第9話
姫川様はハハッ!と笑い、
まるで何事もなかったかのように、
さっき居た場所に戻った。
五十嵐様はというと、何とも言えない顔をしている。
ビックリした顔にも見えるし、
『自分はほっぺだったのに何故?』という疑問の顔にも見える。
・・そして、
僕は今、どんな顔をしてるんだろう?
(いやらしい顔してないよな?)
・・いやっ、
今はそれどころじゃない。。
なんて言おう、、
なんて言えばいい!?
困り果てていた僕を救ったのは、、、
事の元凶である姫川様だった。
「・・さて!
そろそろ帰るか!」
「あっ、はい!」
・・あれ?
無かったことになってる?
もしくは・・
触れてはいけない感じ?
・・
う〜ん、わからん。
「じゃ、お疲れー!」
「お疲れ様でした・・」
カラオケ店の前で、姫川様と解散した。
歩き始めてすぐ、
「佐伯さん!」
っと、五十嵐様に呼び止められて、
ついビクッとする。
「はっはい」
(なっ何か言われる!?)
「私こっちなんで、ここで失礼します」
「・・あっ!はい!!お疲れ様でした!」
良かった!
何も言われなかった!
・・もしかして、
キスは僕の勘違い?
こんなにお酒飲んだの久しぶりだし。
(酔ってたから幻覚見たのかも)
・・なーんだ。
はぁ〜、疲れたな〜。
・・
って!!
んなわけあるかーい!!!
(暴走モード)
(↑頭の中だけ)
えっ!何!?あれっ!何!?
(↑落ち着け)
キスしたじゃん!
キスしたじゃん!!
なんで何事もなかったみたいになってんの!?
こちとらまだ、、
柔らかいクチビルの感触が残ってるっつーの!!
(ドキドキ)
・・もしかして、
キスくらいで僕の事を落とせるとでも思ったのか??
(↑自意識過剰)
ざーんねーん!!
僕はそんなチョロくないから!
(↑取り乱してる時点でだいぶチョロい)
・・
でもなんだ・・この違和感は?
何かが引っかかる。
(・・再度思い出し中・・)
・・
はっ!?
今僕、手でクチビルを触ってた!??
(恥ずかしーーー!!!)
キスの感触を思い出しながら
手でクチビルを触るなんて、、、
ドラマでしかあり得ないと思ってたよ!!
(実際にあるんだね)
しばらく、手でクチビルを触っては
取り乱すを繰り返し、
おぼつかない足と精神に苦労しながらも、
何とか家路に着く事ができた。