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霞(かす)む視界、赤黒い龍。

==針林(しんりん)ダンジョン・八合目==




獄雷閃(ごくらいせん)!」


「ーーーーッ」



今度は獅子の炎に閃光の威力を削がれた。

同時に山羊の頭が範囲攻撃の豪雷撃(ごうらいげき)でメリーを撃ち落としにかかる。



(かぜ)、お願い」



尋常ではないスピードで空を飛び回り、雷撃を回避する風の戦乙女(ワルキューレ)ことメリー・ロゼット。


僕は“四秒ほど”のクールタイムをもって獄雷閃を発動し中心の雷撃球を撃ち抜く。


そして再び上空から急降下を続けるキマイラ。



「また突撃してくる!」



ーーあの降下スピードはまずい。


そのまま地面に突っ込んで来られたら流石に全員無事では済まないだろう。


あれを完全に弾き返すには獄雷閃の連射、それが必須条件。


ーーもっと速く!


次は“三秒”ほどのクールタイムをもって発動。

少しずつ速くなる魔法攻撃への対処に追われ、勢いを削がれたキマイラ。


ヤツは余裕をもって再び上空へ羽ばたく。

その高さは僕やメリーの攻撃が届かない超上空。


ーーそして、更なる高さから改めて急降下を開始した。



「さらに高く…………巨体を活かした物理攻撃頼みか……!」



たしかに魔法戦ではこちらに部がある。

当然と言えば当然の判断。


ーーキマイラも凶暴に見えて、冷静な判断力と相当な知能を兼ね備えているようだ。


戦況は膠着状態(こうちゃくじょうたい)

周りのモンスターはニスカさんとローさん、再び急降下を仕掛けて来たキマイラを追う形でメリーが空中戦を繰り広げる。


ーー僕が打開の一手を決めないと状況は動かない。



「もっと……さらに速く!」



敵が獄雷閃を防ぎ切ったと思ったところへさらにもう一発。

ただひたすら集中力を高めていたーーが、その時、



「きゃっ!」



周りの守りを任せていた赤髪の双剣士ニスカの悲鳴だ。

複数のハイコボルトに追い詰められ負傷している。


ーー助けないと!



「ニスカさん、伏せて! 炎撃!」



僕の放った魔法は見事に一体のハイコボルトを撃退。

しかし、ニスカは回復が必要な様子だ。


僕はすぐさま駆け寄り、「再起」の魔法をかける。



「ごめん……ありがとっ!」



傷が癒えたニスカは戦闘を再開。

無理をさせて悪いが、今はそうも言ってられない状況だ。


ーーそれから、走りながらの詠唱はやっぱり余計に疲れるな……。


僕は呼吸を整えてキマイラへに獄雷撃の連撃を仕掛ける。



「獄雷閃っ…………獄雷閃!」



再発動までの時間はおよそ“二秒”。

まだ敵の意表を突くには及ばない。


ーーイメージは完璧なんだ。あとは……圧倒的な経験不足。



「撃ちまくるしかない!」



それから続け様に獄雷閃を連射すること三発。

いずれも迎撃と回避でダメージはほとんど与えられない。


ーーそれでも少しずつ速くなってる。


あと一秒、あとコンマ五秒、もう何度獄雷閃を撃ったか分からない。


キマイラはもう目と鼻と先まで襲いかかっていた。

今、獅子の顔をメリーが引きつけてくれている。


狙うは山羊の頭の方だ。


そしてーー



「獄雷閃!」



ーーいける!



「もう一発! 獄雷閃!」



一発目は予想通り(しの)がれた。

しかし、続け様に放った二発目の獄雷撃が山羊の“角を破壊”することに成功。



「やった!」



キマイラは体勢を崩して地面に落下。

勢いは十分に削がれていたが、それでもすごい揺れと地響きだ。



「お前ら! 衝撃に備えろっ!」


「任せて……風よ、守って」



もはや衝撃波に近い突風をメリーが風操作で(しの)ぐ。


ーー風がおさまった時それが決着の合図! 地に落ちたキマイラを一気に叩く!



「よしっ……とどめを刺します! 獄雷せ…………」



ーーあれ?


突然、視界が傾く。


ぼやけてよく見えない。


ーー何がどうなった。


ダメだ、力が入らない。



「ニア!」


「坊主っ……!」



ーーなんで僕、倒れているんだろう……あぁ、そうか。



「魔力……切れ…………か」



確かに雑魚狩りして魔力を補給するべきだった。

でも強敵ばかり相手していたからこそ、気が回らなかった。


ーーくそっ……キマイラは?


視界がさらにぼやけていく。

かすみゆく景色の中、僕の方へ駆け寄ってくる仲間と“のそりと立ち上がるキマイラ”が見えた。


ーーまずい……このままじゃみんなやられる……。



「お前ら! 逃げるぞ!」



かすかにローさんの声が聞こえた。

追撃を諦めて飛んで来たメリーが僕を抱え上げる。


残った仲間達三人はローさんとニスカさんが何とか担ぎ上げた。

しかし、キマイラは既にこちらへ追撃を開始している。


ーーダメだ……逃げきれない。


特に手負で男性二人を担いでいるローさんが出遅れている。


ーーせめてあと一発…………全員やられるくらいなら……!


僕は追い立てるキマイラに向け手を伸ばした。



「ごく……らい……げきっ……!」



それを言い終えた僕の視界は完全に(もや)の中へ。

わずかに“赤黒い龍”が翔けて行くのを見送り、そこで意識と記憶が途絶えた。

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