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10話〜模擬戦〜


「ではこれより、本校生徒会対風紀委員による模擬戦を開始する」

「いよっしゃあぁぁぁぁっ!!」


 日曜にも関わらず俺達は教室に呼び集められ、備え付けのテレビを見せられていた。

 呼ばれたが来るのは自由。

 だが俺達は全員来ていた。


 というのもその理由は先程聞いた通り。

 なんと今日、生徒会と風紀委員による模擬戦が行われるというのだ。

 更にはジュースにお菓子の持ち込みも自由と来た。

 ハッキリ言って、室内はお祭り騒ぎとなっていた。


「どっちが勝つと思う?」

「やっぱ生徒会だろ。なんせ学園最強がいるんだからな!!」

「いやいや風紀委員も強いんだぜ?」


 教室内でそんな会話が交わされている。

 というのも今回のこの試合、校内限定の賭けが行われているのだ。

 生徒手帳を使ってどっちが勝つか投票し、当たった生徒には校内売店で使える電子クーポンが支給される。

 先生が言うには、限られた情報から相手の実力を測る技術を養うのが目的らしい。


 とそこで画面に対戦生徒の一覧が映し出される。


・生徒会

・生徒会長

 薄明樹里。

・副会長

 真桜(まさくら)兼善(けんぜん)

・書記

 釜蔵(かまくら)白雪(しろゆき)

・書記

 天羽結衣。

・会計

 八田菱(やたびし)菊太郎(きくたろう)


・風紀委員

・委員長

 剣丘(つるぎおか)雅美(まさみ)

・副委員長

 盾宮(たてみや)祭吾郎(さいごろう)

・委員

 千鳥ヶ崎(ちどりがさき)射包(いづつ)

 千鳥ヶ崎乙羽(おとは)

 獅子宮(ししみや)凪翔(なぎと)


