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3話〜学園最強〜


「ここが訓練棟。主に皆が心具の練習に使う所よ」

「訓練棟……広いですね」

「訓練棟だけで別の浮島一つ使っているからね」

「す、すげぇ……国立とはいえどこからそんな金が…」

「国家予算の三割。それが今、異能研究に使われている金額よ」

「うわ、すげぇ……」

「更にそこに、各地方。ここなら関東の一都六県からも予算が出されているから金額は更に上ね」

「やべぇ……」


 そう言いつつ訓練棟エリアへと入る。

 そこには屋内訓練場と屋外訓練場があり、非常に賑わっている。


「貴方も多分、その内ここを利用するようになると思うよ」

「先輩も使っているんですか?」

「んー、まぁ時々ね」


 屋内訓練場を素通りし、屋外訓練場へと向かう先輩。

 だが先輩は屋外訓練場を通り過ぎ、更に奥にある訓練場へと入って行く。


「あれ、そっちなんですか?」

「会わせたい人はこっちにいるから」

「は、はぁ……」


 連れて来られたもう一つの屋外訓練場。

 そこは空港の滑走路の様にただただだだっ広い場所だった。

 そこで行われているのは


「あ、耳塞いだ方が良いかも」

「ぇ……」


 パァンッ!!

 という空気が破裂する様な轟音が両耳に飛び込んで来た。


「ンヒィ!?」

「言ったのに……」

「……」

「ごめん、何言っているか聞こえない」

「……!! ……!!」

「あぁ、耳をやられて声が出せないのね。ちょっと待ってて」


 そう言って先輩は俺の顔を挟む様に耳に手を当てる。

 すると耳が温かい光で包まれ、光が消えると耳は治っていた。


「さっきの音の出所に目的の相手がいるわよ」

「平気な顔して言いますね先輩は。にしてもデカい音でしたね……心具ってやつですか?」

「そう。心具。詳しくは習うと思うから私からは言わないけど、彼女は普通じゃないから驚かない様に」

「は、はぁ……」


 そう言われて滑走路みたいなデカさの屋外訓練場へと入る。

 滑走路のように長い訓練場の中、七人の先輩が心具を手にしている。

 全員射撃系の心具らしく、遠方にある的を真剣な眼差しで狙っている。

 撃つ度に一喜一憂する先輩達の中、一人だけ黙々と的の中央を射抜き続ける女性がいた。


 緑の髪を靡かせ銃型心具のスコープを覗きながら引き金を引く先輩。

 引き金が引かれる度に轟音と共に弾が放たれ、的の中央を正確に撃ち抜く。


「ヒット……」


 撃ち抜く度に先輩が呟く。

 全ての的の中央を撃ち抜く姿に俺は驚きを隠せず、言葉が出なかった。

 撃ち抜くのが凄かったんじゃない。

 先輩が使っている心具を見て驚いたのだ。


 射撃系心具というのは数が少ない。


 そもそも心具は大きく分けて三種類ある。


 近接型、遠距離型、特殊型の三種だ。


 近接型は主に刀剣の形をしている。

 刀や剣、ナイフ、槍や斧。

 そういった物が分類される。


 次に遠距離型。

 これは数が多い。

 なんせ銃の他に弓にボウガン。

 銃の形と言っても拳銃にマシンガン、ライフル、ショットガンと近接型より多い。


 そして最後の特殊型。

 これは数が少なく、盾の形をする物やマントの形をしている物、手甲型、不定形型があり、確認されている件数も一番少ない。


 更に細かく分けると特殊近接型と特殊遠距離型というのも存在するが、この二種は特殊型と比べて更に数が少ない。


 そんな中射撃型は難しいと言われている。

 心具は所有者の魔力で形成される。

 近距離型であろうと遠距離型であろうとそれは変わらない。

 だが近距離型と遠距離型、特殊型では大きな違いがある。


 遠距離型の方が消費する魔力量が多いのだ。

 というのも遠距離型の場合、撃ち出す弾も魔力で作らなければならないのだ。

 その為、後先考えずにバカスカバカスカ撃つと後々キツくなるのだ。


 そして消費量も形によって違う。

 ボウガンや弓が一番少なく、ライフルやショットガンのように大型化する程に消費量も多くなる。

 そんな中、会いにきた先輩が使っている心具の形というのが


「た、対物ライフル…….」

「凄いよね。あんなの普通出せない。出せたとしてもあんなに撃てない」

「す、すげぇ……」

「ね。凄いよね」


 対物ライフルのような大型の心具は一発の威力は高いが、魔力を相当消費する。

