地獄の釜
ラビリンス入り口
「着いたね~ラビリンス」
「ラビオリはかなり強いだろうから遅れを取らないように気合いいれないとな!」
「普段はもっと賑やかなのに今日は大分静かね、ラビリンスで高難度イベントでも始まったのかしら?」
「いや!あんたらのせいだよ!冒険者だけじゃなくて出店の人達もあんたら見て顔ひきつらせてんじゃねえか!何やった?!言え!やっぱ言うな!糞、飯に釣られてコイツらと行動なんてするんじゃなかったー!!!」
蹲り地面を感情のままに叩きつける!!ドゴッ…?腕が地面に二の腕まで埋まってますねぇ?そ~っと周りを見るとサッと眼を逸らす冒険者出店の人達、腕を引き抜いて一歩皆さんに近付くと皆さんも一歩離れる、一歩近付く、一歩離れる、一歩近付、一歩離れ、項垂れる俺の肩に置かれる手、微かな希望に顔をあげるとそこには!やたら嬉しそうな顔したソバージュがサムズアップした親指を俺があけた穴に向けて
「ラビオリやるじゃん!あたしにもできないよあんな事!」
「やっぱ化け物とつるめるのは化け物だけなんだな」
泣けるぜ
「ずあぶんたのしそえだねラビー」
声の方に顔を向けると見たことない顔の女が喉に手をあて首を傾げていた
「んん、ずいぶん楽しそうだねラビー」
「あ~コアか?」
「さっすがダーリン!すぐにコアちゃんだってわかってくれるなんてやっぱり愛?愛なのね?!キャ───!」
抱きついてくるコアの好きにさせながら尋ねる
『早くねぇ?一晩でなんとかなるもんなのか?』
『頑張ったよ!褒めて?にしても人間の体って動かすの大変だね!右足出して左足出して手も振ってバランスとって初めて人間の事凄いと思ったよ!』
『今までで人間どー思ってたんだか気になる言い方だな?』
『えっへへ~♪害獣かな?絶滅させるまではいかなくても、生息数は絞るべきだと今でも思うよ?ウラミモアルシネ』
「仲が良いのは良いことだとは思うけれど、そろそろその子の事紹介してくれないかしら?」
『コロシテイイ?』
『ダメ』
『………わかった』
渋々感すげーな
「初めましてコアと言います」
コイツ意外とまともに挨拶できるんだな。
「仕事はまだ範囲が狭いけど(ダンジョン内のみ)害獣(人間)駆除を主にしています」
副音声が聞こえるけど、気のせいだな!
「人を襲うモンスターも少なくないからな、危険だが立派な仕事だな!」
「本当にね、家のソバージュにも見習って欲しいわ~?」
「あたしだって、依頼で人を襲うモンスター倒した事あるじゃん!」
「モンスターの棲む森ごと焼き払ってでしょう?あのあと近くの街で大騒ぎになったこと忘れたの?」
「依頼書に倒しかた書いてなかったし楽に終わらせられたから良いじゃん?」
「そのあと協会に森再生を依頼して報酬以上の出費があったな懐かしい!ソバージュには力の制御だけでなく常識も教えるべきだったな!はっはっはっ!」
コイツら頭イカれてやがる!
『ラビー?これが今の人間の考え方なら絶滅も仕方ないと思わないかな?かなぁ?』
『落ち着けコア、お前は今3を見て3億を判断しようとしてる様なもんだ!有益な俺という存在も居るだろ?!』
『難しい事言うねラビーは、足下の砂利の一粒一粒をよく見てって言ってるんだよ~?まぁラビーみたいのも居るし今は許してあげる~♪コアちゃんの優しさに涙しても良いよ!』
優しさ(嘲笑)何とか落ち着いたか?コイツらの作る飯手放すのは惜し過ぎるからな、コイツら冒険者やめて宿屋をメインにって話だったしな。
宿屋繁盛させる➡冒険者廃業➡自然破壊しない➡コアの怒る理由消滅➡俺美味い飯を何も気にせず堪能できるようになる!ラムロンダ家の性格が最大の問題でそこさえ改善出来れば、勝手に繁盛してくだろ!なんて残念な連中だ。
「ラビオリ君と潜る約束してるのだがコアさんも良ければ一緒にダンジョンに潜らないか?」
「ご迷惑にならないのであれば、同行させてください」
「よっし決まり~コアちゃんよろしく~」
「では入りましょうか?」
去り行く一行を見送った人々
「ラビオリって奴もそうだったけどあのコアって娘も化け物なんだろーな?」
「あの小僧ラムロンダにツッコミ入れられるだぞ?頭のネジ飛んでんだろーな、可哀想になまだ若いのに」
「コアちゃん可愛かった~♪」