 試合は五対五で行われるようだ。

 試合の場は学園の敷地内にある模擬戦場。

 廃ビル、道路、一軒家の並ぶ戦場。

 ちゃんと整備すれば街として機能できると思えるぐらいに揃っている。


 その東側に生徒会チームが、西側に風紀委員チームのエーテル体が心具を携えて降り立つ。


「さ〜てそろそろ締め切りだけど、皆投票はしたかな〜?」


 新月先生の問いと共に画面内の先輩達は準備運動をしている。


 それを見ながら俺は天羽先輩が生徒会である事に驚くと同時に、千鳥ヶ崎先輩の名を見て懐かしく思った。


 あ、投票は生徒会に入れたぜ。


「さ、そろそろ始まるし先輩の戦い方を見て学ぶように」

「はぁい」

「あ、泉宮(いずみや)。そのお菓子先生にもちょーだい」


 画面の中の先輩達の表情が緊張の色に変わっていくのと対照にお気楽ムードの新月先生。


 そしてそのまま模擬戦は静かに始まった。




 生徒会チームは薄明先輩を一人残して動き出し、風紀委員は剣丘先輩と盾宮先輩、千鳥ヶ崎先輩同士の二人一組、獅子宮先輩のみ単独行動で動き出した。


 剣丘先輩の心具はデッカい両刃剣、盾宮先輩の心具は巨大な盾とトゲ付き鉄球が鎖で繋がっている。

 千鳥ヶ崎先輩はというと、射包先輩のは脇に抱えるタイプの大砲、乙羽先輩のは刀となっている。

 そして獅子宮先輩のだが、両手にメリケンサックとなっている。


 そんでもって俺が投票した生徒会チームだが、薄明先輩は対物ライフル型。

 真桜先輩のはハンドガン型、釜蔵先輩は鎖で繋がった二つの小さな鎌、天羽先輩は刀型、八田菱先輩は菱形の玉が数珠状に繋がったブレスレットだ。


 ちなみにこの試合、個人個人の生徒手帳で先輩一人一人の動きを拡大して見る事ができる。


 俺が見ているのは天羽先輩。

 なんと彼女、もう既に室内にて交戦していた。

 相手は獅子宮先輩。

 獅子宮先輩は獰猛な笑みと共に天羽先輩目掛けて心具を付けた拳を振り下ろしていた。

 対する天羽先輩は表情を変える事なく、その一撃を的確に躱していく。


 獅子宮凪翔。

 三年C組在籍の男子生徒。

 身長は何と二メートル越えの長身。

 それに加えて制服の上から見ても分かる程に盛り上がった筋肉。

 更に髪はボリュームがあり、まさにライオンの鬣を思わせる。

 しかも左目や右顎、首にははっきりと傷痕が走っており、激闘を今まで経験してきた事を教えてくれる。


 だがその拳は天羽先輩を捕らえられないでいる。


「オラオラ逃げてばっかじゃ俺には」

「勝てませんね。ですが」


 天羽先輩の背後の壁に小さなヒビが走る。


「貴方を撃つのは私ではないので」

「あ?」


 直後、獅子宮先輩の顔が消し飛んだ。


「……相変わらず凄い腕ですね。薄明先輩」


 なんと薄明先輩が壁越しの長距離狙撃を決めたのだ。

 しかもその距離は750m。

 先輩からすると多分その距離は簡単な距離。

 だが、俺達からすれば視認できない距離。

 しかも壁越しに味方と戦う相手の顔面を綺麗に捕らえたのだ。


 その瞬間、教室内はザワついた。

 異能を使った狙撃は珍しいものではない。

 壁越しの狙撃だって今ではそこまでだ。

 だが薄明先輩の近くに観測者がいた訳でも無いし、天羽先輩から何か伝えていた訳でも無い。

 何の情報も無しで、薄明先輩は狙撃したのだ。


 確か薄明先輩は第六感のおかげで耳が良かったと言っていた。

 ならばそれで音を拾ったのだろうか。

 だがそれならば耳が全ての音を拾ってしまうため、どれが誰の音が判別するのなら大変なはず。


 ならば異能を使ったのだろうか。

 そう考えると先輩の異能がどんなものかある程度は予測できるかもしれない。


 だがそんな事を考えさせるほど、先輩達の試合はのんびりしていなかった。


 なんと薄明先輩。

 次の標的へとその銃口を静かに向ける。

 見えない相手。

 その相手がいる方へと確かに向けられる銃口。

 放たれた弾丸は八田菱先輩を狙っていた射包先輩の胸の中心を撃ち抜く。


 生徒会側の闘い方としてはどうやら、薄明先輩以外が相手を足止めし、その相手を薄明先輩がブチ抜くといった感じのようだ。


 どこにいても、どこに隠れても、誰とどう戦っていても。

 薄明先輩の弾丸は必ず当たる。

 エーテル体に致命傷を与えられなくても、腕か足、脇腹には必ず当たる。

 どれだけ静かに動いていても当たる。


 まるで、相手の位置が手に取るように分かるようだった。


