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4話〜この世界の成り立ち〜


「この式の終了をもって、君達は正式に我が校の生徒となる」


 学園で暮らすようになって数週間。

 俺は、この学園の一年生になった。


「それでは生徒達は担任と共に自身のクラスへ移動するように」


 そう言って俺達の前で話していた学校長の(あずま)京太郎(きょうたろう)は袖に下がった。


 それを確認してから新入生を受け持つ教師達が自身のクラスの生徒を立ち上がらせ、それぞれの教室へと連れて行く。




「と、言う訳で私が皆さんの担任をする事になりました、新月(にいづき)美夜子(みよこ)です」


 俺のクラスの担任は女性だった。

 猫のような鳶色の目に紫がかった黒髪の美人さん。

 スラッと高身長の大人の女性で、クラスの男子だけでなく女子連中も夢中になっている。


 俺のクラスは男女半々でちょうど40人。

 いろいろな子がいる。

 マッチョ、ふくよか、ガリ、平凡。


「では恒例の自己紹介タイムといきましょ〜う」

「ウウェェェーイ!!」

「エェェェー!!」


 反応は綺麗に分かれていた。


「じゃあ俺から!!俺の名前は飛鳥羽(あすかばね)(ともえ)。異能は……」


 早速男子がノリノリで話している。

 真っ赤な髪にハツラツとした表情。

 鍛えられた体は制服の上からでも分かる。


 それから続く自己紹介。

 俺も普通に済ませた。

 名前、自分の異能、当たり障りのない挨拶。

 それだけで十分だ。


 この後にも皆普通に自己紹介を済ませていた。


水瀬(みなせ)美那(みな)です」


 なんか聞き覚えのある名前が聞こえた。

 水色の髪に青い目。

 あぁ、思い出した。


 中学の時の同級生だ。

 向こうも俺に気付いたらしく、わずかに目を細めている。




 無事全員の自己紹介が終わり、新月先生が教壇に立つ。


「さて、これでA組全員の顔と名前が分かったね。これから一年、共に暮らすクラスの仲間同士。時に争い高め合い、時に協力して、思い出を作るように」


「先生〜、ダジャレですか?」

「え?」

「共に暮らすクラスって」

「……飛鳥羽君」

「はい?」

「静かにね」

「あーい」


 飛鳥羽を黙らせ、先生は続ける。


「流石に初日からガッツリ授業はやらないけれど、今の世界について少し詳しく話しておこうかと思う」

「少し詳しくですか?」

「そう。中学の時より少し詳しくね。所で異能者についてはどのぐらいまで知っているかな? はい、鏑木(かぶらぎ)さん答えて」

「え、えっと異能は超能力や魔法の事を総称した言葉、です」

「はい正解」


 先生に指名された茶髪の女子が答え、正解と言われてホッとしている。


「まぁこの辺の事は知っているよね。じゃあ、超能力と魔法の違いを説明できる人はいるかな?」

「はい」

「お、水瀬さん。チャレンジしてみるかい?」

「はい。超能力は先天的に、魔法は後天的に得たものです」

「簡潔でよろしい。正解だ。じゃあ、魔法と魔術の違いは何か言えるかな?」

「……それは」

「言えなくても問題は無いよ。魔術は手段、魔法は結果だ」

「手段と結果?」

「そう。例えば君達は今ゲームをしているとしよう。画面の中のキャラクターを動かす為にはレバーを進行方向に倒せば良い。それが魔術だ。そしてキャラが歩く。これが魔法だ」

「分かりやすいっす!!」

「飛鳥羽君静かにね」

「うっす!!」


 咳払いをし、先生は話を再開する。


「異能者は昔から存在は確認されていたの。シャーマンや錬金術師、魔女とかがそれね。でも彼等は異端として受け入れられなかった。ある者はペテン師と呼ばれ、またある魔女は裁かれた。その結果、何が起きたか……分かる人いるかな?」


