表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/69

コボルトの群れ

==針林(しんりん)ダンジョン・入口付近==



人狼型のモンスター、コボルトが群れを成して歩いているのが見えた。

ざっと数えても二十匹以上は居る。

まだ気付かれてはいないはずだ。


“あの魔法”を試すには絶好のチャンス。

大きな期待と少しの不安から手に汗を握る。



「きっと大丈夫……少なくともここなら誰かに見られることはない」


僕は魔導書を開き、意識をコボルト達の居る地面へ向けた。

汗が滴り落ちる。指の震えが止まらないのは武者震いというやつだ。そうに違いない。


そうこう思案している内に大地が震え出す。

やがてコボルトの群れを包むように赤い魔法陣が浮かび上がり、そしてーー



雷撃(らいげき)!」



掛け声とともに大地の魔法陣から“赤黒い雷の柱”が顕現する。

二十匹以上のコボルトを優に覆い尽くすほどの規模で、数秒かけて天に翔け上がっていったそれはやはり明らかに“普通の雷撃”ではなかった。



「よし……成功だ!」



コボルト達は硬い爪や牙だけ残して消え去り、その彷徨(さまよ)える魔力が僕へと流れ込んで来る。


ーーその爪牙(そうが)は武器やアクセサリーの素材となるから、回収して換金しよう。


そして、モンスターを倒して得られる魔力は使用した魔力保有量を回復するとともに、その限界値を上げる経験値ともなる。



「さすがダンジョン……野良のスライムを倒した時とは比べ物にならないな。群れを一気に倒していけば、まだまだ撃てそうだ!」



僕の魔力保有量は決して多くない。

炎系の初級魔法、【炎撃】なら一日に二十発程度が限界だった。


ーーただ“緋色の雷撃”は、その派手な見た目とは裏腹に驚くほど低燃費だ。


魔力を消費した実感よりも、モンスターの魔力を回収した感触の方がむしろ強い。



「ほぼ初級の雷撃一発分だもんなぁ……」



ーーコボルトだと一匹ずつ相手取れば流石にジリ貧かな?

二匹で恐らくプラスマイナスゼロ、それ以上ならお釣りが来そうだ。


つまり、常に三匹以上引きつけて同時に倒し続ければ永久機関的にダンジョンを攻略していけるだろう。


ーーそれが分かるとどうしても欲が出る。



「とりあえずあともう一回……もう一回だけ」



僕は近くの岩に登り、次なるターゲットを探す。


ーーが、針林ダンジョンは絶望的に視界が悪い。

道が整備されているわけでもなし、先の冒険者達が切り(ひら)いていった場所がせめてもの救いだ。


それでも一寸先(いっすんさき)は闇、十メートル以内には背の高い木々が視界を遮断するように生い茂る。



「まぁ視界が悪いのは好都合だ、他の冒険者からも見つかりにくいもんな」



かといって調子に乗って歩き回れば敵と目の前で鉢合(はちあ)わせる機会も増えてしまうだろう。


この針林ダンジョンは奥に行けば奥に行くほど“木々の密度が高くなっていく”という性質もある。



「今はこの辺りでジッと待つしかないか……」



幸い、他の冒険者の姿も見えない。

しばらくは入り口付近で雑魚狩りに専念しよう。



「それに……何かあればすぐにダンジョンを出られるようにしておかないとな」



そんな危機感を、まだこの時の僕は持っていたのだ。


ーーそう……この時はまだ。


続きが気になる方、面白いと思って下さった方、

ページ下の☆☆☆☆☆での評価を何卒お願い致します!

もちろん率直な点数で構いません!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