六話「竜の王子が私の執事になりました」②
パカラッ……パカラッ……
キバを執事として従え馬車に乗り込み学校へと向かうマリア。
不満げなギンタローはちっちゃなあんよを組んでぷんすこ怒っていた。
「わざわざ学校までついてくることはなかろう、キバよ」
「護衛も兼ねているので、モフ丸君やギンタローの実力は認めますがまだまだですからね」
「我が主について行きたいだけじゃろ。学校での護衛は我で十分じゃというのに」
馬車に背筋を伸ばし座りながらキバは否定せず真顔で答える。
「あなたはちょっと幻術を使ったらすぐガス欠するでしょう、十分とは思えませんが」
「グヌヌ……今にみておれ、信仰心に頼りすぎず鍛え直してみせるわ」
「変わりましたね、あなた。私も変われるといいのですが……いえ元に戻ると言った方がいいのか」
どことなくまじめな会話。
モフ丸はかまって欲しいのかギンタローの耳を舐め始めた。
「わっふ~ん!」
「あ、ちょ、モフ丸どの、耳舐めるのはやめてぇ……」
鼻先にフサフサの狐耳が垂れ下がったのを見たモフ丸は思わず追撃の甘噛み。
ビクンビクンしているギンタローをみてキバはモフ丸に耳打ちする。
「モフ丸君、ギンタローが喜んでいますのでもっとやってあげて下さい」
「わっふ!」
「真顔で鬼畜な事を! あんやめてへぇモフ丸殿ぉ……」
そんな様子をマリアは笑って見ていた。
「仲が良いわね貴方たち」
耳を舐められピクピクしながらもギンタローは心外だと反論する。
「いえいえ我が主殿よ我とこのトカゲは王の座を争う間柄でけっして――」
「ギンタロー、そろそろ学校ですので人語は控えて下さい」
「う、グヌヌ……こ、コ~ン」
キバの方が一枚上手だったようでギンタローはうなだれるしかなかった。
学校に到着し校門前で馬車から降りる一同。
その教室までの道のりの最中、ざわめきが波のように大きくなってきてマリアは首を傾げる。
「ざわざわしているわね……何か事件でも起きたのかしら?」
もしやゲーム本編が前倒しになって自分以外の誰かが殺された? ……そんなことを考えるマリアにギンタローが耳元でささやいた。
「事件も何も我が主……」
ギンタローの指さす方にいるキバを見てマリアはその原因に気が付いた。
「あ、そういうことか」
数々の浮き名を流し(以下略)のキバを見やるマリア。
竜族の王子というちょっとしたアイドルみたいな人が登場したからかと納得するのだった。
※次回も明日19時頃投稿します
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