息が詰まりそうだから、って。

 あの方から言い寄られて、重くて、縋られて、かわいそう、だっ、た……から……」


 自分はいい事をしたつもりだった。

 幼い頃から知ってるあいつを助けてるだけ。


 小さい頃にもあったから。

 あいつが泣いて、私に泣きついてきて、慰めた事。

 何回もあったから。


 今回も、同じ事を、しただけで。


「そんなつもりじゃなかった?

 まあ、あいつが悪いのは大前提としてあるけど、いつまで幼馴染みの気安い距離でいるつもり?

 成人した男女が婚約者から逃げるように隠れてたら、婚約者より一緒にいる時間が長い幼馴染みとの仲を邪推されても仕方ないよね。


 そんなつもりじゃなかった、って言い訳できるのは、学園入学前までじゃない?」


 何も言い返せなかった。

 そもそも、淑女教育で習うじゃない。

『みだりに婚約者以外の男性と近い距離で接する事は恥ずべき事』だと。


「侯爵家からお咎め無いのは運が良かった。

 結婚する気が無いなら、もうあいつに近付くな。

 勿論、俺にもな」


「──え……」


「弟が侯爵家と繋がるなら俺はある程度自由に相手を選べた。

 けどそうじゃなくなったし、これから先もあのポンコツが結婚できるとも思えない。

 だから俺は政略結婚する事になる。

 これ以上悪い噂が立って良縁が来なくなったら困るから、関わらないでくれ」


 それは実質上の、絶縁宣言だった。



「昔はお前と…… ……


 いや、忘れろ」




 彼のお兄さんは、振り返らず帰って行く。

 二度と私を見る事は無い。


 私は呆然としたまま、ぼたぼたと頬を伝うものをそのままにしていた。


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