表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/139

八十三、光道寸言・打蛇打七寸。

(称号……?なんだ…………)


 SSSにおいて、称号は特に効果があるものではなかった。特定条件をクリアすると獲得することができ、プレイヤーのやり込み度などを他プレイヤーに自慢することが出来る。言ってしまえば、その程度でしかなかった。


 だが、それが現実となれば話は変わってくる。


 «貴方は炎と旅路のドーリー、命と調和のコスモス、杯と純潔のヴァイス、夢と簒奪のワルツ、星と魔法のリーンズを打ち倒しました。これは神たちからの贈り物です»


 五柱の神を倒した時に現れたメッセージ。「神からの贈り物」として獲得した称号が、エボニーの力となる。


 ««「称号:貴方の旅路に祝福を」の効果が発動します»


 «──貴方の旅路に祝福を──»


 千切れた前腕の傷口に広がる、温かい光。優しくも天へと燻る姿は、炎のように力強さを与えてくれる燐光は、エボニーの傷を癒し、力を、立ち上がる術を与えるのだった。


「………負けは、許してくれなさそうだな」


 立ち上がったエボニーが苦笑を浮かべた先にあるのは、顔面が抉れ、純白の甲殻に多数の傷が入ったピュアホワイトと、殆ど無傷のナーガローカ。

 傷は癒えたが、防具は破損し、武器である騎兵銃は行方知れずだ。


 復活の勢いそのままに殴殺するしかないのかと、エボニーが拳を握れば、それを笑うかのように空中に炎と共に現れる一振りの剣。滞空してエボニーが受け取るのを待っている剣はSSSで生産できる武器の中にはなかったものの、彼には確かに見覚えがあった。


「これはドーリーの……」


 本気のドーリーと相対した時に彼女が使う七振りの剣の一つ。その名をエボニーは公式の設定資料集を見て知っていた。

 まさにこの場面、この瞬間に相応しい、三十センチにも満たない剣の名は──「光道寸言・打蛇打七寸」


 右手に掴んだ「打蛇打七寸」を構え、エボニーがピュアホワイトに相対する。ナーガローカの攻撃範囲に入るよりも先に、ピュアホワイトを殺しきる。エボニーの殺気に反応して鋭く吠えたピュアホワイトに向かって、彼は駆けた。


「スターロード!」


「西洋剣」で反応する移動スキルが発動した。


(「刀」じゃなくて「西洋剣」の括りか)


 一気にピュアホワイトとの距離を詰めた彼が居る場所は、ピュアホワイトの丁度首元の辺り。急所を抉るチャンスだ。


「……グランドクロス!!」


 八つの斬撃が甲殻を砕き、表皮を絶ち、出血に純白の破片を織り交ぜて輝く。

 血飛沫に背を向けるように反転した彼の攻勢は止まらない。

 こうべを落としたピュアホワイトの首から顎下にかけてを踊り、舐めるように「エアフォース」というスキルで斬って回ったエボニーは、ピュアホワイトの狩猟完了を見届けずにナーガローカへと目を向けた。


 一度ならず二度までもナーガローカから大きな一撃を貰ったことによる鬱憤からか、雄叫びを上げながら走るエボニーに相対するは、先ほど彼の両腕を持っていった突進攻撃だった。


 武器が騎兵銃で乗馬していれば直前にステップを踏むことで回避できる行動だが、今の武器は西洋剣。職業は「星翠戒グランドクロス」である。

 移動スキルスターロードで回避をすると距離を取り過ぎ、普通に回避をすると隙を生んでしまうこの場面。エボニーが選んだのは防御スキルだった。


 ヴァイスがクラテルの前で使おうとした「寿魂棺アクピュクシス」の「ジャッジメント」のように。

 エグバートとの決闘でエボニーが使った「弦月座エスラケル」の「コメット」のように。


 最終職の熟練度を上げていってようやく使えるようになるスキル。「星翠戒グランドクロス」の終盤のスキルは攻撃力のあるものでないが、防御力に関しては随一だ。


「六方結界」


 エボニーを囲む六角柱は宝石のように見る角度によって色を変え、エメラルドグリーンの結界によって使用者を守る。


 耳をつんざくような激しい衝突音の最中にあってエボニーにはナーガローカの様子を伺う余裕があり、突進攻撃後の隙でどこを攻撃するかの目算を進めていた。


 そして目の前でナーガローカの尾っぽが過ぎた瞬間に、彼は走りだす。


 突進から振り返ったナーガローカの目の前に「スターロード」で移動し、「サザンクロス」で攻撃を与え、「エアフォース」で前方に攻撃しながら飛びこんだ最後に狙う先は、ナーガローカの弱点である、胴体の中程よりも少し頭側の場所だ。


「ぉおおおおおおおオオオオオ!!!!!」


 実際の蛇の弱点とも言われる、頭の下から七寸ほど下の位置にある心臓目掛け、渾身の力を込めてエボニーは叫ぶ。


「グランドッ!クロス!!」


 一振りで皮を裂き。

 一振りで肉を絶つ。

 一振りで道を拓き。

 一振りで気道を血で埋め。

 一振りで心臓に刃が届く。


 巨体に見合った大きな心臓に五太刀目で迫ったエボニーは止まらない。


 六、七、八で心臓を完膚なきまでに潰し、流血の八芒星を作り出した彼を前に沈黙したナーガローカを踏みつけ、エボニーは空に吠える。


 負傷者も多く、ハクザンの町にも未だ入れていない。それでも勝利に間違いはなく、エボニーが提灯ていとうを持てば負傷者も回復できる。


 態勢を整えるためにエルフたちの元まで移動してきたエボニーだったが、やはりドーリーの姿はどこにも見つけられなかった。

TIPS

ナーガローカは水属性のため「レヴィアボルテックス」の通りが悪く、「魔竜鼎レヴィテックス」では倒すのに時間がかかるために騎兵銃使いから嫌われている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