 普通ならば五、六発で限界を迎えるのを先輩は軽く十発は撃っている。


 そして対物ライフル型の心具の所有者は国内でも片手で数えるぐらいしかいないと言われる程貴重な存在。

 その中でも二桁数撃てる人物は更に少ない。

 そしてそれをできる人物が今目の前にいた。


「……こんなものかしらね」


 緑髪の先輩は心具を消すと立ち上がるとこちらを見て微笑む。

 緑の髪とお揃いの緑の目でこちらを見る先輩。




「ここまで見学に来るなんて珍しいわね。新入生?」

「は、はい。早瀬遥です」

「まだ、組分け前よね。私は薄明(はくめい)樹里(じゅり)。この学園で生徒会長をしているわ」

「は、薄明ってあの薄明組の!?」

「え、えぇ。そうよ。薄明組の薄明樹里よ」


 その名を聞いて俺は驚きを隠せない。


 薄明組とは国内にあるデッカいグループ。

 少し前の言葉で言うなら財閥みたいなものだ。

 それも異能開発、研究を行なっているグループであり、捨てられた異能者を保護しては住む家を用意しているそうだ。


 そういった研究開発を行う組織は他にもたくさんある。

 が、全てが全て薄明のようなものではない。

 中には非人道的な実験を行う組織もある。

 当然国としてはそれを禁じてはいるが、未だに無くせないでおり、国としても困っているのだ。


 そんな中薄明はハッキリ言って超ホワイト組織なのだ。

 捨てられり、保護された異能者に新しい家を与え、その子達が望めば新しい家族も用意している。

 さらには研究開発に見合った対価も出している。


 そのグループの御令嬢がこの学園の生徒会長を務めているのだ。


「ん? 早瀬って君、お姉さんいるかい?」

「え、えぇ。いますけど」

「名前は?」

「早瀬陽菜(ひな)です」

「あ〜。陽菜ちゃんか〜」

「知っているんですか?」

「まぁね。去年同じクラスだったから色々知っているよ。毎日君の事を自慢してきたりね」

「自慢……まだそんな事を」


 早瀬陽菜。

 俺の姉で、俺と同じ異能者で、俺の事を大切にしてくれる。

 変とは思われるかもしれないので誰にも言っていないが、姉さんは俺の初恋の相手でもある。


 だが、俺と姉さんを育ててくれたのは


「……大切に思われているのよ。貴方は」

義父(とう)さんと義母(かあ)さんにも同じ事を言われましたよ」


 俺と姉さんを育ててくれた両親と俺は血の繋がりは無い。

 俺達は小さい頃に実の親に捨てられ、国の異能者研究機関に保護され、今の義両親である早瀬さんに引き取られた。


 遥という名も早瀬さんが付けてくれた名前だ。

 だから俺は、俺を捨てた親がつけた名前は知らない。

 知りたいとも思わない。


 俺みたいに、異能者を捨てる親は今も少なくない。

 異能者が世に出て数十年経つのに、未だに異能者は化け物という風潮が残っているのだ。

 あと十年程すれば一世紀経つ。

 そうすれば世間も少しは変わるだろうかと、期待してしまう。


「異能だけじゃない。解明された事が増えたのに、それを受け入れるのが怖い人達はソレ等を化け物と一括りにする。理解するのが怖いのよ。自分の知らない地に足を踏み込むのがね」

「……それは、分かりますけど」

「安心して。ここにいるのは異能者ばかりだから」

「……はい。ありがとうございます」

「もう、そんなに固くならないで良いから。そんなカチカチだと、授業始まってから続かないよ?」

「は、はぁ……」

「私は今年で三年生だからクラスは階は違うけど、何かあったら来なさい。話ぐらいなら聞いてあげるから」

「良いんですか?」

「陽菜ちゃんの弟だから特別だよ〜ん」


 俺の問いにニヒッと笑って返すと訓練場を出て行く薄明先輩。

 訓練場の外からは黄色い声が聞こえてくる辺り、先輩は余程人気なのだろう。




 その後俺は先輩と共に他の施設も見て回った。

 競泳ができる程大きなプール、世界中の本があるのではないかと思う程広い図書室、学食に購買。


 ここでこれから学ぶと思うと、俺は楽しみです仕方がなかった。

お読みくださり、ありがとうございます。


……樹里好きだぁ。

今の所、作ったキャラの中で樹里が一番好きなんですよ〜

……贔屓しないように気をつけねば。


次回もお楽しみに!!

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