「あの娘は大丈夫なんじゃないか?」
「その期待何度裏切られたか忘れたのか?ラムロンダを訪ねた綺麗な花々は悉く猛毒持ってただろ、目ぇ覚ませ?」
「ラムロンダ家に関わる奴でマトモなのはアベルくらいじゃないか?」
「アイツはアイツである意味ヤバイだろ?」
「ランク10が今んとこ最高だけど更に上作るの検討してるのアベルとソバージュのせいらしいからな」
「強いだけだろ?アベルには常識あるから全然問題無い」
「だな!」
「えっと、アベルさん、さっきの人がそうです」
「えっと、なんか想像していた人と全然違ってて困惑してる」
「僕もです」
「考えすぎだったのかな?まぁ彼等の同類じゃ無さそうだし今度接触してみようか」
あの結界を張ったのが彼ならランク10相当の実力者は確実だけど今まで無名なんて事あるのか?見極めは必要だ
「僕もその時同席しても良いですか?」
常識もある程度あるみたいだしいきなり戦闘になること多分無いだろうしノルン連れて行けば更に確率は下がるだろう
「構わないよ」
「ありがとうございます」
「他のダンジョンで稽古つけてあげる、今日からは1つ難易度上げるから頑張ってね」
ノルン、そんな怖がらないで良いよ?絶対に死なせたりしないから、君はランク10に至れる才能があるんだから、僕も頑張って鍛え上げるから早くランク10になって僕の胃痛軽減に役立ってね!
「まずは職業の確認からするか、私は戦士、妻は魔法使い、娘は」
「魔剣士!」
サムズアップ(好きなのそれ?)
「俺は~なんだっけ?コア?」
「色々ですね」
「色々だ」
「「「色々って何?!!」」」
仲良いなお前ら
「職業色々なんて聞いたこと無いわ?本当にそんな職業あるの?」
「明確にこれって職にはついてないな、だが今までで色々な職経験してきてるから大抵の事はこなせる」
そう言って掌に火を出してみせ、腕に短剣突き刺して回復魔法をかける。
「あとは罠感知と斥候なんかもできる、言えるのはこれだけでこれ以上教える事はない、次はコアな」
「私は魔法使いです」
コイツがそんな普通な選択するわけ無い。
「冗談です、本当は|格闘家です」
「ん?それこそ冗談だろ?前衛向きの装備ではないしモンスター相手では危険が大きいぞ?」
コアの格好はいかにもな魔法使いといった感じだしそう思うのも無理無いとは思うけどな(笑)
「うふふ、装備はこう見えても動きやすくできてますし防具としても優れてるんです!
格闘家に見えないからこそ良いんじゃないですかぁ、魔法でなすすべもなく倒れる姿も好きですが必死に掻い潜って近付いたのにぃぃ、勝てると思ってた近接で叩きのめされる姿を見るのも大好きなんですよ!!!」
…バルバロとモルガナも納得して頷いてるし、もう好きすれば良いと思うよ、…頭痛い。
ソバージュが頭をおさえた俺の肩に手を置き
「なんか変わった娘だね~友達は選んだ方が良いと思うよ?」
・・・・・・・まったくだよ!!!
「グルァ"ァ"ァ"ァ"ア"!…ツギハオマエダァ"ァ"!」
バルバロが地獄の悪魔もビビって逃げ出すような声あげながら斧でアダマンゴーレムを縦真っ二つに叩き割って辺りを見回し次のゴーレムに向かっていった。
物理で倒すのはかなり難しい筈なんだけど?得物の斧も刃こぼれしてないしワケわからん、アイツ絶対狂戦士だろ?!
「まだ骨だけは焼け残ってしまうわね、私に焼尽くせない物なんて認めない!必ず焼尽くしてやるわ!」
マグマの中でも生きられるフレアリザードを焼き殺すモルガナ。
充分だから!その骨は火無効の装備に使うものだから!骨も残さないって耐性無視しないでくれませんかねぇ?!実際ちょっと溶けてるし!なんなの何目指してんの?!
「父さんも母さんも私には加減を覚えろっていう癖にやんなっちゃうなぁ、アッハハハハ!」
風魔法で空を飛びフェニックス(伝説ほどの回復力はない)を剣と魔法で微塵切りにして血と肉と骨の雨を降らせてるの見れば加減とはなんぞや?と疑問に感じるだろう。
悍ましい雨を浴びながら雄叫びをあげる悪鬼バルバロ、雨を蒸発させ紅い霧に包まれながら執拗にフレアリザードを焼滅させていく魔王モルガナ、空を飛び回り戦場に彩りを添える魔皇女ソバージュ……ここが地獄か?
「絶景かな絶景かな~♪」
コアが嬉しそうでぼくもうれしいです!
