六話「竜の王子が私の執事になりました」⑧
「まぁオイラたちはいつでも歓迎しているから気が変わったら声をかけてくれ」
「あ、ハイ。それでは……」
そそくさとマリアが部屋から出ようとしたその時である。
生徒会の入り口では数名の生徒たちが立ち尽くしていた。
病院の待合室で手術の結果を待っているかのような神妙な顔つき。
よく見てみると彼らは昨日プリム先輩たちに囲まれていたマリアの同級生だった。
「あなた達どうしたの?」
サリーの問いかけに続いてロゼッタがちょこちょこ近寄って問いただす。
「がん首揃えてどうしたんでぇ」
噂のべらんめぇ幼女会長に一同驚きつつも意を決して言葉を切り出してきた。
「あ、あの!」
「マリアさんの処分、考え直してもらえませんか!」
「お願いします」
「え? 処分?」
まさかの言葉に思わず聞き返すサリー。
驚く彼女に一人の生徒が距離を詰めて懇願する。
「マリアさんは私たちを庇ってくれたんです」
「そうです、上級貴族なのに下級貴族や一般人の私たちを……」
「魔法を使ったのが問題ですか? それなら向こうだって使おうとしていました」
「私たちも処分を受けますから軽くしてください!」
「「「「お願いします!!」」」」
優しくてて暖かい光景。
サリーは目を細めロゼッタを見やった。
「ロゼッタ会長」
ロゼッタはぷにぷにほっぺに笑くぼを浮かべクツクツと笑っていた。
「人徳って奴だねぇ……まぁそう慌てんな一年坊。実はよぉ――」
別に処分するために呼んだわけじゃない、それどころか生徒会に歓迎しようと思っていたところ……
そう言おうとした彼女の前に、新たなる来客が訪れた。
「失礼します」
「わっふ!」
「……………………え?」
現れたのはキバとモフ丸、そして首根っこを掴まれているギンタローだった。
ギンタローはジタバタしながらキバにだけ聞こえるよう文句を言う。
「雑に扱うでないわ! 末代まで祟ってやろうか!」ヒソヒソ
「ちょっと声が大きいですよ、人語を抑えてください」ヒソヒソ
「く、くおのぉぉ……こ~ん!」
一瞬誰だか分からなかったロゼッタとサリー。
お互い目をこすり上げたあと顔を見合わせる。
「あの人って」
「もしかして?」
彼らが答える前にマリアが困り顔でキバたちに話しだす。
「ちょ、キバ様にモフ丸、ギンタローも……ていうか猟師に捕らえられたみたいになっているけど」
不自然に首根っこを掴まれている子ギツネを見てマリアは「どうしたの」と不思議がる。
キバはギンタローをグイッとマリアたちの前に差し出した。
「お話は聞かせてもらいました、幻術を使い先輩さんたちを惑わせたのは全てこのキツネの仕業です」
「好き放題言いおってこのトカゲめ……この扱い、我はマリア殿を守るために甘んじて受け入れておるのだぞ」
「あなたの首一つでマリア様が救えるなんて安い物でしょう」
「言い方ぁ!」
キバはロゼッタの前に進み出るとギンタローを突き出した。
「というわけで、このキツネを煮るなり焼くなり揚げるなり好きにしていただいていいので、マリア様を助けていただけませんか?」
「何がというわけだ! 知っているか、キツネやたぬきの類は旨くないのだぞ」
「なるほど、もうおっさんだから味に自信がないと」
「おっさん言うな! ちょっと長生きしただけじゃわい!」
「わっふ」
「モフ丸殿、意外に良いダシ出るかもはフォローになっていませんぞ」
モフ丸を嗜めるギンタロー。
そしてようやくロゼッタが口を開く。
「お、お久しぶりですキバ様……」
「!?」
※次回も明日19時頃投稿します
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