1話〜進学先は異能校〜
「次は〜異研高前〜異研高前〜。お降りの際はお忘れ物のございませんよう」
雪が降る中、バスに揺られながら俺は降りる支度を始める。
と言っても電子マネーを用意するだけだけだ。
俺だけじゃない。
他にも降りる支度をしている人達がいる。
皆同じ歳頃。
目的地が同じなのだろう。
国立異能科学研究高校。
縮めて異研高。
それが俺の目的地。
合格していれば俺が来年度から通う進学先。
日本にある異能者の為の学校。
現在日本には今、北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州の八地方にそれぞれ一校ずつある。
全てが国立だ。
異能科学。
超能力やら魔法やら、一昔前はそう呼ばれていた摩訶不思議現象。
それが科学的に解明され、異能科学と呼ばれるようになった。
それに伴い、ある者達が接触して来た。
天界と魔界。
俗に言う天使の国と悪魔の国が接触して来たのだ。
理由は詳しくは不明だが、異能科学として解明できた事で人類のステージが上がったらしい事を一部の天使が言っていた。
「はぁ〜、着いた〜着いた〜」
バスを降りた女子が伸びをしているのを横目に目的地へと急ぐ。
東京湾に浮かぶ人工埠頭。
その上に作られた教育施設。
そこにあるのが異能科学研究高校。
「お? 何だ? アイツ等」
「新入生候補じゃないのか?」
「あ〜、そういやその時期か〜」
「結構面白そうな子いるわね〜」
俺達に気付いた先輩達が何か言っている。
(千鳥ヶ崎先輩はいない、か…)
その中に俺の知り合いの顔はない。
(…まぁ、良いか)
あの人とは終わったんだ。
もう、気にするのはやめよう。
そう思いながら先を急ぐ。
向かう先は合格者発表ゲート。
駅の改札のようなゲートに、受験の際に渡されたカードパスをかざす。
合格すればゲートが開いて通れる。
非合格ならゲートは開かないのだ。
果たして、ゲートは俺を通すのか。
ピンポーン
明るい音と共に、ゲートが開いた。
俺は、無事合格していた。
「それではこちらの部屋でお待ち下さい」
「あ、はい」
教員に連れられて入ったのは合格者の待機部屋。
既にそこには先の合格者達が数十人おり、一斉に俺の方を見ていた。
「……なぁんだ、男か」
「結構可愛い顔してんじゃん」
「えー? かっこいい系じゃない?」
「いやいや、フツメンだろ」
「確かに。むさ苦しい系のアンタと比べたら普通ね」
「んだと!?」
「おいおい喧嘩はやめろって」
「ほれほれ、こっち来いって」
「いやいやこっちにしなよ〜」
初手から賑やかな様子。
俺はちゃんとやれるだろうかと、少し不安になるのだった。
「という訳で、皆さんには今日から寮に入ってもらいます」
「ウーィ!!」
「おぉ〜、楽しみ〜」
「君達はこれからそこで生活をする訳だが、分からない事があったら先輩達に聞くように」
「先輩に、ですか?」
「あぁそうだ。ここの寮では二人で暮らしてもらう。それも、先輩とな」
「マジで!? よっしゃー!!」
「その代わり炊事洗濯は基本、自分達でやってもらう」
「えっ、食堂は無いのですか?」
「ある事にはあるが、そういう事を今の内からやって慣れておくのも重要だ」
「それに、料理のできる男子はモテるぞ?」
「マジっすか!?」
「おう。という訳でまだ一年生では無いけれど、ようこそ。我が校へ。教師は君達を歓迎するよ」
最後に先生は笑顔でそう言って締めくくった。
「えっと……ここが俺の部屋か」
その後全員の入学手続きが無事終わり、寮へと連れて来られたのだがこれまた驚きた。
下手な億ションより豪華な造り。
エントランスはオートロック。
更に交流用のスペースが設けられている。
五階建ての寮は移動用にエレベーターが三つ用意されている。
これだけ見ればそこら辺の億ションの方が豪華に見えるがそこは寮。
食堂や大浴場、レクリエーションルームといろいろな設備がある。
エレベーターが使われていたので階段で四階に上がり、渡された鍵の部屋へ向かう。
どんな人が同室なのだろうか。
どんな先輩なのだろうか。
優しい人だと良いな。
そんな事を思いながらドアを開ける。
そんな俺を出迎えたのは
「……君が同居人?」
「え、お、女?」
長く艶のある黒髪に血の様に透き通った赤い双眸の美女だった。
「……私は天羽結衣。君は?」
「あ、俺は早瀬遥です」
「そう。これから卒業まで一緒だから、よろしくね」
「こ、こちらこそ……その、えっと」
「……こっちが私の部屋。それで隣が貴方の部屋」
「あ、はい」
「用がある時はノックするように」
「はい」
「……別に私は気にしない。去年もそうだったから」
「え、去年って」
「ここの寮はそうなっているの。男女で一部屋」
「な、成程……」
「まぁ、よろしく」
「はい。こちらこそです」
良かった。
話してみたところ良い感じの先輩だ。
と、俺が安心していると
「じゃあとりあえず、月、水、金は私が。火、木、土は君が家事で」
「……え?」
「日曜日は二人でって感じで良いかな?」
「えっと……」
「言われたでしょ。家事は二人でって」
「あ、そういえば……」
「曜日で分けてはおくけれど多分君、家事はほとんどできないでしょ?」
「えっと、まぁ……はい」
「だから、一応分けはするけど手伝うからそこまで気にしないで」
「あ、ありがとうございます……」
「先輩だからね。とりあえず荷物の片付けしたら?」
「あ、は、はい!!」
先輩に言われ、自分の部屋に運ばれた荷物の片付けに取り掛かる。
と言っても着替えとか、漫画類ぐらいしか無いのですぐに終わるだろう。
異能者は世界人口で見ればまだまだ少ない。
この状況で名を売る事ができれば激モテ間違いなし。
現に強力な異能者は大金を稼いでいるし、それこそ美人モデルと結婚とかもしている。
俺もそれぐらいモテたいもんだ。
いや、夢はデッカくだ。
史上最高にモテた異能者として歴史に名を刻んでやるぜ。
そんな事を思いながら段ボールを開けるのだった。
お読みくださり、ありがとうございます。
二作目ですが、まだまだ稚拙な作品です。
読んでいただけると、嬉しいです。
次回もお楽しみに!!