 そうこうしている内に互いに数は減っていき、生徒会側は薄明先輩、釜蔵先輩と天羽先輩の三人に。

 風紀委員側は剣丘先輩だけになった。


 釜蔵先輩は左腕に、天羽先輩は背中に傷を負っており、未だ無傷の剣丘先輩と睨み合っている。

 そして薄明先輩は当然ながら無傷。

 無表情で剣丘先輩に標準を合わせ、引き金を引く。


 だが放たれた弾丸は、剣丘先輩の頭をとらえる事は無かった。

 剣丘先輩の心具であるデッカい両刃剣が弾を切り裂いたのだ。


「……薄明。マズルフラッシュが見えているぞ」

「ちっ……さっさと当たって試合終了にさせなさいよ」


 両者の呟き。

 それが開戦の合図となった。


 ヌンチャクのように鎌を振り回しながら迫る釜蔵先輩。


「お前の異能と相性が良い分、俺から見ればお前は厄介な相手だな」


 鎌を心具で受け、釜蔵先輩を蹴り飛ばす剣丘先輩。

 二人の情報は画面越しではあるが俺の異能で視る事ができた。


 釜蔵先輩の異能は振り回した際に生じる遠心力を蓄積するというもの。

 その特性上先輩の心具との相性が非常に良く、数回振り回してから繰り出される鎌の一撃はかなり重たいものとなっていた。


 対する剣丘先輩の異能は触れた物を剣に変えるというもの。

 瓦礫だろうが鉄パイプだろうが、手にした瞬間に剣へと変える。

 心具程強力ではないが、武器としては十分な鋭さを持っている。

 しかも剣に変える素材の大きさに応じて剣の大きさも変わるのだ。

 小枝ならナイフサイズ、車を使えば大剣となる。

 面白い異能だった。


 そして天羽先輩の異能だったが分からなかった。

 というのも見ようとした時には剣丘先輩にやられており、視る事ができなかったのだ。


 ちょっと残念だが仕方ない事だ。


 だが天羽先輩。

 やられる前に剣丘先輩の足を心具で切り裂き、相手の機動力を下げる事に成功している。


 残る剣丘先輩と釜蔵先輩だが心具同士をぶつけ合い、バッチバチに火花を散らしている。

 速さと連撃の釜蔵先輩。

 剣によって一撃の重さが違う剣丘先輩。


 そしてその二人の様子をどこからか伺う薄明先輩。

 

「鎌では剣に敵わん!!」

「っ……確かにこちらと違って溜める必要が無い分、そちらの方が有利ね」

「そういう事だ。悪いがこの勝負、いただ」

「でも、こっちは二人なのよ!!」

「射線なら把握して」

「何を、把握しているって?」

「その声……」


 釜蔵先輩の背後の建物から聞こえた声に、思わず動きを止めてしまった剣丘先輩。


「いっ……」


 その一瞬の隙が命取りとなった。

 ガラッと音共に満面の笑みで現れ、剣丘先輩へと銃口を向ける薄明先輩。

 

「……いつの間にっ」

「気付かないわよねぇ。あれだけ釜蔵さんが暴れてくれていたら、私の方をいちいち確認する余裕は無いものね」

「っ……」


 直後、一発の銃声と共に生徒会の勝利が決まった。




 試合の後、俺はある人達に会う為に生徒寮前に来ていた。

 その人達とは一時期相談に乗ってもらったりしていた相手。

 とても良くしてもらった相手だ。


 待つ事数分。

 目当ての相手の片方がやって来た。


「……おや、君は」

「お久しぶりです。千鳥ヶ崎先輩」


 頭を下げる俺に対して笑顔を見せてくれる相手。

 名前は千鳥ヶ崎乙羽。

 先程の試合で風紀委員として参戦し、共に参戦した射包先輩のお姉さんだ。

 内側にカーブした黒のショートボブにキリッとした目。

 左の目尻に黒子がある。

 背は女性にしては高い方だろう。

 鈴のような声の綺麗な女性だ。


「そうね。久し振りね。早瀬君」


 微笑みながら俺の手を取る乙葉さん。

 だがその笑顔は嬉しそうであり、寂しそうにも見えた。

お読みくださり、ありがとうございます。

本当はもう少し早く投稿できるはずが、決着の仕方とか直したい部分が見つかりまして遅れてしまいました……

すみません。


釜蔵先輩に集中するあまり、薄明先輩に意識が向かずに敗退した剣丘先輩。

あ、剣丘先輩はイケメン枠のつもりです。


あ、釜蔵先輩は女性です。


それと乙羽先輩は早瀬とどんな関係があるのか……


ブクマ、星ポイント、本当にありがとうございます!!

めっちゃ元気、もらっております!!


次回もお楽しみに!!

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