「ってそうじゃねえだろ?!この地獄でもここまで酷くないだろと思える光景見て出る感想がそれかあ?!!」
「ラビーが元気一杯に叫んでるの見てコアちゃん嬉しい!最近口数減ってたしあのままじゃ頭に苔生えるかと思って心配してたんだ」『でも地上に出しちゃうと私が様子が見えなくて詰まらないから放っといたけど(笑)』
『ちょっと見直しそうになった自分が憎い!』
この野郎!最後の一々言う必要あったか?!
『私の性格モデルは女なので野郎はやめてください!散々尽くしてきたのに捨てるつもりね?!新しい女ができればポイですか?!』
『唐突にぶっこんでくるなお前も、あとそれはソバージュも似たネタやってたぞ』
「あのアマぶち殺してやらぁあああ?!」
「まじで向かってくな?!おい!お前まで地獄の住人になる気か?!俺は嫌だ足踏み入れたくないけど独りも嫌だ!だからお前も行かせないぃぃ!」
恥も誇りもねぇ!コアの腰にしがみつき必死に引き止める。
「離しなさい、離して!離せー!!」
「お前キャラ変わりすぎたろ?!何があったの?!落ち着け!頼むから俺を独りにしないでくれぇ!!!」
動きが止まった?
「もうラビーったら甘えん坊さんなんですから~♪仕方ないから一緒に居てあげますよぅ、だからその薄汚い地面に擦り付けて感謝すると良いと思うよ?糞雑魚メンタル紐男♪」
……もうなにも言うまい。
「腹減らね?」
『じゃぁそろそろモンスターには帰ってもらうね。この体でご飯食べた事無いけど味とか感じるかな?一応その辺には手をつけてないから大丈夫だと思うけど』
『なんだ?珍しく緊張してんのか?』
『味覚って私にはなったですからね~♪もしかしたら地上の食べられるもの全部消えちゃうかも?特に肉が危険ですね!ラビーを食べずにいられる自信ないですよ?でもダンジョン内なら死なない腐らないので安心安全ですね♪』
...俺の安心と安全はどこ行った?
ラムロンダ家がやっと引き上げてきやがったがここで食うって言わないだろうな?
・・・・・結局見てるだけだったが疲れた3匹の悪鬼が歩いてきて俺達を見てハッとした顔して
「あたし達だけで楽しんじゃってゴメンね!」
楽しんでたんだ、お前ら
「戦いに参加しないなんて体調悪かったのか?」
そぅじゃねぇだろ?!あんな所に正気で飛び込めるか!お前らの本当の棲みかに歓迎してたのかも知れねえがお断りだバカ野郎!
「体調の問題じゃねぇ、あんな雨浴びながら戦うのはゴメンだ俺は!」
「そう言う人多いけど私にはよく分からないわ。
時間も結構たったし、体調が平気ならそろそろご飯にしましょうか?」
そう言ってマジックバックから何かを
「出そうとすんじゃねー!!!」
よしっ手が止まった
「なに大声出してるんですか?煩いから普通に話してください」
なんか言ってるが無視だ、今はそんなもんより大事なことがある!
「こんな血と骨で彩られた景色と血生臭い臭いが漂う中で飯なんて正気か?!料理ってのはなぁ、目で楽しみ、薫りを楽しみ、味を楽しむもんなんだよ!!こんな地獄の最奥みたいな所で食ったらどんな美味い飯もげろ以下になっちまうだろ?!!」
「はっはっはっ!大丈夫だ!私達の料理は何時どこで食べても美味いぞ!」
「そうだよ!それにお腹すいたし早く食べよ~♪」
「お・れ・が!嫌なんだよ!俺だって腹はすいたがこんな所で絶対に食う気はねぇ!外で食うぞ!」
「今日はラビオリ君の言う通りダンジョンの外で食べましょうか」
「えー!お腹すいた!」
「ラビーそんなに我儘を言うものではありませんよ、ラムロンダさん達のご好意でご馳走になるのに文句をつけるなんて恥ずかしいと思わないのですか?」
『これくらいでガタガタ騒ぎ立てるなんて恥ずかしく無いんですか?お前達と違って俺は繊細なんだアピールでもしてるんですか?全く情けない!そんなに嫌なら壁向いて鼻栓でもしたら良いんじゃないですか?あっ凄い!これで解決ですね?さっすがコアちゃん天災ですね!』
くそっマトモな人間は俺しか居ないのか?!
俺独り反対しても勝てるわけねぇ、仕方ない
「俺は絶対にここでは食わねえ!ここで食うならお前らは好きにしろ!俺は外の出店で適当になんか買って食う!」
言うだけ言って背を向けて出口に向かって歩き出す。
飯は少し惜しいがあんなとこで食える奴等の精神が信じられん、くっそ腹へった、俺は何のためにこんなとこ来たんだかな~。