キマイラ討伐戦
==針林ダンジョン八合目・丘陵地帯==
木々が深く生い茂る“群生地体”を超え、針林ダンジョンの中心部へ。
先程までとは打って変わり、広大に開けたその地は自然豊かな丘の高原。
少しずつ傾いてきた陽光が優しく降り注ぐその様は、密林に隠されし楽園そのもの。
ーーしかし現状は一分一秒を争う、大自然を愛でるような時間はない。
そして、そこには数え切れないほどのモンスターとーー幻獣キマイラが僕達を待ち受けていた。
「あ……あれがキマイラ、想像以上にでかい!」
ーー目に映ったキマイラの第一印象は規格外に大きな獅子。
その太い首からは山羊の頭も生えており、二頭がそれぞれの意思を持っているようだ。
それらの意識は完全に足元の“冒険者達”へ向いている。
ーーキングエイプも相当でかく感じたけど、さらにその倍はありそうだ。うちの屋敷の母屋くらいあるんじゃないのか……?
四足歩行の全長はーーちょうど獄雷撃の効果範囲をまるまる占領するであろうサイズ感である。
ーー相手にとって不足なし……初っ端から全力全開だ!
「みんなっ!」
ニスカさんが仲間達を見つけて叫ぶ。
彼らのほとんどは丁度キマイラを挟んで向こう側に追い詰められている。
距離にして百メートル近く、どうしてもこちらの声は届かない。
そこでは完全に戦闘不能に陥った三人を庇うようにして二人の男女が奮戦しているようだ。
ーーが、もはや万事休す。絶体絶命の状況に直面していた。
「お願い! ニア君、みんなを助けてっ!」
「はい……任されました! いけっ……獄雷撃っ!」
ーー黒杖を使った獄雷閃では奥にいる彼らを巻き込んでしまいそうだ。
それならいつも通り“直上方向”への一発目!
僕は杖を下ろして右手をキマイラに向けた。
集中力とイメージは既に完璧、敵に勘付く隙は与えない。
僕の狙い通り魔法陣はキマイラの全長を収め、即座に展開。
ただ、異変に気づいたその超大型幻獣は反射的に空へ飛び立つ。
そこへーー“獄雷撃”の赤黒い閃光が直撃した。
「迂闊っ! 空は獄雷撃のテリトリーだ!」
確かな手応え、しかしーー
「それでも倒し切れない…………だろうね」
倒し切れないどころかほとんどダメージを受けてないようにすら見える。
ヤツは背の複数枚の羽を広げ、そのまま滞空を続けた。
距離をとってこちらの様子を伺っているようだ。
ーーそれでもキマイラを退かせることには成功。
ニスカさんの仲間、メリー達一行もひとまずの窮地は脱した様子だ。
「今のは」
「なんだっ……アルフの奴がやったのか⁉︎ いや、違う!」
初めて目にする獄雷撃に驚きの表情を見せる冒険者達。
冒険者“達”と言えど、反応出来るのは二人しか残っていない。
ーー僕達も彼らの元へ急ぐ。
その道中で集まってくる素早いハイコボルトはニスカさんが目にも止まらぬ斬撃で撃退してくれている。
「コボルトの方は任せました!」
「うん、任せて!」
ーー僕はハイオークの包囲網を蹴散らす!
「もう一度上へ、獄雷撃……!」
前方で僕らの勢いを削ごうとしていたハイオーク達に怒りの鉄槌を浴びせる。
ーーその大多数を戦闘不能にしたが、完全に倒せたわけではないようだ。
「流石オーク……直撃を耐えてくるか」
ーー一度でダメなら何度も当てるだけだ!
僕はさらに獄雷撃の詠唱を重ねた。
そこへーー様子を見ていたキマイラからの猛攻が降りかかる。
獅子の頭から吐き出された豪炎撃のような息、貫通力を持った炎の渦だ。
僕はとっさに、黒杖を使った“獄雷閃”へと切り替えて射出。
ーー魔法による相殺を狙う。
「くっ……獄雷閃!」
空中でぶつかり合った二つの魔法は物凄い爆音を上げる。
そしてーー予想以上の貫通力をもって“獄雷閃”が炎に押し勝った。
「やっぱり気のせいじゃない……!」
ーー獄雷閃は獄雷撃に比べて“貫通力”が上がっている。
また、威力が高いせいか範囲が少し狭まり、効果時間も少し短い。約七秒ほどで消失するようだ。
炎に競り勝ったは良いものの、その余波が多少獅子の顔に傷をつけた程度である。
ーーそれでも爆風でオーク達を吹き飛ばすことには成功、道は開けた。
しかしながら、今度は山羊の頭が角から“雷の球体”を放つ。
それはある程度の高さで空中に留まり、無数の雷撃を地に落とした。
もはや敵も味方も関係なし、無作為に焼き焦がしていく。
「豪雷撃だ!」
「これじゃ進めないっ!」
「撃ち落とします! 獄雷閃!」
黒杖から放たれた地獄の一閃は“雷の球体”を射抜き、さらにはキマイラを退かせた。
ーーあいつ、しっかり避けたな。いける……獄雷閃ならキマイラにもきっとダメージが通るはずだ。
さらに上空へ飛び上がったキマイラ。
この距離ならすぐに手出しはして来ないだろう。
僕とニスカさんは助けを待つ仲間達の元へ急いだ。
もはや、ハイコボルトやハイオークは敵ではない。
そしてーー
「メリー! ロー!」
「ニスカ」
ようやくニスカさんの声が届き、空色の髪をした少女メリーが反応を示す。
「と……ニア?」
「ああ、助けに来たよ!」
驚きに満ちた彼女の表情が少しだけ和らいだ気がした。
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