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四話「コボルトの赤ちゃんを鍛えます!」⑧

 後日。



「さぁ今日も一日頑張るわよ!」



 新たな仲間として加わったギンタローを抱え、マリアは日課になりつつある散歩へと繰り出した。



「いやぁお父様お母様が二匹目も快く受け入れてくれて良かったわぁ」



 その言葉を傍らで聞いた侍女のリンはこめかみを押さえていた。



「マリアお嬢様……本当に二頭もお世話なんて本当に大丈夫なのでしょうか」


「何を言っているのリンちゃん、一頭も二頭も一緒よ」


「そんな訳ないと思いますが……それにモンスターですよ、いつ何をしでかすか」



 なおも続けるリンに対しマリアはまじめな顔を見せた。



「モンスターのことを悪く言うのはよくないわ。正直言えば意志疎通ができる分、普通の動物より扱いやすいくらいよ」


「普通出来ませんて」


「わっふ!」



 モフ丸も「同じ意見」と言わんばかりの鳴き声をあげリンはこめかみを押さえた。


 確かに現在進行形で意志疎通できているからだ、反論しようがないのである。



「最近のお嬢様はとんでもないですね……おや?」



 その時リンは遠くからの視線に気が付いた。


 何とも言えない哀愁の漂った気配にマリアも気が付き視線の方を見やる。


 そこには――



「…………」



 竜族の王子キバが真顔でマリアの抱き抱えているギンタローを見やっていた。


 直立不動。


 置物のように突っ立ってはギンタローを凝視していたのだった。



「キバかや」



 マリアの腕から離れ、てふてふとキバの足下に駆け寄る子ぎつねのギンタロー。


 彼は真顔で小動物と化した狐の亜人を見やっている。



「ギンタロー…………あなたどうやって」



 その質問に対しギンタローは勝ち誇った態度でよそよそしく答えた。



「あ、忙しいんでまた今度」


「え?」


「こういう関係になったので、あいすまぬキバとやら」


「え? 他人行儀?」



 そしてマリアの元へ駆けつけ抱き抱えられるギンタロー。


 勝ち誇った満面の笑みは悪意の固まりだった。


 キバは真顔のままマリアに詰め寄る。



「マリア様、ギンタローは良くてなぜ私がダメなのでしょうか?」


「え? 知り合い?」



 この会話にギンタローが割って入る。



「いいえ、他人ですよ。ささマリア殿、散歩の時間がのうなってしまいます、早く行きましょう」


「そ、そうね……じゃあ失礼しますキバ様」


「あ、はい」



 ゲーム本編が変わってしまうことを恐れるマリアはキバに会釈だけするとそのままそそくさと屋敷前から去っていく。



「ギンタローと私、何が違うというのでしょうか……」



 そのまま立ち尽くし続けるキバ。非常に邪魔である。


 亜人族の頂点である彼をぞんざいに扱うことができずリンをはじめ使用人達は全員めちゃくちゃ困った顔をしていた。


 結局近所をパトロールしていた警官に相談し彼にお帰り願うこととなる。



「また君かい? 竜族の王子さん」


「あなたは巡査長のキタジマさん」


「ここじゃ屋敷の人の邪魔になるからよぉ、どっか行った方がいいぜ」


「あの、私に何が足りないのでしょうか」


「……詳しい話やグチは詰め所で聞いてやる、茶ぐらいだす。疲れてんだろ公務ってやつでよ」



 もはや顔なじみ状態の二人は連れだってシャンデラ邸宅を後にした。



「さすが天然トカゲじゃのう」


「どうしたのギンタロー?」


「いえ! 粉骨砕身頑張りますぞ!」



 ギンタローという新たなモフモフモンスターをゲットし死亡フラグ回避にまた一歩前進したマリア。


 しかしギンタローまでマリアに仕えることとなりさらにモヤモヤが加速するキバがこの後、突飛な行動に出るなど。




「順調順調! 絶対生き延びてやるんだから!」



 彼女は知る由も無かった。



 ※次回も明日19時頃投稿します


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