序章
夢を見ていた。1人ベンチに座り込み風に吹かれる池を眺めている。自分では見えないはずの顔が酷く醜くなっているのが分かる。ただ1人座り込み荒れる風を浴びながら空を見上げた。キャンバスに黒のインクを落としたような空の色は全てを呑み込んでしまいそうだ。遠くに見える家の明かり、電車の音、
「ここは..」そう呟くと同時に視界が真っ白になる。
目が覚める。
いつもの部屋、いつもの香り。
何事も無い1日が始まる合図だ。いつものように支度をしいつものように学校へ行く。顔なじみの友人達と話ながら帰ってくる。それが日常であり自分の生きる理由だ。学校はそこそこの進学校、友人関係も良好、部活も上場自分以外であれば満足のゆく人生である。
しかし、何か満たされない何をしていても心の底から楽しめていない。これはないものねだりなのか強欲なのかその答えは当人でさえも分からない。
しかし、人生の転機とは思っても見ないところで起こる
いつもどうりの学生生活を送っている俺1ーD 貝塚 聡
半分寝ながら受けた6時間目も終わり家に帰ろうとしていた時ある少女が俺に声をかけてきた
「貝塚君ちょっといいかな?」
黒髪ボブで童顔、背は俺の肩ぐらいまでの華奢な少女
その声の招待は...誰だ?
「えと...どちら様?」
思わず聞いてしまった。人は第一印象が大事だとどっかの偉い人が言ってた気がするがその人に言わせれば今の俺の返しは0点だっただろう。
「あ、ごめんね自己紹介がまだだったね。私は1年A組の九条 美里です。」
ふん..A組かどうりで知らない訳だ。ここ私立生石学園はA~Cが1階、D〜Fが2階の造りだ。普段クラスで1日を過す俺が1階の面々を知るよしがない。
「よろしくね、俺は貝塚聡。それで九条さん俺に何の用?」
自己紹介のテンプレのような台詞を述べ終えるとそこで九条は緊張なのか固まってしまった。
「あ、あのちょっと放課後お時間いいですか?」
んっ、これは、そーゆことだよな。俺にもモテ期が来たんだよな?
「あ、うん良いよここじゃ何だし場所変えよ」
何故か俺がリードする形になっているのはスルーして俺たちは学校を出て近くの公園に来た。道中何か話すわけでもなく黙々と歩く俺と九条、ただ俺の内心はブラジルのサンバ以上にハッスルしている。
(来たんだ俺にもモテ期が...)
しかし何故、顔も知らない子なんだろうと少し疑問は残るがそれを凌駕する圧倒的ハッスル
残暑が残る夏休み明け、季節遅れのセミの鳴き声が雰囲気を醸し出す。
「よし、この辺でいいか。それで九条さん話って何?。」
あくまで平然、完璧なポーカーフェイス、俺俳優向いてんじゃね?
「あのぉ...うぅ」
来る、くるぞ俺の青い春が来るんだやっとだ、
「私と駆け落ちしてくれませんか!!」
んっ?なんて?かけお、え?
「え?なんて?」
全く整理のつかない頭で唯一導き出した最適解なセリフ
「私と駆け落ちしてくれませんか!!」
さっきと全く同じ言葉。これは遠回しな告白なのか?
最近のJKは、こんな言い回しするのか?
混乱しまくった頭の中でセミの鳴き声だけがこだましていた