 そう言って俺達を見回し、新月先生は口を開く。


「分からないのも無理はない。表の歴史には載せられていないからね。答えを言うとだね、怪異が暴れ回ったんだ」

「……怪異?」

「そう、怪異。妖怪や魔物、魔獣といったものが跋扈したの」

「それって……」

「あぁ、世界に伝わる伝承。あれって本当だからね?」

「マジかよ……」

「マジだよ。まぁ何とかその後、生き残っていた異能者達のおかげで怪異達は退治、封印されたんだけどね」

「そんな歴史が…….」

「中学までは習わないからねぇ……」

「でも、何で俺達にはそれを」

「ん?だってねぇ」


 薄っすらと笑って先生は言う。


「怪異と戦う機会もあると思うからね」

「……」


 数拍置き、一年生のフロアに驚愕の叫びが響き渡った。


「た、戦うってどういう事ですか!?」

「どうって、そのままの意味さ」

「え、マジで?」

「マジだよ。知っているとは思うが、君達には官民から依頼が入る事がある。ペット探しや人探し、戦闘に特化した異能を持つ者にはそっち方面の荒事の依頼が来る事がある」

「……その中に怪異関連があるんですか?」

「そうなるね。まぁ怪異関連は余程強い子にしか来ないからそこまで心配しなくて平気よ」

「良かったぁ……」

「あぁでも、向こうから来る場合もあるからねぇ……」

「……え?」

「去年だけで27人。怪異関連で犠牲になった生徒の数だよ」

「それは……四学年で、ですか?」

「えぇ。去年一年でそれだけ犠牲になっているよ。一年生だけじゃない。ある程度経験を積んだ四年生からもね」

「怖…….」

「だからもし依頼が来たとしても、自分では無理だと思ったら遠慮なく断ってほしい。依頼者が困るとか考える前に、自分の命を守る事を考えて欲しい」

「自分の命…….」

「そうだ。この世界は便利であると同時に危険でもある。我々が教えるのは、その世界での生き方だ」


 気付けば俺達は真面目にその話を聞いていた。


「とまぁ怖い事を言いはしたが、怪異関連の依頼を受ける者は一握り。むしろ関わらない確率の方が高いんだ。だから、そこまで気にする事は無いよ」

「良かった〜」

「ほっ……」

「それ以上に厄介なのは異能を悪事に利用する者。ソイツ等の数が最近増えてきているからね」

「あっ、その話をこの前ニュースで見ました!!」


 女子が手を挙げると同時に話す。

 そのニュースなら俺も見た。

 真空の刃、用は鎌鼬を飛ばせる異能者が銀行を襲い、金を奪って逃げたという事件だ。

 幸い、警察の異能犯罪対策班が速やかに解決したのだが、そういった事件は後を絶たない。


 その事もあってかまだ世間では異能者は恐れられている。


 中には異能は障害とか、神からの罰を与えられた者達と言う奴もいる。

 失礼な奴等だ。


 だが現実に反異能主義の人達は未だにある。

 異能を持たない姿こそが人類のあるべき姿と言っているのだ。

 まぁ俺としては誰だどんな主張を掲げようが知ったこっちゃないのでどうでも良い。

 至極どうでも良い。


 が、現在異能に支えられている事業や研究はかなりある。

 今までの物理法則を無視できる異能を使えばあっという間に産業革命が起きると言っても過言では無い。

 が、それは未だに起きていない。

 何故か。

 簡単な事だ。


 それをそれては困る人達がいるのだ。


 例えば火を起こせる異能者がいるとする。

 彼がいれば、石油や燃料を輸入せずとも火力発電し放題だ。

 となると石油輸出国が困る。


 例えばどんな病でも治せる異能者がいるとする。

 彼がいれば世界から病人は消えるだろう。

 そうすれば医者や製薬会社の人達が困る。


 例えば未来を見通せる異能者がいるとする。

 彼が未来を見てそれを発表するとする。

 その中には当然、良くない未来も入っている。

 パニックが何処かで起きるだろうしなにより、占い師が困る。


 つまりはそういう事なのだ。

 今まで成り立っていた産業等が、異能で代替えできるのだ。

 一昔前はAIに取って変わられると言われていたが、今では異能に取って変わられるなのだ。


 だが現に異能者の数は少しずつではあるが増えて来ている。

 その為、警察や消防、医療現場といった一部では異能者を積極的に雇用し始めている。


 警察ならば読心系の異能者、消防ならば探索系の異能者、そして医療現場なら治癒系や癒す効果を持つ異能者といった具合にだ。


 他にもいる。

 念動力系の異能者は意外な事に、工事現場等の力仕事の現場で働いている事が多い。


 最近では動物の心が分かる異能者が獣医になったとニュースにもなっていた。


 これだけ話があるのにまだ、異能を認めない人達がいる。


 それを義父さんは、自分の知らない未知の世界を知るのが怖いのだろうと言っていた。

 成程、と俺はそれを聞いて納得した。

 確かに自分の知らない未知の世界に踏み出し、知るのは勇気がいるだろう。

 分かりやすい。

 流石は元教師なだけある。


 が、それと同時に俺は思う。

 知らないから、怖いからと言って否定し、言葉で傷付けるのは違うと思う。


 そんな事をする奴等は、俺と姉さんを捨てた実親と同じだ。

 そんな事を思ってしまう。


「さぁて話す事も話したし、次は校内探検と行こうかね。騒がないようにね〜」


 そんな事を思う俺の耳には先生の明るい声が届いていた。

お読みくださり、ありがとうございます。

早く怪異パートが書きたい…… orz


もう少し説明パート続きます〜


次回もお楽しみに!!

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