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2話〜学園散歩〜

 

 翌日、俺は天羽先輩に連れられて学園の中を歩いていた。


「多分、入学してからちゃんと案内されると思うけど、アレが校舎」

「綺麗ですね」

「あっちが体育館」

「デカイですね」

「それであっちにあるのが警備員さんの詰所」

「ほうほう……ん、警備員さんもやはり異能者なんですか?」

「えぇ。そうよ」

「あっ、あそこのドームは?」

「あそこのドームは闘技場ね」

「闘技場?」

「そう、闘技場。生徒同士のいざこざの解消とか、月に一度行われる異能実技試験で使われる会場よ。全部で……六つだったかな。あるよ」

「だ、だったかなって」

「結構な頻度で去年壊れたから」

「……え?」

「だから、壊れたのよ。ドカーンって」

「うそーん」

「残念ながら本当ね」

「……こ、こえぇ」

「直す度に強度は増しているはずなんだけれどね」

「もっとこえぇ……」

「行ってみる?」

「い、良いんですか?」

「うん。多分私達以外もいると思うからさ」

「じ、じゃあ行ってみた……」


 その時だった。

 目の前の闘技場の天井を突き破り、炎と共に轟音が鳴り響いた。

 その音を聞いてまず思い浮かんだのは焼却炉。

 次に火炎放射器。

 真っ赤な炎は火山の噴火と見間違う程の勢いで天へと駆け上っていた。


「あちゃ〜……まぁたやったな」

「え、まさかあの炎って」

「うん。去年何度も壊した張本人、だと思うよ。あの炎なら」

「……ま、マジっすか」

「どうする?怖くなった?」

「い、いえ。行きます」


 俺の答えを聞き、薄っすら笑んで歩き出す先輩。

 やべぇよ。

 もしかしたら俺、思っていた以上にとんでもない世界に踏み込んでしまったのではないだろうか。




「こぉらお前これで何度目だ!?」

「……さぁ?」

「さぁ? じゃねぇぞコラァァァ!!」


 闘技場の中央で一人の少年が教師に怒鳴られている。

 教師は顔を真っ赤にしているが、怒鳴られている少年はどこ吹く風。

 完全に聞き流している。


「あ〜あ。やっぱり」

「前と同じ人なんですか?」

「うん。篝火(かがりび)火織(かおる)。私と同じ、二年生」


 篝火火織と言われた先輩はポケ〜ッとした表情で先生の話を聞き流しており、時折ポリポリと頭をかいている。


 彼の背は中の上辺り。

 俺と同じが少し小さいぐらいだ。

 髪は所々赤の混じった白色。

 そのせいで赤のメッシュを入れたようにも見える。

 その髪は無造作に伸ばされており、所々ピョンコピョコンと跳ねている。

 そして目は炎のように赤い。


「お前という奴は!! 何でこうも何度も壊すんだ!?」

「そりゃ……素材が弱いんじゃないんですか?」

「貴様という奴は!! これでも前回の倍の強度なんだぞ!?」

「それは知っていますよ。だから前回と比べて少し火力を上げたんですけど」

「上げるなよ!! おかげでまた修理しなきゃならんのだぞ!!」

「お願いします」

「おぉまぁえぇなぁ……」

「俺の火力を耐えられない天井が悪い」

「それ先月も聞いたな……はぁ。お前に言っても無駄か。お前も少しは自重してくれ」

「自重? どのくらい?」

「今の火力で止めてくれ。でないと、生徒間での試合の時に相手に何が起きるか」

「試合は基本エーテル体なんでしょ? なら問題は」

「良いからそうしろ。あの火力ならエーテル体同士での試合でもお前の勝ちだ」

「ん〜……」

「ん〜……じゃねぇよ!! 良いな? 分かったな?」

「はぁ〜い」

「全く……」


 呆れた様子で帰っていく教師。


「安心して。実技試験の時はエーテル体で行われるから死にはしないわ」

「えっと、エーテル体って確か魔力で作った仮の肉体でしたっけ?」

「……正解。でもそれだと力はだいぶ制限されちゃうんだけど、それでも普通の人と比べたら十分に強いよ」

「それは知っていますよ。初歩ですから」

「そうね。知っているよね」

「そうそう。知ってるよね〜」

「……うわぁ!?」


 いつも間にか現れた少年に驚き、思わず飛び退いてしまう。


 新しく現れたのは黒髪の少年。

 肩口ほどの長さの黒髪に黒い目。

 気怠げな猫みたいな雰囲気の少年だ。


「……牙楽羅(ががくら)。良いの? ここにいて」

「お〜。誰かと思えば天羽か。あれ? もしかして彼の同棲相手かな?」

「同棲って、まぁ。そうね」

「へ〜。やぁ、俺は牙楽羅。牙楽羅朔那(さくな)。一応先輩だから、よろしくね」

「は、はぁ……」


 気怠げでいながら気さくな様子で話しかけてくる牙楽羅先輩。


「ここにいる、って事は君も当然異能者なんだよね?」

「え、えぇ。まぁ」

「ほふぅん? 何の異能?」

「それは……」

「言えないよねぇ〜。意地悪な質問してごめんね。ま、仲良くやろうよ」

「は、はぁ……」

「ま、ゆっくり慣れていけば良いさ。忙しくなると大変だからね」


 そう言うと闘技場の中央へと歩いて行く牙楽羅先輩。


 牙楽羅先輩は、少し苦手な類の人かもしれない。

 一見話すと楽しそうな人に見えるが、腹の中に何を隠しているのか分からない。

 そんな感じがした。


「じゃあ、次行こうか」

「あ、はい。あっ、先輩」

「……何?」

「牙楽羅先輩が忙しくなるとか言っていましたけど、何かあるんですか?」

「まぁ、ね。詳しい話は先生がしてくれるけど、私達にしかできない事よ」

「俺達にしかできない事?」

「そう。お仕事のお手伝いなんだけどね」

「手伝い?」

「簡単に言うと依頼の解決。異能を使ってペットの犬を探したり、成績の良い生徒にはもう少し難しい依頼が来るみたいだけど、私はまだ受けた事無いの」

「そうなんですか……ちなみに難しい依頼ってどんな」

「異能犯罪を対象にしたものよ」

「うげっ……」

「ここの生徒会長とか、一部しかまだ受けていないけどね」

「すげぇ……」

「その生徒会長に会いに行くけれど、行く?」

「い、行きます」

「……怖がらなくても大丈夫だよ。怖い人じゃないから」

「わ、分かってますよ」

「そう。なら良いけど」


 そう言って闘技場を出てまた歩き出す先輩。


「……行く途中で何か見ても、触らないようにね」

「え、何かあるんですか?」

「……」

「ダンマリ怖いんですけど!?」


 やはり俺は、思っていたよりも割とヤバい世界に足を踏み入れたようだ。

お読みくださり、ありがとうございます。


まだ数話程説明回となります。


次回もお楽しみに。

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