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五話「魔法学園に登校します!」②

タイトルを変えたらPVちょっぴり回復しました(≧▽≦)アリガトウゴザイマス!

 五月半ば。


 現実世界でゴールデンウィークに相当する連休も終わりマリアは魔法学園へと登校する日が来たのだった。


 マリア・シャンデラとしては一月通った学校ではあるが、転生した長谷川麻里亜にとっては初めての登校日。


 正直マリアは不安を拭えずにいた。



(なんていうか転校生の気分よね)



 前世の記憶をとり戻し「マリア・シャンデラ」の記憶に「長谷川麻里亜」の記憶が上書きされたせいか人名や地名を思い出すのに一苦労……


 それは学校での記憶も例外ではない。



(うぬぬ、どんなクラスメイトがいたとかどんな授業を受けていたとかハッキリ思い出せないわ)



 そう、マリアは入学して一月分の記憶が薄いのである。


 もうすでに仲良しグループができつつある状況で記憶がハッキリしないのは学園生活を送るのに中々に厄介とマリアは悩んでいた。



(私と仲の良い友達がいるのか思い出せないし……どんな感じでクラスがグループ分けされているか、まずはそこを見極めないとダメね)



 慣れないファンタジーの世界での学園生活で孤立してしまったらやりにくくて仕方がないと考えていたのだった。


 そして、悩みはそれだけではない。


 むしろこっちの方が超重要と言わんばかりに眉根を寄せて考え込んでいた。



(主人公たちとほぼ絡まないとはいえ設定上は「悪役令嬢」のマリア・シャンデラ……だから悪役令嬢っぽく振る舞わないといけないのよね)



 悪役令嬢、つまりワガママお嬢様。


 その設定を守るべく、マリアはお嬢様であるにも関わらず使用人の仕事である掃除を手伝いシェフがいるのに料理やお弁当づくりを手伝うという「ワガママ」を実行しているのだが……


 まぁ、ハッキリ言ってただの家庭的な良い娘である。



(家じゃしっかり悪役令嬢をやれていると思うからいいとして……でも――)



 とまぁ、家は悪役令嬢として腐心していた(笑)と自負しているマリア。


 だが、馬車に乗り込んでからずっと彼女は腕を組んで「う~む」と考え込む。



(でも、学校で悪役令嬢っぽくって何すりゃいいんだろ?)



 ゲームやマンガでお馴染みの悪役令嬢。


 しかし転生前の長谷川麻里亜はゲーム素人でマンガも弟の少年マンガをパラ読みするくらい。


 とにかくワガママを言えばいいとシャンデラ家では積極的に料理といった家事全般に口を出し両親以外の健康面も気を遣い口酸っぱく言ってみたり……ただのお母さんであるが頑張っていた。


 しかし――



(家なら家事に口出しして立派に悪役令嬢できているけどなぁ……学校かぁ)



 とまぁ、学園において悪役令嬢として振る舞う引き出しが皆無なマリアはウンウン唸るしかなかった。



(悪役令嬢ってヒロインとかに意地悪なことをするんでしょ? でも現状ワルドナの主人公もヒロインも不在の状況でどうすりゃ良いのかな? ていうか意地悪なことする人の気持ちって分からないしなぁ)



