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真聖女教団十二騎将vs傭兵団プロメテウス

==ヴァルトール帝国・針林ダンジョン・最奥==



いかに氷神の寵愛を受けていたとしても、神話級の超大型モンスターを凍結出来るほどの力は通常持ち得ない。


それが十歳ほどの幼い少年であればなおのこと。


彼、ツァーリ・エルマンがそれを成し得たのは類い稀なるセンスと生まれ育った特殊な環境、そして日々の研鑽が生み出した賜物(たまもの)であろう。



「へぇ、真聖女教団の十二騎将………………ごめん、俺それ知らないや」


「そっかぁ、キャハハ! まぁもう死ぬんだから覚えなくてもいいよ!」



白髪(はくはつ)の少年は頭から血を流しながらも、相変わらずの人を食ったような笑みを崩さない。


対する金髪の少女フィキティ・ラウズもその笑顔の憎たらしさについては負けていなかった。


氷神と奇跡。

寵愛を受けた者同士の闘いが始まる。



「食え、氷竜」



ツァーリが生み出した圧倒的な物量の氷塊、それが竜の形を模してフィキティに襲いかかるーーーーが、それは見えない壁に遮られて破砕してゆく。



「無駄無駄ぁ……さっきは不意打ちくらっちゃったけど、油断してないフィキティちゃんは無敵なんだよ?」


「へぇ、でも足元がお留守だよ」



彼が台詞を言い終わる前に地中から氷柱が突き上がる。



「わぁ! たかいたかーい!」



しかし氷塊が少女の身体を捉えることはなく、突き立った氷柱の上で余裕の笑みを浮かべた。



「なるほど、全方位に隙はなし……か」


「どう? 諦めて殺されてくれる気になった?」


「見えない攻撃に見えない壁……それに姿を自由に変えられる」


「ねぇ! 無視しないでよ!」



フィキティが手のひらを向ける。

ツァーリはそれを見て咄嗟に氷の盾を作り出す。


無惨に弾け飛ぶ氷塊、彼はたまらず距離を取って素早く動き続ける。



「手のひらを向けられてから着弾までは一般的な攻撃魔法と大差ない……それと…………」


「ぶつぶつ言ってないでお話ししよーよ、どうせもうすぐ死んじゃうんだからもったいないよ? こんな美少女とお話しできる機会なんて滅多にあるもんじゃないんだからぁ」



走り続ける少年、それを悠々と見下しながら追撃する少女。

一方的な戦闘に見えたが、ツァーリの目は勝つことを諦めていなかった。



「それは見えないというだけで、確かにそこに存在してる……ならやりようはある」



ツァーリが天に手を突き上げる。

光の竜と闇の竜が激闘を繰り広げている空に。


警戒ーーには満たないほどの一瞥(いちべつ)、その後フィキティはまた笑みを浮かべてツァーリに手を向けた。


その時、およそ戦場には似つかわしくない柔らかな白がはらりはらりと降り注ぐ。

そして、それをかき消す透明な何かがツァーリに向かってくるのを見て彼は白い歯を見せた。



「これでもう丸裸だね、おばさん」


「雪で不可視の攻撃を見えるようにしたんだ……へぇ、でもそれが何? 結局君はフィキティちゃんを傷つけられないじゃん」


「雪の溶け方と弾道的に豪光撃……ってところだね、つまり身を守ってるのも光属性の障壁だ。なるほど、それなら話が早い」


「だーかーら! 無視すんじゃねーよクソガキがぁ!」



またしても見えない何かが雪を一直線に溶かして進む。

ツァーリはそれを難なくかわすとまたしても天に向け手を伸ばした。


今度は柔らかな雪ではない。

まるで宝石のような氷のかたまり、それもキマイラをゆうに超えるほどの大きな物量がフィキティの頭上に出現していた。



「はぁ? 一瞬でこんな大きさ…………まさか雪はこれを隠すために⁉︎」


「魔法の障壁を破るには力業(ちからわざ)が一番ってね」



フィキティが何かを言う間も無く、圧倒的な質量の氷塊が無慈悲に彼女を押し潰した。



「ひゃー、ツーくん楽しそー!」


「真面目にやれ」



激闘の裏でキマイラやミノタウロスなどの強力な個体を相手取るのはリップ・ラトニーとラウガ・ゼレフ。

ラウガの両手足からは激しい機械音が鳴り響き、高速移動と超火力の打撃を可能にしている。


その機械の拳は氷漬けになったモンスターをそのままいとも簡単に破砕してしまうほど。



「ねぇねぇ、モンスターでかき氷作ったら美味しいかなぁ? どう思うラウガ!」


「真面目にやれ……」


「ラウガ同じことしか言わなーい! つまんなーい!」



追随(ついずい)するリップの繰糸術もまた負けていない。

魔力が練られた特殊な糸は使用者の意のままに動き、氷塊も岩でさえも切断する。


そして、ついに暴れ出したキマイラが二人の前に立ちはだかるも、豪炎も豪雷も寄せ付けない彼らの機動力になす術なく前足が落ち、後ろ足が落ち、あっけなく二本の首が落ちた。



「はぁ……こっちはすぐ終わっちゃいそうだねー、残念」


「……」


「ねぇ、ラウガが無視するー! つまんなーい!」


「……げろ」


「へっ?」


「逃げろ」



視界の端でラウガの大きな身体がどさりと倒れ伏す。

リップが警戒した頃には時既に遅し、敵の素早い蹴りが彼女のか細い身体を思い切り突き飛ばしていた。


闇に紛れる黒装束、そこに染み込んだ返り血、自身も傷だらけの満身創痍(まんしんそうい)だがそれでも異様な存在感を放つ男。



「ラウズ様……ニア・グレイスを仕留めました」


「そ、おめでと。こっちもちょうど終わったとこ」



流れる鮮血が透明な何かに(したた)ってポタポタと落ちる。



「最初から……姿を見せてなんかいなかった……のか」


「うーん、まぁ半分正解で半分不正解かなぁ? まぁまぁ楽しかったよツァーリ・エルマンくん」



突如として背後に現れたフィキティの凶刃がツァーリ少年の身体を貫いていた。

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