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四話「コボルトの赤ちゃんを鍛えます!」⑤


「ふも! ふも!」


「あら? モフ丸もやる気ね」


「わっふん!」


「よしよし、でもちょっと疲れちゃったし休憩にしようか」



 手にしていたバスケットを広げるマリア。


 バスケットの中からはサンドイッチの入った竹編みの箱などが顔をのぞかせていた。


 その美味しそうなお弁当の数々にモフ丸は今日一番の目の輝きを見せる。



「はいはい、まだよ。ここは危ないから少し離れた場所に移動よ」


「わっふん!」



 草むらから出て座り心地の良い場所にシートを広げると二人はちょこんと座ってお弁当を広げだした。



「まずモフ丸はあれよね、ヤタベエさんが好物って言っていたジャーキーね」


「わっふ!」



 黒曜石のような輝きを見せる熟成された干し肉を前にしてよだれの止まらないモフ丸。



「モフ丸「待て」よ」


「わふ……」


「じゃあ、いただきまーす」


「わっふ~」



 モフ丸と一緒にお弁当を頬張るマリア、自分の作ったサワークリームのトマトサンドを自画自賛する。



「我ながら美味しくできたわね! 貴族の食材だから物がいいのかしら?」



 モフ丸はジャーキーをたいらげた後バスケットの中にある別の物に興味を示していた。



「わっふ!」


「あら? これに興味あるの? 日本人のお弁当っていったらこれなのよね~」



 マリアが満面の笑みで手にしたのは甘く煮たお揚げが特徴の「いなり寿司」だった。


 噛むたびに染み出るジューシーなお揚げが米酢と混ぜ合った酢飯が絶妙。マリアは恍惚の表情である。



「わっふ?」


「おいし~! っと日本人がわからないか。ゴメンゴメン。今あげるわよ」


「わふわっふ!」



 急いでモフ丸の分を手にした、その時である。



「あら?」


「もふ?」



 さっきまで穏やかな天気だったにも関わらず、公園が突如霧のような物に覆われ出したのだ。


 マリアとモフ丸は顔を見合わせ驚いた。



「さっきまで天気良かったわよね」


「わう……」


「急に寒くなってきたし、ここって標高高かったかしら? それともゲームの演出? 天候で出るモンスターが変わるとか知らないわよ……ん?」


「わっふわっふ」



 その時、モフ丸が「あちらに何かいますよご主人」とマリアに向かって吠えだした。



「何かいるのモフ丸……あれは?」



 一段と濃くなっている霧の奥に影を見つけマリアは目を凝らして見やる。


 どうやら人影がゆらりと動き、こちらに近づいてきているようだ。


 マリアはモンスターかと警戒する。



「人型モンスター? このフィールドにいたっけ?」



 序盤に出てくる人型は精々チンピラくらいなものと考えるマリアだったが……



「でもなんか違うわね」



 現れた人影は彼女の記憶にないキャラだった。


 透き通る絹のような白い肌。銀色の長髪から覗くは亜人の尖ったキツネ耳。


 それだけでも特徴的なのだが、さらに目を引くのはその衣装である。


 神主が身につけるような白の胴着に錦のような腰帯。


 そして鈴のついた組み紐を首にかけ切れ長の瞳でこちらを見やっていた。


 ファンタジーの世界で異彩を放つ和装の何者かと遭遇しマリアは目を叩いて驚いた。



「こんな和物キャラいたかしら?」



 「もしかしたら忘れているかも」と必死になって頭の中をひっくり返すマリア。


 が、着ている服で初めての見る亜人と確信する。



「あんな全身手洗いの権化みたいな服のキャラがいたら忘れないものね」



 覚えていないであろう理由が「洗濯が簡単か否か」なんともマリアらしい発想だった。


 「クリーニングに出したら目玉が飛び出る額になりそう」なんて事を考えている間に銀髪キツネ耳の亜人はマリアに肉薄していた。


 そして妖艶に微笑み彼女の頬にすっと手を差し伸べようとした。



「ふむ、主があのトカゲ風情が求めしおなごか。とりわけ特徴のない普通の貴族の娘にしか見えぬが……まぁよい」


「えーと、なんでしょうか?」



 言っている言葉の意味が分からず、マリア首を傾げる。


 頬を触りそこねたキツネの亜人は「おやおや」と口元に袖をあて微笑した。


 ※次回も明日19時頃投稿します


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