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七話「魔法学園の体育祭が始まりました」①

色々仕事が重なりまして今後は週二回投稿になりそうです……毎日投稿できずスミマセン。

水日更新を目安に頑張ります!

 エルデリン魔法学院では様々なイベントやカリキュラムが存在する。


 まず専攻魔法、これは大きく分けると三つに分類されている。


 魔法と言えば炎に雷、誰しもが思い浮かべる攻撃魔法。


 医学と同時並行で覚えれば一生食いっぱぐれない回復魔法。


 進路先は無限大、インフラにも建設にも何にでも潰しの利く補助魔法。


 しかし当然ながら学ぶべきは魔法だけにとどまらない。


 魔法の力を正しく使うため政治に経済、国語に数学、美術に一般教養……普通の高校生が学ぶような必修科目が多数。


 それらに加え健全な肉体をはぐくむための体育。実はこちらの比重も魔法の授業と同じくらいある。


 戦場で息が切れて魔法が唱えられないなど論外、そして戦場の方がまだましと言われる魔法省でのデスクワークに耐えられるための忍耐力をはぐくむため……なかなかブラックな理由だったりする。


 というわけで魔法学園は基礎体力向上にも力を注いでいた。


 ――その祭典が近日執り行われる。



「リングラント魔法学園体育祭まで後一日」ドドン!



 デカデカとした看板が校門の前に立てかけられ否応無く生徒の目に飛び込んでくる。


 学校だけにとどまらず市場や町の至る所にもポスターがはられ体育祭の告知がされていた。



「あぁもうこんな季節なんだねぇ」

「仕事終わったら見に行こうかね」

「ウチの息子が入学したんで応援してやってくれ!」



 こんな声が町中であふれるほど。


 普通の学校の体育祭と催し物はそこまで差はないが大きな違いがあるとするなら所々魔法を使った障害物などが用意されており見ごたえのある競技が多い。


 また、裏の見方も存在する。


 マウントを取りたい上級貴族に下剋上を狙う下級貴族、それら貴族にアピールしたい一般の生徒など下世話な方面でも見ごたえのあるイベントである。


 とはいえ基本は愉しい楽しい学校行事の一つ。


 普通の悪役令嬢(笑)を目指しているマリアにとってもただのイベントの一つに過ぎなかった。


 余談だがこの「ワルドナ」の魔法学園はゲームの学校とは思えないほどしっかりと練りこまれており、製作者側が綿密に取材をしたのかこういう設定を考えるのが好きな人間がいたのか……プレイする側にとっては非常に好感の持てる造りこみと評されている。


 が、実際に学生生活を送るとなると話は別。


 普通に進学校並みの勉強量に課題……どちらかと言うと勉強が苦手な方だった長谷川麻里亜にとっては白目ものだった。


 閑話休題。


 とまぁマリアにとって知らない地理の勉強や未だしっくりこない魔法の授業に比べると体育はマリアにとって一番楽しめる授業、テストより全然ウェルカムなイベントだった。


 その体育祭の前日。



「ふんふふんふん、ふ~ん」



 シャンデラの邸宅、その厨房でマリアは鼻歌混じりでお弁当の下準備に取り掛かっていた。


 前世がお母さん系女子高校生のマリア。このようなイベントでは必ずおかずを多めのお弁当をつからずにはいられなかった……というより習慣だった。


 そんな彼女の横では侍女のリンがこめかみを押さえて調理を手伝っている。



「あの、お嬢様……体育祭でのお食事はシェフが作るとお伝えしたはずですが」



 そこ言葉にマリアはビシリと訂正する。



「それは違うわよおリンちゃん!」


「何が違うかわかりませんが、おリンちゃんと呼ばれたのは初めてですね」



 眉根を寄せるリンにマリアは持論を展開した。



「体育祭といったら「お弁当」なのよ! シェフが料理を持ち込みテラスで優雅にお茶をする「お食事」なんて邪道よ邪道!」


「いやでも、旦那さまや奥方様と用意されたテラス席でお抱えシェフの料理を食べることが上級貴族の習わしなのですが」



 この慣例にマリアは異を唱える。



「それじゃいつもの食事と変わらないじゃない! クラスのみんなと食べる事こそ醍醐味なのよ! お父様も目から鱗だってと感銘を受けていたわ!」


「あの人はマリア様に甘過ぎです、あとシェフたちの仕事を奪いすぎないでください」



 マリアは「その辺はちゃんと考えている」と強引に言い切る。



「もちろんお仕事を奪うだけじゃ申し訳ないからシェフたちにはお弁当箱や食材の選定をしてもらったわ」


「存じてます。一つ星シェフが買い出し要員……そんなことさせるのはマリアお嬢様くらいですよ」



 そこまで言ったリンはため息を一つつく……しかし、これは呆れのため息ではない。


 この話を聞いた時使い走りみたいなことをされシェフ達はさぞかし不満だろうと思った。


 だがリンの予想とは違い、皆一様に「マリア様のためなら」「これも気分転換になります」なんて不満どころか喜んで手伝い出していたのだ。


 マリアが以前に無い妙な愛嬌や人の良さで周りに慕われて出していることに感嘆したリンのため息なのであった。


「――いったい、どうしたというのでしょうか何かに目覚めたってレベルじゃないですよね」


 前までは自己啓発か何かの本を読んで意地悪な性格を悔い改めたのかと思ったが、最近では一種の帝王学を学んで人心掌握に勤しんでいるのかと疑うくらいだった。


 もちろん当のマリアにそんな自覚は無い、今回の件も前世の習慣と「友達を増やして悪役令嬢の取り巻き(笑)をゲット」という目的があるのだが……リンの知るところではない。





※次回は水曜日19時頃投稿します

※ブクマ・評価などをいただけますと助かります。励みになります。

 皆様に少しでも楽しんでいただけるよう頑張りますのでよろしくお願いいたします。 

 また、他の投稿作品も読んでいただけると幸いです。

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