 元々慈愛に満ちたお母さん的性格で悪役令嬢とは真逆の位置にいるマリア。


 全くと言っていいほど悪役令嬢のセンスがない彼女は「うーん」と悩んでいた。



「わふ?」


「いかがしましたか我が主殿」



 モフ丸とギンタローが心配するもマリアは「大丈夫」と笑顔で答える。



「へーき平気。しっかし悪役、あくやくぅ……ん?」



 そんな彼女の前に久しぶりの彼が登場した。


 馬車の対面、悩んでいる彼女の前にいつの間にかちょこんとクマのぬいぐるみが鎮座している。



「わふ?」


「面妖な輩……我が主、気をつけませい」



 警戒する二匹にマリアは座るよう促した。



「アハハ、大丈夫だから安心してね」



 ぬいぐるみ――ゲームの神でマリアをワルドナの世界に転生させた張本人であるイシュタルはひょこっと手を挙げ気さくに話しかけた。



「やぁ、長谷川麻里亜。ずいぶんと悩んでいる様子だね」



 脳内に語ってきたイシュタルにマリアは強気の表情をつくろい、同じく脳内で会話を始めた。



「大丈夫大丈夫、みんなが待っているんだもの。くじけていられないわ」


「相変わらずだね、もっとファンタジー世界をエンジョイしたらいいのに」



 イシュタルの言葉にマリアは馬車の背もたれに寄りかかり笑って答えた。



「楽しんでいる方よ、色々な料理が作れるし市場も食材が豊富で見ているだけで楽しいから」


「それは楽しんでいると言っていいのかな? お母さんが地方のスーパーを見て楽しいというような感じだよ」



 さらりとイシュタルに指摘され自覚のあったマリアは苦笑する。



「そういう食材とか気にしちゃうのは性分だからかな。神様なのに友達みたいなこというのね」


「遊戯の神だからね、親しみやすさが売りなんだよ。楽しんでるならいいけどさ」


「それよりも学園生活の方が心配よ、魔法を学ぶなんて始めてだし眠い授業じゃないといいんだけど」



 変なところを心配するマリアにイシュタルは同情混じりの言葉を紡ぐ。



「小学生がいきなり高校の英語を習う感じになるから大変だと思うよ、前世を思い出す前の君は勉強もおろそかだったし」


「うぇぇ……悪役令嬢のような振る舞いだけでも問題なのに」



 イシュタルは励ますように腕を前後に動かした。



「まぁまぁ、君ならきっと大丈夫だよ。他の神様も応援しているからさ!」



 ピョコピョコと動く腕。



 ――キラン



 光る眼……ハンターはそのピョコピョコする動きを見逃さなかった。



「わっふ!」


「わ、ちょ! まって僕はおもちゃじゃないよ!」



 いきなりハッスルしだすモフ丸にマリアは困った顔になった。



「あーそうなると止まらないわよウチのモフ丸は」


「しつけ頑張んなよぉ! だ、唾液でべっちょりだ! じゃあ僕は帰るから学園生活としつけを頑張ってね!」



 スイッチを切ったかのように動かなくなるクマのぬいぐるみ。


 モフ丸は動かなくなった彼を見てつまらなそうにうなだれた。



「くうん」



 騒がしい神様が去った後、マリアそれとなくギンタローに聞いてみる。



「ねぇギンタロー。悪い奴ってどういうやつかな? 参考までに」


「悪い奴ですか?」



 いきなり荒唐無稽な質問をされギンタローは考え込んだのちこう答えた。



「思うに主殿、権力を振りかざすものではないでしょうか」



 ギンタローの進言にマリアは合点のいった表情を見せる。



(たしかにイジメなんて子供のすることよね。悪の令嬢といったら権力を振りかざすこと)



 なるほどと頷くマリア。


 その表情を見てギンタローは気を良くしたのか饒舌に続ける。



「あとは、やはり周囲に太鼓持ちといった輩を引き連れている印象ですな」


「太鼓持ち? あぁ、イエスマンみたいなものかな?」


「さよう、自分に苦言を呈さない気持ちよくさせてくれる輩を……取り巻きを従える傾向がありますな」


「取り巻きか……あ! そういえば!」



 ワルドナゲーム開始時、主人公たちがマリアを遠巻きに見やった時も彼女は取り巻きに囲まれていた。


 悪役令嬢は太鼓持ちやイエスマンといった取り巻きを従える……



(ようするに、気のいい友達を作ればいいってことね! 太鼓持ちまではいかなくても一緒にいて楽しい友達を作る!)



 微妙かつ絶妙に勘違いするマリア、もし少しでもゲームなり悪役令嬢の知識がある人間がいたら「それ悪役令嬢関係ないじゃないか」とツッコんでくれていただろう。


 そんなことなどつゆ知らず、大納得の彼女はギンタローのアゴ下を撫でて上げた。


 ギンタローは恍惚の表情である。



「なるほど! さっすがね! ありがとギンタロー!」


「ぬへへ」



 照れてキツネ耳がピクつくギンタロー。


 動く耳に反応し先ほど消化不良だったモフ丸が思わずかじり付く。



「わっふん」


「あ、モフ丸殿! 耳はやめてぇ……」



 その様子を微笑みながら見るマリア。


 心の内はやる気で満ち溢れていた。



(権力を振りかざすは取り合えず後にして、気心知れたいい感じの友達を作れればいいってことね!)



 そうすれば悪役令嬢としての面子を保てる……


 この考え方が後に大波乱を巻き起こすことになるとはマリア自身もモフ丸たちも知る由はなかった。


 ※次回も明日19時頃投稿します


 ※ブクマ・評価などをいただけますと助かります。励みになります。




 皆様に少しでも楽しんでいただけるよう頑張りますのでよろしくお願いいたします。 


 また、他の投稿作品も読んでいただけると幸いです。

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